マイク アルマイト被膜 下地処理

 先日お預りしておりましたSHURE QLXD2ワイヤレスマイクです。

ヘッド部分は別体(別売り)のTELEFUNKEN M80Wが装着されていて、こちらは塗装では無くアルミアルマイト処理が施されている為、そのまま上塗りをしても塗料は密着せず剥がれてしまいますので、#180で足付け処理を行い、この後プライマーを塗装します。

 本体(と元々着いていた筈のヘッド部分)は黒い塗装で、こちらはいつも通り足付け処理のみで大丈夫です。グリップ部のバッテリーカバーとなる部分は製造時の旋盤の跡が残っていますので、#500相当(アシレックススカイ中目)でヘアーライン目を均してから#800相当(アシレックスレモン)で仕上げておきます。

 アルマイト被膜についている色は塗装では無くアルミ素地(気孔)に染み込んでいる物で、無理に剥がす必要はありません。この後に塗るプライマーが密着する為の足付け処理が施されていれば大丈夫です。

良く脱脂し、プライマーを塗布します。

 こちらは先ほどのSHUREとは別件で、先日よりお預りしておりますオーディオテクニカのワイヤレスコードレスマイク(ATW-TS63)です。こちらも同じくアルミアルマイト処理が施されているので下地処理を行ってからの上塗りとなります。

ちなみにこれと同じ型のマイクで黒い仕様の物があるのですが、そちらは恐らく塗装での仕上げで、それであれば足付け処理のみで塗れますから、塗装するのが前提であればその方が安く済みます(ただしグリルも黒くなってしまうので、メッキを御希望であれば今回のような選択になるかと思います)。

先ほどのSHUREと同じく#180のダブルアクションサンダーで全体に満遍なく傷を付けておきます。

 サンダーが使えない(当たらない)谷の角や溝の部分は、ヘラにペーパーを当てて足付け処理を行います。ただしペーパーの当たり方が一方向だけだとどうしても密着性(アンカー効果)が弱くなる恐れがある為、ペーパーを掛ける際には方向を変えて、またケースバイケースで火炎処理や密着剤などを併用したりもします。

 マスキングをし、よく脱脂処理をしておきます。

そう言えば少し前、知り合いの塗装屋さんが「パテの時には脱脂はしない」と言っていましたが、私もディーラー在籍時にはそこまで脱脂に拘っていなくて(当時の私も含め意外と普通です)、ただ独りで仕事をするようになってからはそういった些細な事も気にするようになりました。

こちらもプライマーを塗布しておきます。

それでは作業進行しましたらまた紹介をさせて頂きますね。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

SHUREワイヤレスマイク塗装承ってます

 先日到着しておりましたSHURE QLXD2ワイヤレスマイクです。ヘッド部分は別体でTELEFUNKEN M80Wが装着された仕様となっています。この度のご依頼、誠に有難う御座います!

塗装するのはマイク本体(下部のアンテナ部は除く)と別体のヘッド、カバー部分の3点となります。グリルボールと接点カバーリングは塗装せずそのままとなります。

色については少々特殊で、クロマフレア風な偏光パールを2種類使ってのグラデーション塗装となります。以前色見本用マイクに塗装したサンプルがありますのでそちらを紹介させて頂きますね。

 また公式の色としては紹介していなかったのですが、イメージとしては上記画像の一番左の色見本マイクのような感じとなります。

 上記画像の左側の色見本がそうで、「濃いグリーン」と「玉虫色」をグラデーションさせて組み合わせた塗装となります。

それぞれの色を別けて紹介させて頂きますね。

 こちらが濃いグリーンの方(クロマフレア風No.7)で、見る角度によって青味が出てくる偏光型のパールを使用しています。

 パッと見は黄色寄りの濃いグリーンなのですが、

透かしで青味を帯びる色となります。マジョーラなどのクロマフレア系顔料の塗装と同様、下色に黒を塗装しています。

 そしてこちらが玉虫色の方(クロマフレア風No.9)で、見ての通りグリーン→イエローマゼンタへと激しい色変化を起こします。

 顔料自体はどれもパウダー(粉末)タイプで、バインダー(樹脂のみ)と混ぜて使う事で通常のSTANDOXの塗装システムとして使用が可能となります。

それでは作業進行しましたらまた紹介をさせて頂きますね。改めましてこの度のご依頼、誠に有難う御座います!

SHUREワイヤレスマイク塗装 完成

 先日本塗りを終えていたSHUREのワイヤレスマイクBLX24/BETA58です。

 内側はしっかりマスキングをしておいたので塗料ミストの入り込みなども綺麗に防げていると思います。

 そして各部品を組み付けて完成となります。大変長らくお待たせしました!

最初の状態も紹介させて頂きますね。

元々はいつもの通り黒っぽい艶消しの塗装が施されていた物を、

 オーナー様から入稿されたイラストデータを基にトランプ柄の塗装を施しました。

 マイクの上下で分割される柄の位置もピッタリ決まりました。

 先程の裏側です。ボタンが手前となるとこちらが観客側になる感じでしょうか。

 ベースコート(色)の順番としては、「白→赤→黒」で、クリアーはクリスタルクリアーを二度打ち(二個分の塗装)をしています。

 ボタンとパイロットランプ部分はマスキングでの対応となっています。

 グリルボールには水色の輪ゴムが嵌るようになっているのですが、今回の柄には色が合わなそうなので着けずに梱包してあります。ただ傷の防止になるので本番以外では着けておくと良いかも知れません。

下の穴は予想以上にピッタリで、この型のマイクで底部分を塗装してしまうと恐らくカバーは上手く閉まらなくなってしまうと思います。今後の為に確認が出来て幸いでした。

それでは後程完成のお知らせメールを差し上げますね。この度のご依頼、誠に有難う御座いました!

SHUREワイヤレスマイク クリアー二度塗り

SHUREワイヤレスマイク 本塗り

先日本塗りを終えていたSHUREのワイヤレスマイクです。その後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を完全硬化させておきました。

 ベースコートは極力薄膜にして丁寧に塗ったので、塗り分け個所の段差は比較的少なくは仕上げられましたが、結局ちょっとした段差も気になってしまい、全体を#1500で研ぎ付け、さらに「ここまで研いだら磨くより塗った方が早いだろう」と思い、

 全体を#1300相当(アシレックスオレンジ)で足付けし、一部マスキングを貼り直してもう一度クリアーを塗る事にしました。

 ボタンとパイロットランプ部のマスキングは貼り直していますが、その他は基本的にそのままなのでそんなに手間ではありません。

 もう一度磨き処理は行いますが、全体にペーパーを掛けるような事は必要ないのでそんなに手間では無いと思います。

それよりも磨き処理時にエッジ部などの下地が出てしまうような事の方が怖く、そういった点では磨くよりも塗装したようがリスクは少ないです。クリアーは前回と同様、クリスタルクリアーの仕様となります。

それでは少し余計に時間が掛かってしまいましたが、完成次第改めて紹介をさせて頂きますね。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

SHUREワイヤレスマイク 本塗り

 大変お待たせしました!SHUREのワイヤレスマイクBLX24/BETA58は無事本塗り完了しておりますのでご安心下さいませ。一日では大変なので本塗りは二日に別けて行っていました。

画像は 先日作成した柄のデータからカッティングプロッターを使ってマスキングシートを準備しているところで、シートは白のマスキング用と赤のマスキング用、さらに修正用の予備と全部で3種用意しました。

 また今回は使用するスプレーガンも少し変更します。

こちらは少し前に導入したSATAのエアーブラシで、ノズルには口径0.5ミリを取り付けていたのですが、今回の使い方に合わせて1.0ミリに変更する事にしました。スプレーガンはキャップ・ノズル・ニードルを変える事で口径を変更する事が可能です(出来ない物もあります)。

ちなみにエアーブラシとしては口径1.0ミリはかなり大きい方ですが(一般的には0.3mmくらいなのでこれは通常あり得ないサイズです)、これで試し吹きをした時に良い出方をしていたので今回の塗装に使ってみようと思った次第です。

マイク本塗り時の固定方法としては、当店にあった予備のグリルボールを嵌めて、それを台に固定する方法にしました。

通常グリップ部分のカバーは外した状態で塗装しますが、今回は柄が繋がるのでこれを締めた状態で一緒に塗装します。中にはミストが入っても大丈夫なようマスキングをしています。

 先程の状態から足付け処理を行い、ボタン部分のマスキングを貼り直し、念の為プラスチック樹脂素地が露出している可能性がある上下の断面や継ぎ目の隙間にプラスチックプライマーを塗布しました。

 スペーサーは本体と同じく艶消し黒に塗られているのでこちらも表面をペーパー掛けして足付け処理をし、グリルボールはスコッチとナイロンブラシ、ウォッシュコンパウンドを使って網目の入り組んだ箇所までしっかり足付け処理をおこなっておきます。

まずはマイク本体を白で塗ります。色はいつものVWキャンディホワイトを採用しました。

 その上に柄のフチだけをカットしたマスキングシートを貼り付けます。

柄の位置については、マイク本体にあるボタンとパイロットランプを上手く避けられるよう、丁度良い位置を見つけて合わせました。パターン自体はオリジナルを極力残すようにしています。

 継ぎ目の部分に差し掛かる柄はスペードが二個で、またそのままの状態だと綺麗に仕上がらない恐れがあるので一旦剥がして位置を修正する事にしました。画像の状態だと尖った部分が隙間の段差に掛かっていて、これでは絵柄が切れてしまいます。

 スペードを1ミリくらい下げて、尖った部分が隙間から外れるように配しました。

また他にハートが一個同じように隙間の上に重なる物があったのですが、そちらは位置を調整して継ぎ目の上に掛からないようにしました。柄の仕上りを綺麗に表現したかったので隙間の中には色を入れないようにしています。

 まずはハートとダイヤの内側を赤で塗ります。周りに色を飛ばしたく無いのでここでは口径0.3ミリのエアーブラシを使い、3コート塗り重ねます。

赤は鮮やかさ且つシックさのあるフェラーリのロッソコルサ(カラーコード:300)を採用しました。

 赤く塗った部分がテープフリーな状態になったら、ハートとダイヤの内側が埋まるようマスキングシートを貼ります。

尚ここで使うマスキングシートは塗装用とは別に作った物で、柄のフチの外周より0.5ミリ内側にオフセットしたサイズにしています。

 そして最後に黒を塗ります。ここで先程紹介した口径1.0ミリのエアーブラシ(手前)の登場となります。

ちなみに今回ベースコートに使ったスプレーガンは、奥から「白=口径1.0ミリIWATA低圧ガン」、「赤=口径0.3ミリSATA」、「黒=口径1.0ミリSATA」のガンとなっています。

 そして黒のベースコートをマイク全体に塗布します。と言っても単にべた塗りをした訳では無く、塗りたい個所を丁寧にトレースしながら色を塗り重ねています。余り気にせず黒をそのままべた塗りしてしまうと無用に膜厚が付き過ぎてしまい、柄の際がガタガタになって醜い仕上りになってしまいます。大きい面積であれば目立たないのですが、今回のような小物となるとどうしてもそういった個所が気になってしまいます。

しかしかといって口径が小さいガンを使うとドライコート気味になってしまい、今度は「密着不良」と言う問題が起きます。ガラスケースの中で飾るような物であればそこまで気にしなくても良いのかも知れませんが、マイクのような実用的な物となるとこちらこそが重要な事となり、その点今回使用した口径1.0ミリのエアーブラシはまさに丁度良い具合でした。

 そしてマスキングシートを全て剥がします。綺麗に出来ているように見えますが、まだここからが結構時間が掛かります。

 塗装が食み出たりガタが出来た個所は、予備用として作成しておいたマスキングシートを使い部分的に補修していきます。

最初に白を塗っていたガン(IWATA低圧1.0mm)だと塗料が出過ぎるので、ここでは赤を塗っていた口径0.3ミリのエアーブラシを白に入れ替えて使っています。

細かいところの修正が終わったら取っ手の部分を外します。またパイロットランプのマスキングは確認の為一旦剥がし、新しい物を貼り直しました。前回はここも一緒にクリアーを塗りましたが、今回は最後までマスキングをして行います。

 そしてクリアーを塗って本塗り完了です。

 ネジ部分のマスキングはクリアー塗装後に直ぐに剥がしました。

 先に黒を塗ってから白→赤と塗った方が仕上がりが綺麗になるかとも考えていましたが、今回は最後に塗る黒を丁寧且つ薄く塗る事で、塗膜の段差も少なく美しい仕上がりに出来たと思います。

 こちらはグリップ部分です。

 クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーの仕様となります。

 グリルボールは単色の黒で、

その下に着くスペーサーリングも同様に黒のべた塗りとなります。

この後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を完全硬化させ、マイク本体は磨き処理を行ってさらに数日寝かしたら完成となります。どうぞもう少々お待ちくださいませ!