AUDI R8 Carbon Blades

audi以前ご依頼頂いたアウディR8のカーボンパネルです。

元々はカーボン素地のクリアー仕上げだったらしいのですが、恐らく最初のオーナー様がボディ同色に塗ったようで、今度はそれを元に戻して欲しいとの御希望でした。

作業的には結構大変なのですが、一枚100万円くらいするらしく、それなら買い直すよりかは塗り直した方が・・・と言う事でのご依頼となっております。

audi5当然ですが、ドライカーボンです。

audi1元々塗られている色はホワイトパールで、合計4回塗られていました。恐らくは隣接するパネル(ドアとリヤフェンダー)と色が合わなくて大変だったのでしょうね。最初から左右側面全面塗るつもりで見積もりにしておけばこんな事にはならなかったのではと、全く他人事には思えません。本当にお疲れ様でした・・・。

audi2と言う訳ですが、オーナー様が替われば好みも変わりますので、全部剥がして最初の状態に戻します。

audi3この状態までは機械(ダブルアクションサンダー)を使っての粗研ぎで、ただこの状態だと表面はボコボコになっていますから、この後ラインを整えていきます。

アウディR8カーボンパネルある程度は空研ぎで行い、その後水研ぎで平滑に研ぎ出していきます。

audi2水を掛けて確認しています。一見すると綺麗には見えますが、まだまだボコボコです。

スカシパネルを横から透かすようにして見るとスジ状の段差が見えてくるので、下地の状態でそれが見えなくなるまで平滑にしていきます。と言ってもこれ以上研ぐとカーボン繊維がどんどん出て来て後が面倒になるので(巣穴が・・・)、一旦クリアーを塗って、それをサフェーサーの代わりに研いで平滑に仕上げます。

audi3と言ってもこの時点で少しでも旧塗膜が残っていると大変な事になるので、もう完全に、砂粒一つ残っていない状態にしてあります。

audi5ベースクリアーを塗り、通常のクリアー(2液ウレタン)を塗って下塗り完了です。

audi8綺麗に見えますがまだかなりボコボコです。

audi9さらに硬い当て板を使って平滑に研ぎ出します。

サフェーサーに比べてクリアーの場合は切削性が悪いので、この研ぎ作業は少々面倒です。「透明なサフェーサー」があればとても助かるのですが、そもそも切削性の良し悪しは体質顔料で決まっているので、顔料=色が着いている以上透明なサフェーサーなんて存在する筈は無いのです。「樹脂だけ=クリアー」な訳ですから、当然使うのはクリアーな訳でして(苦笑)。

audi10と言う訳で下塗りクリアーを研ぎ終わった状態です。

audi11表面がムラになっているのは下塗りクリアーを研ぎきってしまった箇所で、その下には新車時のクリアー(これもウレタンクリアー)があるので大丈夫です。

ただエッジ部分はどうしても弱いので、本来であればもう一回下塗りとしてクリアーを塗りたい所ですが、その辺は対費用効果と言う事もあるのでバランスよく作業する事も必要となります。

既に部品が無いという事であれば幾ら費用が掛かっても仕方ないという所はありますが、まだ新品部品が手に入るという事であればその半額くらいまでが目安ですかね。

audi12そして本塗り完了です。

綺麗に見えますがやはりゴミは着いていますので、熱を入れて完全硬化させたら磨き処理を行います。

audi14はるか昔の出来事のような気がしますが、この時からまだ3年ちょっとしか経っていないんですよね。一体どうなっているんだか・・・。

audi15磨きの時に使うコンパウンドもペーパーと同様、最初は粗い物から徐々に細かい物への移行させていきます。

ゴミが着いた箇所は#1500程度のペーパーで平滑に研ぎつけ、その後#2000で肌均し(そこだけツルツルになってしまうので)、さらに#3000でペーパー目を均します。

その後は3~4種類のコンパウンドと同じく3~4種類のバフを使って磨きます。車のボディを塗装していた時は電動ポリッシャーを使っていましたが、その後小物の塗装屋になってからはエアーポリッシャーに変わりました。パワーは前者の方がありますが、モーターが内蔵されている分重たくて大変なんですよね(ただしその重みを利用して力強く磨けるという事でもあるのですが)。

audi16そして完成です。

audi17誰が見ても元々白く塗られていたとは判らないと思います(当たり前ですか)。

audi21元々どういった経緯で白が塗られていたのかは不明で、実は結構ハイリスクな作業だったのですが、他のところで断られてしまったの事でこの度お引き受けする事にしました。

audi4その後ディーラーにて取り付けを行い、わざわざ画像を送ってくださいました。

audi5既存の塗膜を削ってしたからパテが出てきたりしたらもうその時点でアウトと言うことで、それについては御了承頂いての作業となっております(念のため)。

今回のように旧塗膜の剥離を行うとそれに伴い大掛かりな下地処理が必要となり、費用に関しては「単に塗るだけ」よりも相当高額になります。どうかご理解下さいませ。

AUDI R8のカーボンパネル 本塗り

本塗り前

ようやくここまで来ました・・・って感じです。まだ終わった訳ではありませんから気は抜けませんが、実は当初はどうなる事かと思っていまして年末年始の休み中も気が気ではありませんでした。危うく逆流性食道炎になる所でしたし・・・(いや、単なる食べ過ぎですかね。笑)。

画像は本塗り前の状態で、塗装の表面には下塗りのクリアーが塗られていて、昨日はこれを研いでライン出しをしています。

 

クリアー素地状態で、クリアーの表面にはモヤモヤと模様状になっているのが解かると思います。これは先日塗ったクリアーを昨日行った研ぎ作業で突き破ってしまった為です。

「おいおい、大丈夫か?」って感じもしますがこれくらいしっかり研ぎ付けないとライン出しの意味がありません。それくらい表面にはまだ歪が残っていたという事です。これを柔らかい当て板(ゴムとかスポンジなど)で行っていたらこうはならないと思いますがそれだけラインは歪んだままでしたからその方が考えると恐ろしいです。

で、ここで注意するのは「ベースクリアー」を使わないことです。塗装屋さんなら解かると思いますが、クリアーの塗装でいきなりそのまま塗ったりする事は余り無いですよね?DUPONTならバランサー(XB165)をシンナーで希釈してベースクリアーとしてまず全体に塗りますし(またはABバインダーとかまだ販売されているんですかね?)、STANDOXなら「ベースコートカラレス」(これは高過ぎじゃ・・・)を下に敷いてからクリアーまたは色を塗り始めるのが普通だと思います。いきなりクリアーじゃ「ハジキ」「タレ」のリスクがどうしても高過ぎますので。

私の場合も普通であればまずベースクリアーを1コートないし2コートは塗っておいて上記のトラブル(と言うかミス)を防止するのが基本ですが、このカーボンパネルの状態でそれを行うと「エッジマッピング」(チヂレの一種)を起こしてしまいます。塗膜が切れている(エッジが露出している)のでこれは当然ですよね。

という事で、こういった場合はちょっと怖いですがいきなりクリアーコートから始めます。なのでハジキには十分注意するように脱脂作業は念入りに念入りに行い、タレ防止の為に最初のクリアーコートは乗せ過ぎないように乗せ過ぎないように注意します(わざと二回繰り返してます。それくらい本番では注意しているって感じです)。

クリアー塗布完了

そして無事クリアーコートが完了です。通常は2コートが基本ですが、タレ・ハジキの防止の為に珍しく最初にドライコートで一回りしてから本塗りとしていますので「2.5コート」って感じですかね。パネルは台の上に直置きに見えますがガムテープの芯などを挟んでフチが宙に浮くような感じにセットしています。

 

クリアー塗装完了

塗り方としては最初は周りのフチから始め、給油口のフチ、そしてフチのエッジを地面から45度くらいの角度で、そして上面を下から上に仕上げていきます。上から下でも良いですが、最初に塗った方がクリアーの馴染みは悪く肌は荒れる傾向になる為、「見せる所を最後に」が本塗りの基本ですので。 ただこれはケースバイケースで、どうしても磨きが必要になる場合は「磨き易い場所を犠牲にして」と言う事もありますかね。1BOXのような大きな車体で屋根の肌を荒らしたりしたら最悪ですので(車高の高い車の屋根の磨きは本当に大変です)。

現場作業だけだからといって単に手を動かすだけではなく、どうしたら最短で一定以上のレベルに行けるかを常に考えるのも必要なのです。時間が余ればその分余裕を持った仕事が出来ますし、より上のレベルに仕上げる為に時間も割けますしね。

と言いつつこの時ついでにシャアザクのプラモに下塗り用としてのクリアーを塗らせて貰っていたりもしますが(笑)。

それでは完成までもう少々お待ち下さいませ!