ランエボ内装パネル 下準備

lancer7 先日「下塗り」を済ませておいたランサーエボリューションの内装パネル4点です。一個多いのは別の案件の物ですので気にしないで大丈夫です。

下塗りに使っているのは極一般的にある1コートソリッドで、これは所謂「クリアーに顔料が入った上塗り塗料」と言う物です。見た目的にはグレーですがいつも塗っている2液ウレタンクリアーと同じ物と考えて頂いてOKです。呼び方としてはSTANDOXの商品名そのままで「2Kエナメル」と呼んだりしますが、DUPONTを使っている時は「AKで行く?」とか言っていましたかね。わざわざ「1コートソリッドで」とかは言わないのが普通なのです。

lancer8 で、これが梨地に直接上塗りをした状態になります。艶が引けているのが判りますよね。素地がザラザラしたまま塗るとこうなってしまうのです。いくら綺麗に塗っても下地が悪ければその影響を大きく受けてしまうのです。

本来はここでサフェーサー(勿論2液ウレタン)を使うのがセオリーなのですが、パーツ4点でそれを行うと数万円のコストが掛かってしまいますので(時間にして4時間くらいでしょうか)、だったらという事で今回は2Kエナメル(クリアー)で代用しているのです。梨地が粗い場合は逆効果ですが今回の細かい梨地であればこういったやり方もあるのです。

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2Kエナメルを使う一番の利点は「肌が荒れない」と言う事で、サフェーサーの時のように激しい研ぎ作業が必要無いので時間を大きく短縮出来るのです(上記内容で一時間くらい)。

サフェーサーはその「充填力」こそが一番の武器ですが、それ故ラウンド(肌)が荒れてしまうのできっちり表面を研ぎ落としてあげなければならないのです(少しの残りも無くです)。これはもう体質顔料の特性ですから仕方ないと言えば仕方ないんですけどね。

一応判り易く「サフェーサー」の時と今回のようなケースでの工程を紹介しますと、

【サフェーサーを使った正統な作業方法】

#320→#400→#600→#800

【2Kエナメルを下塗りとして使った簡易的な下地造り】

#800

といった感じです。サフェ研ぎは大変なので最初は粗目の番手から始めますが今度はそれの目消し作業に終われます。#320からいきなり#800にやると余計に時間が掛かるのでそれはナンセンスです。結果4工程必要になっているのです。対して今回の方法であれば「研ぎ」ではなく「足付け処理」といった内容になるので時間は非常に短縮出来ます。これがコストを下げられる理由ですね。

ただしラインの修整は出来ない、シャープさが欠けるなどのデメリットは生じますから、その辺のバランスを考えて使い分けるのが必要だと思います。それを提案するのがフロントの仕事なんですよね(ってうちは私一人しか居ませんが・・・)。

それではタイミングが来ましたら次は本塗りになる予定です。もう少々お待ち下さいませ!

ランサー内装パーツ 下塗り

lancer4 ランサーの内装パーツ4点も全て梨地で、こちらもアテンザのグリルと同じくサフェーサーの代わりに2Kエナメルを下塗りとして塗って下地を造ります。

lancer5 こちらはエアコン吹き出し口のパネルですね。固定方法が違うのは下塗りの時点でどっちが良いか試しています。

lancer6プラスチックプライマーを塗ったらグレー色にした2Kエナメル(通常は1コートソリッドと呼びます)を塗ります。使い方としては通常のクリアーと同じで、画像では2コート塗り終わった状態ですがまだ表面がザラザラしているのが判ると思います。

「もっと沢山塗れば埋まるんじゃ」と思いがちですがそれは逆効果で、そもそも膜厚を充填したかったらやはりここではサフェーサーを用いるのがセオリーですし、クリアーをタップリ塗ってもデロデロとした締まりの無いラインにしかならないので、この方法ではあくまでも肌を整えるくらいに留めておいた方が無難ですかね。

この後熱を掛けて強制乾燥させ、完全硬化したら表面を軽く研いで本塗りとなります。もう少々お待ちくださいませ!

 

ランエボ内装パネル 足付け処理

lancer3こちらもお待たせしております。ランサーの内装パーツ4点で、素地の状態が「梨地」なので下塗りの準備をしています。

塗装の仕上がりは下地によって大きく変わるので、今回程度のちょっとした梨地でもそのまま色を塗ると激しく艶が引けたような状態に仕上がってしまうのです。磨いて艶を出すと言うレベルでは無いんですよね(そもそも磨く方が大変です)。

という事で、全体を#320で足付け処理を行い下塗りに備えます。本来であれば梨地の下地処理としては「研磨→2液ウレタンサフェーサー塗布→完全硬化→研磨」となりますが、今回の梨地はそこまで目が粗く無いのでサフェーサーの代わりに2Kエナメル(クリアーに色が入ったような塗料)を使います。これを塗るタイミングは他の本塗り時についでに塗る感じですかね(その辺で塗れる訳ではありませんので・・・)。

また進行しましたら紹介します。もう少々お待ち下さいませ!

 

ランエボ内装パネル 塗装承ってます

lanevo 先日無事到着しておりましたランサーエボリューションの内装パネル4点です。この度のご依頼、誠にありがとう御座います!

ご依頼内容としては、

「日産GT-RスペックV純正色アルティメイトオパールブラックでの塗装を」

との事なのですが、この色は特殊な原色(所謂マジョーラカラーとかクロマリュージョンなど)が使われているのでまずそれを入手するだけで数万円が掛かってしまいます。

が、一応その原色を使わない配合データと言うのも存在していて(奇跡かと・・・)、ただそんな筈も無いと思ったので一応メーカーに問い合わせてみたところ、「ボディーカラーにはならないと思いますが目立たない箇所ならそれらしく見えるかも知れません」との事で、今回の内装パーツくらいならこれで問題無いと思った次第です。材料費だけで4万円とか掛かっていたらあり得無いですからね。むしろ助かりました。

lanevo1 で、被塗物表面は細かい凸凹状になった「梨地」で、このままトップコート(上塗り塗料)を塗ってもこの素地が残ってしまい艶の無い仕上がりになってしまうのでまずは下地で平滑にしなければなりません。

通常これを平滑に仕上げるには「研磨→2液ウレタンサフェーサー塗布→完全硬化→研磨」といった工程が必要ですが、これをやると上塗り作業以上に大変なので費用もそれなりに上がってしまいます(付帯作業と言うことで倍にはなりませんがそれに近いです)。

ただ今回の梨地はそこまで凸凹が深くは無いので、これであればいつも利用している「2度塗り」の方法で対応出来そうです。その名の通り二回分塗るような作業となるのですが、サフェーサーのように激しい研ぎ作業は行わないので作業時間は短縮出来ます。

ただし梨地の目が大きい(粗い)場合にはこれは逆効果で、梨地が埋まらないどころか細部のディテールまで潰れてしまい、失敗した塗装をさらに塗り潰して誤魔化したような仕上がりになってしまいます。素地の悪いヘッドカバーに直接缶スプレーで塗ったような感じで、「これじゃ塗らない方が良かったんじゃ・・・」といった仕上がりかと思います。

lanevo2ちなみに樹脂素材は一番大きい部品がABSでその他はPPです。見た目は同じでもそれぞれの樹脂の特性は全然違います。

それぞれの素材で塗装屋的に感じる違いとしては・・・

【ABS】アクリルニトリル・ブタジエン・スチレンの合成樹脂

■メリット

・塗装との相性が良い(プラスチックプライマー塗らずとも多分大丈夫です)

・加工性が良い(切ってもくっ付けるのも簡単です)

・色を混ぜ易い(未塗装でも鮮やかな赤など着色樹脂として作れます)

■デメリット

・割れ易い(車のバンパー(PP)が割れなくてバイクのカウル(ABS)が割れるのはこのせいです)

・溶ける(シンナーで表面が溶けます。シリコンオフで溶ける最悪な場合も多々あります)

【PP】ポリプロピレン

■メリット

・割れ難い(なので車のバンパーやストレスの掛かる部分に多用されます)

・耐候性が良い(塗装無しでも比較的耐えられます。未塗装品のモールやグリルはこれでしょう)

■デメリット

・修理が難しい(熱可塑性素材なのに溶かしてくっ付けられません)

・塗装が密着し難い(現代のプライマーがあれば問題無いですがこれを忘れると完全に剥がれます)

・色が乏しい(黒ばかりなのはこれのせいです)

といった所ですかね。身近な物にはそれぞれの特性を活かして活用されているので普通に使う分には不都合は無くむしろ色々助けられていると思います。塗装屋としてはPPは出来るだけ何も触れずにそのまま塗りたいと言うのが本音です。切削性が非常に悪いので削ろうとしても中々削れてくれませんので・・・。

それでは作業進行しましたらまた紹介させて頂きますね。改めましてこの度のご依頼、誠にありがとう御座います!