セリカXX 1G-GEUヘッドカバー塗装 完成

先日本塗りを終えていたトヨタセリカXX(昭和59年式A60系)の1G-GEUエンジンヘッドカバーです。その後スチールプレートのプラグカバーも本塗りを終えています。

こちらのヘッドカバーは内側の汚れが酷く、そのままアルカリ洗浄槽に浸けただけでは汚れが落ちそうも無かったので、

バッフルプレートを取り外し、サンドブラストも行って汚れを除去してあります。

元のようにシーラーを塗り、

ネジを取り付けて数日寝かします。

そして完成です。大変お待たせしました!

最初の状態も紹介します。

元々はこの様な状態で、

素地のアルミは腐食に浸食されてかなり酷い状態だったのですが、

サンドブラストを行い、耐蝕性の高い浸透型エポキシプライマーを塗り、「研磨→プライマー塗布→サーフェサー塗布→完全硬化→研磨」といった工程で腐食の再発を抑えつつ(重防錆仕様)、サフェで下地を整えてからの上塗りとしました。

こちら左側のセットが文字の彫りの浅い、腐食の酷かった方ですね。

こちらは凹み文字の彫が深い方です。

彫りの深い方は左側のセットほどにまでは浸食は酷く無かった為、エポキシプライマー後はサフェの代わりに2Kエナメル(トップコート)を下地(サフェ)替わりにして下地を整えています。

当初はどちらもその工法で行う予定でしたが、こちらのセットの浸食が予想以上に深かった為、サフェーサーの塗り~研ぎ作業を追加しました。

こちらが彫りが浅い方です、TOYOTAの左側にある「=」が、オイルキャップ取り付け部から少し隙間が空いたデザインになっています。

彫が浅いと文字部の塗り分けが難しく、塗っては削り取ってを何度も繰り返して輪郭を整えました。

こちらは彫が深い方です。

研磨する際に面出しを行う事で輪郭をシャープに仕上げ、拭き取り&研磨の方法での塗り分けも綺麗に仕上がるにようにしています(どの場合でもこの様に上手くいく訳ではありませんので念のため)。

ちなみにさらに大変だったのがこちらのスチール製のプレート=プラグカバーで、

元々はこうだった物を、

サンドブラストを行ってこちらも耐食性の高いエポキシプライマーを塗ったのですが、腐食による浸食が激しく、これを平滑に仕上げるのに中々手間が掛かりました。

お陰でそのような状態だったとは微塵も感じない程の仕上がりになっているかと思います。

色は原色の黒(MIX571)そのままで、トップコートは半艶クリアー仕上げとなります。

各画像はサイズの縮小以外は未加工となります。

それぞれを組み合わせてみました。

オリジナルは半艶っぽい仕上がり(恐らくはクリアー塗装無し)の状態ですが、

オーナー様的に純正オリジナルには拘ってはいないとの事で艶あり仕上げとしています。

クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーの仕様となります。

こちらは彫が浅い方ですね。よく見るとなるほどと判ると思います。

こちらも浅い方です。食み出た箇所を拭き取ろうとすると、凹んだ内側の色も落ちてしまうので、研磨メインで除去しました。

こちらは彫が深い方ですね。ちゃんと凹んだ文字の内側に壁があるのが判るかと思います。

仕上がり&作業の手間としては、平面にマスキングシートを使って塗り分ける方が断然楽で綺麗に仕上がる訳で、こういった凸凹した面を、比較的見れるような品質に仕上げて塗り分けるのはかなりの手間が掛かります。

ただこういった部品は単なる消耗品という訳では無く後世に残ったりするので、施工する側としてはとても楽しかったりもします。

動画も撮影したので紹介します。

それでは後ほど完成のお知らせメールを差し上げます。この度も当店をご利用いただきまして誠にありがとう御座いました!

セリカXX 1G-GEUプラグカバー(プレート)本塗り

先日プライマーを塗って下塗りのクリアーを塗っておいたトヨタセリカの1G-GEUエンジンヘッドカバーに着くスチール製のプラグカバー(プレート)です。その後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させておきました。

ヘッドカバーについては先日本塗りを終えています。

サフェ研ぎの場合と同様、ガイドコートとして ベースコート用の黒をパラパラと塗り、ペーパー目が残らないようクリアーを研ぎつけます。

右奥が研ぐ前で、左手前が研ぎ終わった状態です。黒く塗ったガイドコートが残っていたらそこは研げていないという事になるので、そこがそのまま残ると上に乗った塗膜は密着せず、経年でそこの塗膜が剥がれたりする恐れがあります。「俺はこれで30年やって来たから大丈夫」というような根拠の無い自信より、しっかり目で見て確認出来るようにする事の方が断然確実だと思っています(そもそも塗装屋は経験年数と仕上がりが必ずしも比例するとは考えていないので、勤続年数は何の自慢にもならないのではと)。

その後よく脱脂清掃し、

エアーブローを行って埃を飛ばしたら本塗り開始です。

まずは裏側から始めます。こちらはクリアーは塗っておらず、エポキシプライマーのみの面ですね。

ベースコートの黒を塗布します。

ベースコート黒の原色(MIX571)そのままだと多少艶が残って浸食された跡が目立ってしまうので、

艶消し剤を少量入れて「艶消し黒」になるようにしました。

艶が消えると光が反射しなくなるので素地の粗(浸食跡)が目立たなくなるといった高価があります。MDFを塗る時などにも使っている方法ですね。

その後表側にもベースコートの黒を塗布します。裏側に塗った黒と同じ原色=MIX571ですが、こちらには艶消し剤は入れていないので(原色そのままなので)、多少艶が出ているのが判ると思います。

当初はこれで終わりと考えていたのですが(クリアーを塗らない【激安コース】の仕様)、

折角なのでトップコート=半艶クリアーも塗る事にしました。

半艶クリアーも艶ありと同様ウェットで、合計2コート塗ります。

その後は自然乾燥で、時間が経過すると共に艶が消えていきます。

ちなみに前回2000GTのエアークリーナーボックスに半艶クリアーを塗った際、一部塗り方が足りなく肌が残ってしまったと感じた時があったので(その際はそれとは別に目立つゴミが着いたので塗り直しました)、半艶仕上げと言えども肌を気にしてしっかりウェットで塗るように心掛けるようにしました。

この後はいつもと同じ様に一晩自然乾燥させ、後日60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。

これで全ての塗装が完了したので、あとはヘッドカバー裏にバッフルプレートを取り付けたら完成です。

それでは完成次第改めて紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

セリカXX 1G-GEUヘッドカバー 本塗り

先日足付け処理をしておいたトヨタセリカの1G-GEUエンジンヘッドカバーです。

シルバーに塗装後、一旦クリアーで全体をコートして完全硬化してあるので、シンナーで拭きとっても大丈夫な状態です。

時々こういった凹んだ文字に「塗料を流し込む」といった事をイメージされている方が多いのですが、プラモデル等の模型の塗装と、今回のような実用を前提とした塗装とでは全く違うものなので、そのような事は通常行いません。またプラモデルの墨入れのように簡単に拭き取れる塗料=所謂「エナメル」と呼ばれるような物も使いません。そもそも足付け処理無しで塗料を塗り重ねるという事自体、絶対にやってはいけない事の一つですので…。

なので今回使う塗料も通常のSTANDOXベースコートで、通常自動車補修塗装(板金塗装)でこういった変則的な事は行いませんが、基本的な事はそれと同じ内容となります。

食み出た塗料はシンナーで拭きとるので、余計に膜厚を着けたくはありませんから、使用するガンは口径の小さいエアーブラシ(0.5mm)を使っています。

ブルーが終わったら、

今度はそこをマスキングし、

黒を塗ります。同じく通常のベースコートです。

しっかり乾いたらスポンジパッドにウェスをたるまないように巻き、シンナー(一般的なSTANDOXベースコート用シンナー)を少量垂らして周りに食み出た余分を拭き取ります。

その後#800~#1300で空研ぎして残りの塗膜を削り落とします。

拭き取った跡が少しでも残っていると一体どこからやり直せば良いのかと絶望的になるので、何度もチェックを行います。

また当然ですがそんな簡単に余分を綺麗に拭き取れる訳では無いので、再び塗り足してまた拭き取るという作業を何度も繰り返し、輪郭が綺麗に仕上がるようにします。朝からこれを初めて、終わったのが夕方といった感じでした(私自身ちょっと甘く見ていました・・・!)。

全体をタッククロスとエアーブローでしっかりクリーニングしたら最後にクリアーを塗って本塗り完了です。お待たせしました!

クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーの仕様となります。

オリジナルは半艶に近い仕上がりだったのですが、特に「純正同」に拘っているという事では無いとの事で艶あり仕上げにしています。そもそも純正の塗装はどれだけコストを落とせるかで決めている所はありますからね(私的には見た目より下地=せめてプライマーは塗っておいて欲しいといつも願っています)。

今回の塗装費用は結構な金額になっているのですが、それでも予想していたより倍くらい時間が掛かってしまいました。

しかしながらそれだけに中々良い感じに仕上がっているかと思います。

純正の塗装は当然ですが今回のような行程では無く、恐らくはマスク型のような物を使用してのライン塗装(大量生産)を行っているのだと思います。以下の動画のような方法ですね。

マスク型が金属で出来ているので、汚れたらその都度溶剤で洗う事が出来るので大量生産での塗り分けに有効的な手法ですね。

 

そう考えると面倒な事をしているとは思いますが、一つ一つマスキングテープを貼って行うよりかは遥かに短時間で出来るので、これでも比較的現実的な手法だとは思っています。

ちなみに見た目は同じような仕上がりでも、単に色を塗るだけ=下地処理(足付け処理)無しで行うと、

経年でこのように塗膜が剥がれてしまったりします。最近はメッキが施されたバイク用ブレンボキャリパーの凹み文字が、半年で剥がれたので何とかして欲しいといったお問合せがとても多いです。ただちゃんとやろうとすると塗る面積に対しての作業時間がとてつも無く大きくなるので、製品として販売する物は仕方ないんでしょうね。

この後は一晩自然乾燥させ、後日60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。

あとはスチール製のプラグカバーの塗装もあるので、まだもう少し掛かりそうです。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

セリカXX 1G-GEUヘッドカバー 下準備

先日シルバーで一旦クリアーまで塗っておいたトヨタセリカの1G-GEUエンジンヘッドカバーです。その後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させておきました。画像だと1セットですが、同じ物がもう1セットあります。

凹み文字周りはクリアーが表面張力で出っ張っているので、それを当て板と#1500の水研ぎで平らに均します。

その他周りも#1500を当てて肌を落とし、凹み文字部はナイロンブラシとウォッシュコンパウンド(液状研磨剤)で、全体はスコッチで足付け処理を行います。

足付け処理を行った事で艶が無くなっているのが判るかと思います。

この後はよく洗浄し、埃のつかない所に保管しておきます。

凹み文字の色を作成します。

色見本帳の中から選んだ色は、元の色に比べると赤味が強いのですが、濁り具合等は丁度良かったので敢えてこれを採用し、配合データの中にある原色を置き換える事で対応する事にしました。

結果としては、元々使われていた赤味のある青=MIX585(正面透かし共に一番赤味の強いブルー)を青味のあるグリーン=MIX589に置き換え、さらにブリリアントレッド=MIX576を無くすことで黄色味寄りの青にしました。

この方法だと配合データを残せるので、数年後に万が一「一個だけ塗り直したい!」と言う事があっても全く同じ色での再現が可能となります(逆を言うとこの配合データが無ければ「全く同じ色」の再現はまず不可能です。それはただの「似た色」にに過ぎません)。

使用した原色はこちらの4色で、配合データを記した色見本も作成しておくようにします。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

セリカXX 1G-GEUヘッドカバー 下塗り

先日下準備を行っておいたトヨタセリカの1G-GEUエンジンヘッドカバーです。

こちらのセットは比較的程度が良かった方で、下地にエポキシプライマーを塗った上に2Kエナメル(1コートソリッド)のグレーを塗った物です。

こちらは腐食が酷かった方で、同じく下地にエポキシプライマーを塗り、その上にウレタンサフェーサーを塗った仕様です。かなりガッツリ研いでいる方ですね。

スチール製のプラグカバープレートは【激安コース】の仕様で、作業内容的にはプライマーを塗ってベースコートの黒を塗るだけの予定でしたが、予想以上に錆の浸食が激しく、なので前記したヘッドカバーと同じ様に耐蝕性の高い浸透型エポキシプライマーを塗ってサフェをしっかり塗って膜厚を充填後、さらに今回一緒に下塗りも行っておく事にします。

それぞれ研ぎ作業を行った際に金属素地が露出している箇所があるので、

再び全体にプライマーを塗布します。

プライマーを塗るのは金属素地が露出した箇所のみで良いのですが、今回のようにその範囲が広い場合は全体に塗ってしまった方が早いです。ただしそれに比例して上塗りを行った後の仕上がりが落ちる=肌の荒れや艶引けが起こる為、毎回何でも塗っておけば良いという訳では無くケースバイケースとなります。今回は下塗りなので艶引けになっても全然構わないという訳ですね。

プラグカバープレートもしっかりプライマーを塗っておきます。

ヘッドカバーのホースパイプ部にベースコートの黒を塗り、乾いたらマスキングをしておきます。

ヘッドカバーの色は旧塗膜を剥離する前に見本の中から近い物を選んでおいたので、

その色見本をアクワイヤー=測色機を使って配合データを取得します。

キャブレーションを行い、色板にカメラのレンズ部を当ててボタンを押して測色する事を3回繰り返します。

測色機についてはこちらの記事で紹介していますので宜しければご参照くださいませ。

ちなみにこれがあれば何でも色が作れるという訳では無く、まず平滑で状態の良い塗膜と、それを撮影する為にある程度の面積が必要となります。自転車フレームとかはまず無理で、今回のヘッドカバーもそれに該当する箇所が無かったのでこのような方法としています。時間的には目見当で色を作成した方が早かったりしますが、後で全く同じ色を作る上では非常に有効なので私的にとても気に入っています。

測色後、機械をPCに繋いでネットから配合データをダウンロードします(もしくは単にPCの中にインストールしたデータの中から抽出しているだけかも知れません)。

良さそうな物をさらに修正し、得られた配合データを基に指定された原色を混ぜて色を作成します。

出来た色を塗布します(念のためですが塗装最中に色を測って作っている訳では無く、判り易いよう順番を変えて紹介しているだけです)。

4コート程塗って完全隠蔽させたら、

クリアーを塗って下塗り完了です。

この後は通常通り熱を掛けて完全硬化させたら再度全体を足付け処理し、その後凹み文字部に青と黒の塗装を行って、最後にもう一度全体にクリアーを塗ります。

次の研磨足付け処理では下地を露出させてはダメなので、クリアーはいつも通りしっかり塗っておきました。

凹み文字部は#400までの仕上げなのでこの後ペーパー目が出ますが、再び研磨するので問題ありません。

怖いのはこの後に行う塗装で今回塗った塗膜を侵してしまう「チヂレ」で、なので当面は恒温機(乾燥炉)に入れっぱなしにして他の御依頼品と共に2度焼き、3度焼きくらいに熱を入れておくようにします。

プラグカバープレートはプライマーの上にクリアーを塗って下塗りとしておきました。

本来であれば2Kエナメルの1コートソリッド黒を塗っておければと思ったのですが、わざわざここでそれを作るのはコストが掛かりますし、どの道黒は隠ぺい力が強いので(2コート塗れば十分染まるので)、ここではクリアーで良しとしています。

浸食されていた跡は判らなくなったので、これでようやく本塗りに行けます。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!