セリカXX 1G-GEUヘッドカバー 下準備

先日サフェーサーを塗っておいたトヨタセリカのヘッドカバーです。こちらは腐食が酷かった方ですね。その後60℃40分程の熱を掛け、ガイドコートとしてベースコートの黒をパラパラと塗りました。

サフェーサーの役目は塗膜の充填で、それによって傷や凹み等をそれで埋める事が出来ますが、反面それ自体によって肌が荒れる=塗膜の表面が凸凹になるので、上塗りをする前にはそれを平滑にする作業が必要となります(それを軽減する為に「ノンストップフィラー」=レベリングの良いサフェーサーもありますが、充填性は低いのでこういった場合には使いません)。

また2液のウレタンサフェーサーは、DIYや模型で使うようなラッカーサフェ―サーに比べて堅さ(粘り)があるので、ペーパーを単に指で押さえて使う様な事は出来なく(余計に凸凹になります…)、しっかりとした当て板を使って研ぐ必要があります。簡単に言うと地獄のような作業ですね(指が攣ります…)。

また使用するペーパー(研磨紙)は最初から#800を使っても歯が立たないので、最初は#320から始め、その後#400→#600→#800とペーパー目を均して行きます。ただ今回は何度かに別けての塗装=次は本塗りでは無く「下塗り」としますから、ペーパーは#400まででOKとします。これだけでもかなりの時間を短縮出来ます。

凹み文字部の研ぎが終わったら、次は周りを研ぎます。こちらも同じく#320→#400までとしています。当然ですが#400までだと傷が深いのでそのまま上塗りを行うとペーパー目が残ってしまいますが、その後の塗りと研ぎでそれらは消えるので問題無いという訳です。

プラグカバーはあわよくば薄くプライマーだけ塗ってそのまま上塗り(艶消し黒)が出来ればと思っていましたが、錆による浸食が想像以上に激しかった為、こちらもサフェーサーまで塗り、研ぎ作業も行う事にしました。平面では無いので地味に研ぎ作業は大変ですが、どうせならという事でこちらも一旦下塗りを間に挟む事で、通常行うペーパー目の均し作業=#600→#800を省く事にしました。どの道一緒に塗って熱も入れられますし、その方が間違いがないですからね。

そしてこちらは程度の良い方のヘッドカバーです。

こちらは腐食が少なかったのでサフェでは無く2Kエナメル(グレー)を塗る事で肌を荒らさないように仕上げました。下地には先ほどと同様ビスフェノールA型のエポキシプライマーを塗っている為、耐久性(防錆効果)は同様となりますからご安心くださいませ。

平面部分は、表面張力でフチに溜った部分をペーパーで平滑に研ぎ、凹み文字部は研ぎ作業は行わず、ナイロンブラシとウォッシュコンパウンドを使って足付け処理のみとしています。これで3時間は短縮出来ます。

結晶塗装は下地の粗を目立たなくしてくれる特徴からこういった下地作業を省く事が出来るのですが、平滑に仕上げるとなると腐食や傷など全て処理しなければならないのでどうしても手間と時間は掛かります。

その後よく清掃し、タイミングが来るまで恒温機の中で保管しておきます。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

セリカXX 1G-GEUヘッドカバー 下準備

先日旧塗膜の剥離とサンドブラストを行っておいたトヨタセリカXXのヘッドカバーと、

 スチール製のプラグカバーです。2台分(2セット)です。

こちらは両面にプライマーを塗りますが、

まずはスポット溶接で着いている金具の合わせ部分の処理をします。後で錆が出てくるのは大抵ここで、何故か多くの塗装屋さんは無視しがちなんですよね(判ってない筈は無いと思うのですが…)。

使用するプライマーはエポキシ系で、さらに耐蝕性の高い浸透型タイプを使います。

そのままだと隙間に入り難いのでシンナーで希釈し、さらにエアーブロー で強制的に隙間の奥まで届かせます。反対側から噴き出させるような感じですね。

その後はまず裏側に同じく耐蝕性の高いエポキシプライマーを塗り、

一旦60℃20分で半硬化させます。

少し冷まして塗膜が固くなったら(暖かいままだと柔らかく傷が付き易いです)、

ひっくり返して、

続けて表側にもエポキシプライマーを塗布します。

錆びていた箇所は浸食されているので、

今度はウレタンサフェーサーで塗膜を充填させます。

サフェを厚く塗っても結構な凹みは残っていて、「だったら先にパテを塗っておけば良かったんじゃ?」と思うかも知れませんが、それはやってはいけない事の一つでして、パテに防錆効果(防錆顔料的な化学的な効果)はありませんから、結果前回も紹介したようなこのような感じに後から大きな問題が起きてしまうのです。

ヘッドカバーの方も大分腐食で浸食されてしまっているので、当初予定していた方法ではちゃんと仕上がりませんから、こちらもエポキシプライマーを使った重防錆仕様にしておく事にしました。ちなみに表面はあまりにも凸凹していたのでダブルアクションサンダーで研磨してある程度均しています。またリン酸処理も行っています。

オイルキャップ部はテープでマスキングするのは手間が掛かるので、径を測ってアクリル板をレーザーでカットする事にしました。

若干テーパー状になっているので、サイズを合わせるとピッタリ嵌ります。

通常のヘッドカバーだとこの断面を最後にフライスで切削していたりするのですが、今回はこの面にも塗装が施されていたので、同じように仕上げます。

まずは耐蝕性の高い浸透型エポキシプライマーを2コート程塗布します。

これは難儀になりそうですね・・・。

ちなみにもう一方のセットは腐食による浸食の被害が少なく、

なので今回はそれぞれ違う方法で下地作業を行おうと思います。

先ほどの浸食が激しかった方は、スチール製のプラグカバー(プレート)と同じくウレタンサフェーサーをウェットオンウェットで重ねます。

後でしっかり研げるよう、ウェットで4コート程塗っています。

対してもう一方の程度の良いヘッドカバーは、サフェーサーでは無く「2Kエナメル」を使う事にしました。クリアーと同様トップコート用の2液ウレタンで、白と黒を混ぜたグレーを作ってそれを同じくウェットオンウェットで塗装します。

またこちらは凹み文字部の研ぎ作業も行わない予定なので、無用に膜厚が付かないよう(凹み文字が埋まらないよう)、口径の小さいトップコート用スプレーガン=IWATAエクリプス(HP-G5)を使う事にしました。先日1/18ビートルのミニカーに使ったガンですね。

ぱっと見は中塗り塗料(サフェーサー)と変わりありませんが、

クリアーと同様に塗膜表面が平滑化(レベリング)するので、研ぎにくい凹み文字の作業を簡略化する事が出来ます。

そもそも当初の予定では、ここでベースカラー(シルバー)を塗ってそのままクリアーを塗る予定だったのですが、旧塗膜を剥がしてみるとどうもそう簡単にはいかないという事が発覚し、なんとか大幅な作業量の増加を抑えらればと思っての作業としています。腐食が酷い方はどうしようも無いですが、それでも何とかコストを抑えつつ良い方法で出来ればと思っています。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

セリカXX 1G-GEUヘッドカバー 素地調整

先日旧塗膜を剥離しておいたトヨタセリカXXのヘッドカバーです。その後も溶剤槽から引き揚げてはワイヤーブラシで擦って再び浸けてを何度か繰り返し、ある程度の塗膜を剥がしました。

プラグカバーはハンマートンの塗膜が厚く剥がれ難かったので、サンダーを使ってある程度を削り落とします。

錆は素材を浸食し、さらにその奥で進行し続けるので、サンダーだけで削っただけではそれを除去するのは難しいです。よく自動車ボディのレストアで錆びている箇所をサンダーだけを使って削り、しかもその上に直接パテを塗ったりしている光景をみる事がありますが、あれは根本的な修理では無く、単なる延命でしかありません。

こちらの自転車フレームは、自動車塗装屋さんで施工して半年でこうなってしまったとの事です。下からは再発した腐食とパテが出てきました。

という訳で、

そういった浸食されて凹んだ箇所も切削が出来るよう、サンドブラストを行いました。

裏側も同様に行います。

ヘッドカバーは腐食が酷い方と、

こちらがまだマシな方ですが、どちらも同様に腐食が出ています。

ブラストを完了しました。

この後はエアーブローだけして、タイミングが良くなったらリン酸処理→洗浄を行います。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

浸け置き洗浄~剥離

昨年の暮れにお預かりしておりましたスカイラインGT-R RB26エンジン用タイミングベルトカバーです。その後アルカリ洗浄槽に浸け置きをしておきました。

元々艶消しの黒に塗られていて、剥がれたその下から純正のガンメタリックが見えます。元々の素地調整が悪く、またプライマーが塗っていない事もあってRB26のエンジンパーツは経年で腐食が出易い傾向にあり、現在は新品でも塗装前にはサンドブラストを推奨しています。

シーラーを切り取り、この後は溶剤槽に浸け置きします。

こちらは同じくらいの時期にお預かりしておりましたトヨタセリカXXのヘッドカバです。先に溶剤槽に浸け置きしておいたので、入れ替わりで剥離作業を行っています。窪んだ所の塗膜は取れ難いので、もう少し浸け置きして剥がれ易くしておこうと思います。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

セリカXX 1G-GEUヘッドカバー色確認

先日お預かりして色の確認をしておいたトヨタセリカXXのヘッドカバーです。

その後アルカリ洗浄槽の浸け置きで一回目の洗浄を終えたので、改めて文字の青色の確認をする事にしました。

使用するのはRM社の色見本帳で、ただ当店で使用している塗料はSTANDOXですから、ここから色を見つけても配合データは得られなく、ただその後知り合いの塗装屋さんから測色機(画像右下)を譲って頂いたので、今回はこれを使って色見本から測色してしまおう!という作戦です。ちなみに測色機もメーカー毎に違っていて(ハードは恐らく同じ物を使いまわしソフトを各社専用にしていると思われます)、しかもお値段は100万円くらいはしますから、かなり特殊と言うか贅沢な使い方をしていると思います。

RM社の色見本=Colormasterのシステムの良い点としては、「青」といったら青系だけの色見本を纏めている所にあります。通常自動車補修塗装用の色見本は「自動車メーカー」毎に別けられているのが普通で、RM社の色見本にはこの概念が無く、PANTONEや日本塗料工業会のような色相毎での色見本の使い方が出来るのです。

・・・が!そんな中でも同じような色味の見本は見つからず、だったらという事で、色相はズレていても明度・彩度(濁り)が似たような色を選び、

それを測色してSTANDOXの配合データを得て、その中に使われている「赤味の強い青」を、「黄色味の青」への比率を多くする事で対応する事にしました。塗装屋さんなら判ると思いますが、色味(色相)を変えるより濁り具合を変える方が案外難しかったりしますよね。例えば「ピンク」を作る場合、もう少し色を淡くしようと思って白を足すと「明度」が上がり「彩度」は落ちます。逆に赤味を強くしようと思うと彩度が上がり明度が落ちるという全体のバランスが変わる事になる為、調色作業はそう単純な事では無いのです。

と言うような感じで、「塗装」と一括りに言っても覚えなくてはならない細かい仕事が沢山あり、それでいて業界全体の賃金が低い傾向にあるので人材不足は早い段階から顕著に表れ、このままではマズイ!と言う事で、誰でも比較的簡単に塗装の仕事が出来るようにこういった測色機の様な物が登場したのだと思います。

ちなみに今回の色は厳密な調色作業をする訳ではありませんので、後日本塗りの際に配合データから一部の原色の比率を変え、出来た色と選んだ見本とを見比べて簡易的に色の調整を行います(非調色でこの場合は無料)。なのでヘッドカバーは剥離作業を行うべく、この後溶剤槽に浸け置きをします。残った油汚れもここでさらに洗浄する算段です。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!