TOYOTA 2000GTエアークリーナーケース蓋 下地処理

先日お預かりしておりましたトヨタ2000GTのエアークリーナーボックスの蓋部分となります。

素材はFRPで、この場合表面に塗られているゲルコート=ポリエステル樹脂は柔軟性に欠けますから、ストレスが掛かる場所には亀裂が入ってしまいます。今回の部品は見た目の感じよりかなり酷いです(全体にひび割れが生じています)。

本来であればそういった割れを全部除去し、ガラスマットから貼り直したいところですが、そうなると膨大なコストが掛かってしまうので、今回は明らかに割れが目立つ箇所をリューターでV字に掘り込み、そこに構造用エポキシ接着剤を充填する方法で行います。

目で見えて割れている箇所を彫ったら、全体をダブルアクションサンダー#120~#180で研磨します。先にリューターで彫ったのは割れている箇所が判り易いからですね。

サンダーが当てられない箇所は当て板やヘラを使って手研ぎします(指で研ぐと部分的に凹んでしまうのでNGです)。

その後よく脱脂清掃します。

V字に彫った箇所に、構造用エポキシ接着剤(3Mオフホワイト)を充填します。

オフホワイトは硬化すると研削し難いので、塗布するのは最小限に留めます。

その他深い巣穴にも、奥まで流し込むようにして充填させます。ここで一旦熱を掛けて硬化させます。

ボルトを止める箇所は一部が掛けて無くなっているので、

割れている箇所の周りを研磨して均し、足付け処理と脱脂清掃を行ったら裏側からファイバークロスにエポキシ接着剤を浸透させて貼り、

表側からは窪みに流し込むようにオフホワイトを充填します。ここで再度熱を掛けて硬化させます。

その後盛った接着剤を削って均し、

ボルトの穴を開け直します。

割れて無くなっていた箇所もしっかり厚みが確保出来ているのが判ると思います。

その後よく脱脂清掃します。

ここまでは目立つ箇所だけの修理で、実際には部品全体の表層には細かいヒビ割れが無数に生じています。ただそれら全部を削り落としてやり直すとなると費用は青天井になってしまいますので(と言うより型から作り直した方が安価で済むので)、

今回は(今回も)エポキシプライマーサーフェサーに、

骨材としてガラスパウダーを入れ、しっかした下地の層を一膜作るようにします。パブリカのステアリングを修理した時と同じ方法ですね。ちなみにその後のステアリングを見る機会がありましたが、実使用で何の問題も無い事を確認出来たので、かなり効果があったのだと思っています。

ウレタンやポリエステル樹脂に比べてエポキシプライマーサーフェサーはかなりの強度=網目架橋密度が高いですが、さらにそれに骨材としてガラスパウダーを入れる事で、前者の樹脂等では抑えきれないヒビ割れを抑えるといった作戦になります。添加量は主剤に対して10%としました。

通常の塗膜は厚くなる程弱くなりますが(防水・防錆性は高まりますが割れやすくなる等のデメリットが大きくなります)、今回のような下地剤はある程度しっかり塗る事で強度が高まりますから、ウェットで3コート塗っておきました。

エポキシプライマーサーフェサーはかなり研ぎにくいのと、3コートだけではラインの形成には足りないので、本来であればこのままウェットオンウェットでウレタンサフェーサーを塗りたいところですが、この時点で結構厚く塗ってしまったので、リスク(リフティング)のリスクを考えて一旦ここで終了とする事にしました。

この後は熱を入れて硬化させ、軽くサンディングした後にサフェーサーを塗る予定です。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!