パブリカステアリング塗装 完成

 大変お待たせしました!先日本塗りを終えていたトヨタパブリカのステアリングとホーンボタン(プレート)の塗装、本日完成となります。

最初の状態の画像も紹介しますね。元の状態は大分違っていたので、画像は多めの紹介となります。

ぱっと見は大した事無さそうですが、ステアリング全面にひび割れが生じていました。

 ステアリング内部には鉄製のフレームが入っているので使用自体は問題無いようですが、

 底まで達している亀裂と、樹脂の表面全体に細かいひび割れが発生しています。

色も黄色く変色していて、爪で擦ると粉が出るような状態でした。

 最初の画像に比べて随分と色が違ってみえますが、表面を削って劣化していない内部の色を基に調色作業を行っていますので、むしろ新車時の色に近く出来ているかと思います。

 単に亀裂に接着剤を塗っただけではいずれ再発してしまうので、

 割れていた箇所はV字型に大きく切開し、

強度の高いエポキシ系接着剤を使い、芯の部分と樹脂をガッチリ固めています。

またその後もエポキシ系接着剤を多用し、観賞用では無く実用を想定して補修をしています。

プライマーサーフェサーにもエポキシ系を使い、さらにガラスパウダーを入れて強度を高めています。

 この部分は補修途中に直した箇所の隣にヒビ割れが生じ、二度直しました(ショックだったのと、他にも亀裂が出るのではないかと少し時間を空けました)。

ネジ穴周りは特に劣化が激しかったので、

その辺りの樹脂は切り取ってしまい、

元のように穴を開けたABS樹脂の板をカットし、エポキシで固めています。

 言われも分からない仕上りに出来ているかと思います。

 途中行った何度かの熱入れで、切り貼りしたプレートの跡が出るかと思っていましたが、直した本人でも分からないくらい何も残っていませんでした(ただし今後熱による膨張と伸縮で跡は出るかも知れません)。

一番嫌なプレスライン付近も良い具合に割れが生じていまして、

こういうヒビは接着剤を流し込むだけで済ませたいのは山々ですが、それらの周りは割れ予備軍にもなっているので、そういった箇所は大きめに削り落として芯となるフレームと共にエポキシで固めています。

 この部分は単なる円柱に見えますが、実際は逆アールに反っていて難しいラインでした。さらにそれに連続するプレスライン部が自然な感じに見えるよう、そこは何度も修正しています。

 また今回はステアリングと同色で、色見本キーホルダーの制作も承りました(別途有料にて承っています)。

裏側にはシルバーでデカールも入れています。

それでは後ほど完成のお知らせメールを差し上げます。この度のご依頼、誠に有難う御座いました!


【後日】

それから2年後、実際に車体に装着されて使われているステアリングを見せて頂きました。

こちらのパブリカはガレージ保管しているような物ではなく、日常的に走らせている車両との事で、

ただそれでもあの割れていた箇所は再発する事無く、

塗装を終えた時の美しい状態のままを維持していました。

ひどい割れの他に劣化で全体に細かいクラックが入っていましたが、下地に使ったパテやサフェーサーはエポキシ系でがっちり固め、さらに骨材としてガラスパウダーを入れておいたお陰でそれらもしっかり抑えられたのだと思います。

実際かなり大変な作業でしたが、その後トラブル無く実用されている姿を見れるのは塗装屋冥利というか全ての苦労が報われますね。

わざわざありがとうございました!

パブリカステアリング ホーンプレート 本塗り⑯

 先日ステアリングの本塗りを終えているトヨタパブリカのステアリングホーンボタン(プレート)です。サフェの塗布は二回目で、#320→#400の空研ぎでラインを出した後、

水研ぎの#600→#800で細かいラインを整えます。エンブレム周りの溝は#1500の耐水ペーパーを折ってその角で削りました。最後に当たりの柔らかい布状研磨副資材(アシレックスレモン)でペーパー目を均しています。

全体を良く脱脂清掃し、マスキングを貼りなおして本塗り準備完了です。

エンブレム部のマスキングは、サイズの違う3種類を重ねて貼っています。一番小さいサイズはエンブレムピッタリで、そこから少しずつサイズを大きくしています。

ベースコートを塗る度にエンブレム部のマスキングを剥がしていきます。

最後は全部剥がしてしまい、エンブレム周りを確認します。

最初にわざわざ版(データ)から作ったのは、こういった使い方や、途中で何度もマスキングをするのが判っていたからで、これを毎回カッターで切っていたら時間の無駄ですし、エンブレム(またはサフェ)を傷つけるリスクしかありません。

マスキングは同じように三枚重ねにしました。

クリアーは2コートに分けて塗っているので、同じように1コート塗る毎に一枚ずつ剥がし、塗り終わって問題が無ければ最後の三枚目も剥がして本塗り完了です。

尚、ベースコートは最初に調色をして作っておいた色となります。

クリアーはステアリングの時と同様、クリスタルクリアーに5%程MIX008を入れて質感を落とすようにしています。

この後は一晩自然乾燥させ、後日60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。

それでは完成次第改めて紹介をさせていただきます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

トヨタパブリカ ステアリング 本塗り⑮

 先日サフェ研ぎを終わらせていたトヨタパブリカ700の純正ステアリングです。後で聞いた話ですが、世界に3個(3台)しかないうちの一つみたいです(間違っていたらすいません)。

 台はいつものように回転出来るようにしておきました。

 後から修正した箇所も良い具合になったと思います。

 ネジ穴には頭が邪魔にならないようイモネジを挿しておきました。

 まずはベースコートを塗布します。

 色は予め調色をして作っていて、ただ途中で塗料が足りなくなると困りますから、最初の2コートは似たような白を下色として塗っています。具体的にはVW社のクールホワイトです。

また部分的に塗膜が厚くなっても大丈夫なよう、硬化剤も10%くらい入れてあります(スプレーし難い形の物は、気付かないうちに塗り重なってしまう恐れがあります)。ベースコートの塗り過ぎは無用なトラブルを招きます。

ほぼ作り直しとなったラインは、しっかりと線を出しつつ、ビニール被膜のような柔らかさも表現出来たと思います(この辺りも何度も修正しました)。

 そしてクリアーを塗って本塗り完了です。

 クリアーには事前にテストした時と同様、輝きを鈍くする為にフリップコントロール(MIX008:メタリックアディティブ)のベースコートを5%添加しています。

ちなみに2コートソリッドでの白の場合は、ベースコートをそのまま5%添加したりもします(この場合は輝きを鈍くするというよりクリアーによって生じる黒味を抑えて隣接パネルと色を合わせる為)。白系以外の赤や黒ではそこまでクリアーの色味が分からないのでする必要はありません。

 予想していた50倍くらい時間を掛けてしまったので、辛かった日々が走馬燈のように頭に浮かびます(まだ終わっていませんが、塗り終わった時に涙が出そうでした)。

 現時点で最後の割れを修正してからは数か月が経っていて、またその後何度も熱を入れているので、今後は(何もしなければ)割れは発生しないのでは、と考えています。

 ただし根本的なところは(元々あったビニール皮膜は)残したままなので、今後車体に取り付け、同じように使っていたら再び割れが生じる可能性はあります。もしも今の状態を維持するなら、一旦これで型を取って既存の皮膜を全て除去し、残った金属のフレームを型に入れて樹脂を充填する、みたいなやり方が必要かと思います。

と思って検索してみたら居ました(笑)

私的な見解としては、樹脂とくっつく所はメッキのままでは無く、サンドブラストを掛けてしっかり足付け処理をしておけば、同じようにひび割れはし難いのでは無いかと思っています。

他には↓

 

↑こちらはアルテコのような物を使った簡易的な仕様ですね。再発は免れないと思いますが、これなら簡単なのでDIYでも可能かと思います。もしくはまだオーナーがついていない中古車の場合などでしょうか(板金塗装屋さんなら意味が判るかと)。

 凸凹はオリジナルの形状をそのまま残すようにしています。

 この部分はクリアーも垂れないよう非常に注意しました(これだけが原因では無いのですが、現在逆流性食道炎で体調が最悪です)。

残るは茶色のホーンプレートで、そちらも進行次第改めて紹介したいと思います。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

トヨタパブリカ ステアリング 下準備⑭

 先日サーフェサーを塗っておいたトヨタパブリカ700の純正ステアリングです。

その後60℃40分程の熱を掛け、全体にベースコートの黒をパラパラと塗ってガイドコートとしておきました。

 最初に#320~#400の空研ぎでライン出しを行い、その後#600~#800の水研ぎで全体を均しています。

アルミ製のホーンプレートも同じようにして研いでおきました。

まだ手を入れたいところはあるのですが、このまま続けるとさらに一年時間が掛かってしまいそうなので、これで下地処理は完了とします。よく「妥協しない」といった言葉を聞きますが、塗装に関しては妥協をしないと一つも完成する物は無いので、とてもそうは言えません。

 そしてトップコート(クリアー)についても検証しておきました。

色については一年前の今頃に既に作ってあって、クリアーに関して今回オーナー様からは「余りギトギトさせたくない」との事でしたので、裏技的にクリアーに5%程ベースコートを入れてテストをしてみました(一応メーカーと言うかデモマンも認証済みの方法です)。

 使うのはこちらのメタリックアディティブで、塗料の見た目は半透明の白といった感じです。主にメタリックの粒子をぎらつかせる場合に使いますが、クリアーに入れると黒ずみを抑えたり、質感を劣らせられたりする効果があります。

ただ私はそういうのは使わない派だったので、STANDOXでは今まで使用した経験が無く(DUPONTではよくやっていました)、なので今回は一応事前にテストを行っています。

また今回ロゴ入りのキーホルダー作成も承っていましたので、それを入れない仕様の色見本も一緒に塗装しています(有料にて承っています)。

以前ご依頼頂いて作成した画像も紹介しますね。

TOYOTA86のブレンボキャリパーを塗った時に一緒にご依頼頂いた物です。この時は配合データが残っていたのでそちらを入れてあります。

塗ったばかりの状態では違いが判りませんが、

その後熱を掛けて硬化させた物を見ると、確かにMIX008を入れた方が透かしが白く、少しぼやけたような感じになっています。まあMIX008は元々白っぽいですし、またつや消しの効果もあるので、これは当然と言えば当然だと思いますが・・・。

とりあえず悪いことは起きていないので、本塗りでもこの仕様で行ってみようと思います。またこれについては今後も検証を続けていこうと思います。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

トヨタパブリカ ステアリング 補修⑬

 先日サフェ入れまで終わっていたトヨタパブリカ700の純正ステアリングですが、一部気に入らない所があったので、部分的に素地まで削り落とし、エポキシ層からやり直しを行っていました。画像はその後ポリエステルパテを塗ったところで、ここから再びラインを整えていきます。

 修正した箇所はサフェーサーまで塗り終わっていたので、そこから再びポリパテでライン出しの作業となります。一歩進んでは五歩下がるような感じで、とにかく時間が掛かっています。

その後また数日寝かしておき(大抵は恒温器に一緒に入れています)、再びポリパテを塗りました。

ポリパテは主剤100に対して硬化剤が3%で、これらは目見当では無く秤で重さを量っています。

 この後再び数日寝かします(このパテの特徴として、研げるまでにかなり時間が掛かります)。

 そして後日パテを研ぎ、ホーンプレートを装着してみました。

 本来は中に金具(接点)を入れるのでもっと隙間が空くのですが、ラインを確認したかったので付属品は付けず一番奥まで入れています。

 プレート自体の形が元々歪んでいますが、それはオリジナルなので修正しないようにしています(その場合アルミを削らないといけなくなりますので)。

 そして金具(接点)を着けてみました。

 金具の穴には遊びがあって、これでチリ調整ができるようになっています。

 取り敢えずですが再び仮合わせしてみました。実際にはこのように隙間が空き、ホーンプレートが下にズレたような位置になります。

 このプレートを押すと先ほどの金具が接触して繋いだ配線が短絡し、ホーンが鳴るという仕組みです。

 サフェーサーを塗る部分(ほぼステアリング全体)を#320~#400で研磨し、よく脱脂清掃します。

 今回のサフェ入れでは裏側の凸凹とした部分には塗りませんが(出来るだけ太くしたくない為)、ボス周りの部分はかなりラインの修正を行っているので、そこをしっかり塗れるよう持ち上げた状態に固定しました。

 この辺りのラインも変だったので今回大幅に修正しました。

 パテ周りを重点的にサフェを塗り、最後に希釈したシンナーで表側全体にも塗りました。

かなり前の事なので、判り易いよう改めて最初の状態も紹介します。

元々はこのように至るところで亀裂が入っていました(中に鉄のフレームが入っているので安全面では問題はありません)。

亀裂を直しつつ、ステアリングが太くならないよう注意をしています。

厄介なのははっきりと割れた部分だけでは無く、ステアリング全体がこうなる可能性がある事で、それの予備軍にも対応しないといけない事が大変でした(まだ全く終わっていませんが)。

ちなみに隙間のチリはエポキシ接着剤(3Mパネルボンド)で形成しています。普通のパテ(ポリエステル系全般)だと使っていてポロっと取れてしまう可能性が否めないからです。

途中何度も熱を入れていますが、今のところ新たな亀裂は出来ていません。

実はこの割れを修理してサフェを入れた後、少しズレた箇所にストレスが生じたためか、今度はそちらが割れてしまったので二度補修をしています。その時はフレームの金属部分にも接着剤を塗っているので多分その辺りはもう同じことは起きないと思います。

そもそもこの皮膜がフレームの金属にしっかり密着していればここまで割れる事も無かった筈で、同じような事では、ヘッドカバーの塗装(新車時の結晶塗装)がよく剥がれているのは塗装自体が劣化したのではなく、下地にプライマーを塗っていない為に塗装の密着性能が下がってペリペリと剥がれているのです。キャリパーの塗装も然りで、「耐熱塗装じゃないと」と言う前にまず下地を見直すべきかと思います。

 本来であればステアリング全体をガラスクロス等の繊維で補強してあげたいところですが、そうなると2ミリくらい分厚くなってしまうので、オリジナルを損なわない程度の補修に留めています。

こういったちょっとした亀裂も、そのまま接着剤を塗り込んだだけでは再発してしまうので、

大きく切開して隙間に接着剤を流し込んでから形を整えています。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!