スーパーセブン ドライカーボンパネル 作業前準備

seven20 先日到着しておりましたロータススーパーセブン用のプレグカーボン製のボートカバー(トランクカバー)とその蓋です。

とても薄くて軽いのですが、このまま作業をするにはペラペラ過ぎてやり難いので最初に冶具(と言う程の物では無いのですが)を作成しておきます。

seven12 大よその骨となる12ミリ厚保のベニヤ板をカットします。

seven13 6ミリ厚のベニヤ板を内側のラインの沿ってカットして敷き詰めます。継接ぎなのは端材を利用しているからです。

seven14 先程の厚いベニヤ板を当てて、さらに垂木で嵩上げをします。平らな所に置いてもカーボンパネルの耳が当たらないようにしたいのです。

seven21カーボンパネルから外したら各部をネジで固定し、サンダーで面を取っておきます。

seven15 さらにカーボン製品と当たる部分に6ミリ厚(確か)のウレタンフォームを貼り付けます。以前間違えて買った物が役に立ちました。

seven16製品自体は平らでは無く曲面になっているのでそのままだとベコベコになりますから、さらにベニヤとウレタンフォームの間に段ボールを入れて曲面ラインが合うように調整します。

seven17 と言う事までして気が付いたのですが、若干ですがパネルを押した時に塑性変形する個所でクリアーに線状の模様が見られます。まあ塗装がが割れているという訳では無いですし、この後は裏当てをするので恐らくは大丈夫だと思います。たぶんベコベコさせながらポリシャーを回していたのではないでしょうか。

seven18 蓋となる部分はそんなに大きくないのでいつも膝当てとして床に敷いているお風呂マット(!)を遣えば大丈夫だと思いましたが、それでもやはり曲面ラインが強くベコベコするので一応こちらも裏にウレタンフォームを貼っておきました。

seven19こちらも同じように隙間があいた部分に段ボールなどを挟んでウレタンフォーム曲面にフィットするように調整して作業する予定です。まずはダブルアクションサンダーで削ってみようと思います(大きいウネリは仕方ないにしても、小さいボコボコはもう少し均したいと考えています)。

どうぞもう少々お待ちくださいませ!

スーパーセブン ドライカーボンパネル塗装承ってます

seven1先日到着しておりましたロータススーパーセブンのプリプレグカーボン製のボートカバー(トランクカバー)とその蓋、そして色見本の為にお預かりした塗装済みのノーズコーンカウルパネルです。この度もご贔屓頂き有難うございます!

seven2 こちらのノーズコーンは以前当店で施工させて頂いた物で、普通に見るとグリーンメタリックなのですが、実は全く違います。

seven3 こちらも元はプリプレグのドライカーボンで、上に塗っているグリーンメタリックはわざとその下の繊維目が透けて見えるようにしています。変則的なキャンディー塗装みたいな感じですかね。

seven4 しかもそれを殆どのカウルパネルに塗ると言う内容で、塗装屋さんなら判ると思いますが相当胃の痛くなる作業でした。一般的なキャンディーカラーならまだしも、これを普通の色で下地を透かすって・・・(恐)。

seven5 当然ですが各パネルで同じように仕上げなければなりませんので、予め同じような工程で作成した色見本を基に、各色調(透過)を合わせていきます。これをムラなく仕上げる仕上げるのも至難ですから、恐らくこの時はSATAのスプレーガン(NR2000)を使っていたと思います。久しぶりに出さないとなりませんか…。

seven7 ちなみにそのプリプレグカーボンなる物がこちらです。テストピースの作成用にと破片を頂いていました(当時の話です)。

seven8 プリプレグカーボンは最初からカーボン繊維に熱硬化型のエポキシ樹脂が浸透されているタイプの物で、それを型に合わせて貼り合わせ、その後真空状態にパッキングして120℃程度に加熱して固めます。成型時に樹脂を取り除ける分軽量になるのですが、上の画像のように出来上がりは激しい巣穴だらけになっています。

ちなみに通常のウェットカーボンはポリエステル樹脂で、エポキシ樹脂を使っているドライカーボンとは強度がまるで違います。

seven9先ほどのパネルにクリアーを塗った状態です。実はこの一発目の為の下地処理が結構重要で、それを間違えると延々激しいハジキの巣穴が残ります。一時期業者さんからドライカーボン製パーツの塗装をご依頼頂いた事があって色々と勉強をさせて頂きました。余りにも辛かったのでもはやトラウマレベルなのですが(苦)。

seven10先ほどのパネルを「塗装→完全硬化→研磨」といった下塗りクリアー塗装を7回程くらい繰り返し、最後にグリーンメタリック(色はメルセデスのカラーコード6836)をパネルの真ん中で塗り分けてクリアーを塗った状態です。

seven11しかしさすがにあれらのパーツ全部に下塗りクリアーを7工程も行うとなると激しい金額になってしまいますので、下地に関しては(恐らく)それ専用のショップさんを手配して対応して頂きました。

上の画像は当店に持ち込まれた状態で、恐らくはUV硬化型のポリエステル樹脂なのではと思いますが、何にしてもとても素晴らしく良い仕事をされていました。お陰で当店はキャンディーグリーンメタリックの塗装に専念出来ました。

seven6 と言う事で今回のボートカバー(トランクカバー)とその蓋も安心していたのですが、製品を受け取ってみるとどうも何か違うような・・・。

sevenパッと見は艶々で綺麗に見えるのですが、よく見ると(塗装屋的にはよく見なくても)クリアー表面には無数の巣穴が空いていて、とてもじゃありませんがこのままの状態では塗れません。

画像だと巣穴も小さく見えるのですが実はこれは表面にペーパーを掛けてコンパウンドで磨き処理された状態で、これにクリアーを塗ると穴の周りは表面張力により、クレーター状のハジキ風巣穴が大量に表れます。しかもあろうことかワックスまで使われていて塗装面はヌルヌルです。いったいどうして…。

と言う事ですが、これらに関しては既にオーナー様にもご確認を頂いておりまして、この後の作業(下塗りクリアー)は当店でやらせて頂く事となっています。恐らくはクリアー下塗り工程を3回やればまともな状態になるのでは、と思っております。

それでは作業進行しましたらまた紹介させて頂きますね。この度も当店をご贔屓頂き有難うございます!

LOOKカーボンフレーム&フォーク塗装 完成

look153 大変お待たせしました!LOOKのカーボンフレームとカーボンフォーク、遂に本日完成となります。本当に長らくお待たせ致しました・・・!

最初の状態も紹介しますね。

look1最初はこのような状態で、一番上に塗られていたクリアー層が剥がれて来てしまっていたので一応旧塗膜は全部剥がして塗り直す事にしました。

look49カーボン素材の場合は溶剤やサンドブラストが使えないので、チューブの塗膜は手作業で削り落とし、今回外せなかった(外せない訳では無いのですが構造上中に落ちるリベットの破片が回収出来なかった為です)アウター受けなどは周りを養生してその部分のみサンドブラストで塗膜を剥がしました。

密着していなかったクリアー層だけを剥がせればよかったのですが、変な塗膜が少しでも残っていると結局後で悪い影響が出てしまいそうだったので結果的に全剥離としています。

look154 今回手間が掛かったのがこちらのダウンチューブのロゴで、パッと見は黒く見えますが実際はカーボン地が透けて見えるようになっていて、しかも若干スモークを入れてわざとカーボン目が控えめになるようにしています。

ロゴ周りの最初の画像もあるので紹介させて頂きますね。

look168新車時の塗装はマスキング時に生じる激しい段差がありますが、今回の塗装ではその辺も払拭出来ていると思います。

look158そもそも新車時の工程とは違うので(とても手間が掛かってます)、普通あそこまでの段差が付く事はありません。

look156 さらに大変だったのがこのラグ周りの研ぎで、アウター受け(ワイヤーガイド)などの付属品が付いたままでの研ぎ作業ですから、研いだ際の段差やスジが残らないように注意しました。それの確認の為にも一旦クリアーを全体に下塗りしています。

look157カーボン素材で剥離作業を行うと素地が凸凹になりますから、その後の下地処理(サフェ研ぎ)ではペーパーで研いだだけで平滑なラインは出ませんので、全ての面で何かしら当て板(場合によってはヘラ)を使って美しいラインになるようにしています。

look159 またアウター受けやラグの継ぎ目には元々隙間や巣穴のような物が残っていましたが、そういった所も綺麗になるようパテやシーラーを使って仕上げておきました。

look160 チェーンステー上部にあったLOOKのデカールは新たに塗装で再現しています。

look162 それぞれの色は色見本帳から近似色を探し、それぞれ一色ずつ配合データを使って作成しています(赤のみ若干修正しました)。

look161ヘッドチューブに入れたロゴは、先ほどのフルカラーロゴに使われているグレーの色を使っています。シンプルですが落ち着いていて良い感じですよね。

look163今回ベースカラーに採用したロールスロイスのARCTICA(カラーコード:9561001)なる色は少々変わった原色構成となっていて、通常使う白の他に、ソリッドカラーでは一般的には使わないマイクロチタンホワイト(STANDOXのMIX810、DUPONTだとAM3)が大量に入っる為かとても透明感があって、まるで白磁器のような風合いになっています(その代わり隠蔽性も悪く、作業的には下色を塗ってからの3コート塗装みたいに感じになりましたが・・・)。

look164クリアーは高品位なタイプの「クリスタルクリアー」で、ベースカラーの特徴と相まってガラスのような質感を感じられると思います。

look165 ロゴが単なる黒であれば白の上に塗るだけなので、そんなに手間では無かったのですが、今回はカーボン地を活かした「抜き」となっていたので、マスキングの見切りラインを綺麗に仕上げるのも中々大変でした。新車時よりかは綺麗に仕上がっていると思います。

look152 ちなみに蛍光灯下でも撮影は試みたのですが、白が明るくなり過ぎて全く綺麗に撮れませんでした・・・。恐らくはマイクロチタンホワイトのフリップフロップ性のせいかと思います(パールでは無いのですがまるでパールのように光を反射します)。

look167ただこのロゴに関しては各色を綺麗に撮っておきたかったので、最後にもう一度照明の下でそれぞれの色がよく見えるように撮影しておきました。

それでは後ほど完成のお知らせメール差し上げますね。この度のご依頼、誠に有難う御座いました!また大変長らくお待たせいたしました!

AUDI R8 Carbon Blades

audi以前ご依頼頂いたアウディR8のカーボンパネルです。

元々はカーボン素地のクリアー仕上げだったらしいのですが、恐らく最初のオーナー様がボディ同色に塗ったようで、今度はそれを元に戻して欲しいとの御希望でした。

作業的には結構大変なのですが、一枚100万円くらいするらしく、それなら買い直すよりかは塗り直した方が・・・と言う事でのご依頼となっております。

audi5当然ですが、ドライカーボンです。

audi1元々塗られている色はホワイトパールで、合計4回塗られていました。恐らくは隣接するパネル(ドアとリヤフェンダー)と色が合わなくて大変だったのでしょうね。最初から左右側面全面塗るつもりで見積もりにしておけばこんな事にはならなかったのではと、全く他人事には思えません。本当にお疲れ様でした・・・。

audi2と言う訳ですが、オーナー様が替われば好みも変わりますので、全部剥がして最初の状態に戻します。

audi3この状態までは機械(ダブルアクションサンダー)を使っての粗研ぎで、ただこの状態だと表面はボコボコになっていますから、この後ラインを整えていきます。

アウディR8カーボンパネルある程度は空研ぎで行い、その後水研ぎで平滑に研ぎ出していきます。

audi2水を掛けて確認しています。一見すると綺麗には見えますが、まだまだボコボコです。

スカシパネルを横から透かすようにして見るとスジ状の段差が見えてくるので、下地の状態でそれが見えなくなるまで平滑にしていきます。と言ってもこれ以上研ぐとカーボン繊維がどんどん出て来て後が面倒になるので(巣穴が・・・)、一旦クリアーを塗って、それをサフェーサーの代わりに研いで平滑に仕上げます。

audi3と言ってもこの時点で少しでも旧塗膜が残っていると大変な事になるので、もう完全に、砂粒一つ残っていない状態にしてあります。

audi5ベースクリアーを塗り、通常のクリアー(2液ウレタン)を塗って下塗り完了です。

audi8綺麗に見えますがまだかなりボコボコです。

audi9さらに硬い当て板を使って平滑に研ぎ出します。

サフェーサーに比べてクリアーの場合は切削性が悪いので、この研ぎ作業は少々面倒です。「透明なサフェーサー」があればとても助かるのですが、そもそも切削性の良し悪しは体質顔料で決まっているので、顔料=色が着いている以上透明なサフェーサーなんて存在する筈は無いのです。「樹脂だけ=クリアー」な訳ですから、当然使うのはクリアーな訳でして(苦笑)。

audi10と言う訳で下塗りクリアーを研ぎ終わった状態です。

audi11表面がムラになっているのは下塗りクリアーを研ぎきってしまった箇所で、その下には新車時のクリアー(これもウレタンクリアー)があるので大丈夫です。

ただエッジ部分はどうしても弱いので、本来であればもう一回下塗りとしてクリアーを塗りたい所ですが、その辺は対費用効果と言う事もあるのでバランスよく作業する事も必要となります。

既に部品が無いという事であれば幾ら費用が掛かっても仕方ないという所はありますが、まだ新品部品が手に入るという事であればその半額くらいまでが目安ですかね。

audi12そして本塗り完了です。

綺麗に見えますがやはりゴミは着いていますので、熱を入れて完全硬化させたら磨き処理を行います。

audi14はるか昔の出来事のような気がしますが、この時からまだ3年ちょっとしか経っていないんですよね。一体どうなっているんだか・・・。

audi15磨きの時に使うコンパウンドもペーパーと同様、最初は粗い物から徐々に細かい物への移行させていきます。

ゴミが着いた箇所は#1500程度のペーパーで平滑に研ぎつけ、その後#2000で肌均し(そこだけツルツルになってしまうので)、さらに#3000でペーパー目を均します。

その後は3~4種類のコンパウンドと同じく3~4種類のバフを使って磨きます。車のボディを塗装していた時は電動ポリッシャーを使っていましたが、その後小物の塗装屋になってからはエアーポリッシャーに変わりました。パワーは前者の方がありますが、モーターが内蔵されている分重たくて大変なんですよね(ただしその重みを利用して力強く磨けるという事でもあるのですが)。

audi16そして完成です。

audi17誰が見ても元々白く塗られていたとは判らないと思います(当たり前ですか)。

audi21元々どういった経緯で白が塗られていたのかは不明で、実は結構ハイリスクな作業だったのですが、他のところで断られてしまったの事でこの度お引き受けする事にしました。

audi4その後ディーラーにて取り付けを行い、わざわざ画像を送ってくださいました。

audi5既存の塗膜を削ってしたからパテが出てきたりしたらもうその時点でアウトと言うことで、それについては御了承頂いての作業となっております(念のため)。

今回のように旧塗膜の剥離を行うとそれに伴い大掛かりな下地処理が必要となり、費用に関しては「単に塗るだけ」よりも相当高額になります。どうかご理解下さいませ。

LOOKカーボンフレーム 下塗りスモーク

look84 先日フレーム全体にクリアーの下塗りを行なっていたLOOKのカーボンフレームです。未だ下準備の状態ですが、いよいよ上塗り工程に入って来ました。

今回のフレームでは全体を白で承っていますが、ダウンチューブに入れる「LOOK」のロゴはカーボン地を活かした「抜き」でご指定を頂いておりまして、しかもそれをカーボン地そのままでは無く「スモーク」で表現します。

look80先日塗ったクリアーを再度平滑に研ぎ出し、ラグの段差の「山」の部分で見切ってマスキングしています。またアウター受け部分に膜厚が付くのが嫌なので今回もここはマスキングしてあります。

スモーク濃度については、

「カーボンの地の色だと、黄ばんだような色に見えるのがキライなので、スモークは濃いめで、光の当たり方で少しカーボン柄が見える程度が希望です。少し青っぽく見えても素敵かなと思っています。」

といった内容で御希望を承っておりまして、実は一旦はベースコートに「青」も入れてみたのですが、考えてみれば土台のなる色が黒に近いのでここに色相を加えても意味が無い事に気づきました。フレーム自体が透明か、或いはシルバーや白など光を反射する色であればその上に塗る透過性の塗装の意味が出てきますが、そうでなければ何色を塗っても殆ど無意味なのです。私もうっかりしていました(勿論塗る前に気付いています)。

look81と言う訳でベースコートに透明な黒を塗り、クリアーを塗って下塗り完了です。工程自体は本塗りとは変わりありません。

look82 カーボンの所だけを見ても余り変わった事が判りませんが、端のサフェーサーが塗ってあった箇所が白からグレーに変わっているのが判ると思います。

look83現状ではチューブ全体で見えるのでカーボン柄だと判り易いですが、最終的にこれが残るのは「LOOK」のロゴ部分だけなので、パッと見は単なる黒に、そこがカーボン地になっているなんて殆ど判らなくなると思います。

これでようやく下地がある程度出来て来ました。次は再度全体を研磨して足付け処理を行い、各ロゴのマスキングシートの準備、内容の再確認を行ないます。

本塗りはまた少し先になると思いますがどうぞもう暫くお待ち下さいませ!