先日お預かりしておりましたヤマハKX5ショルダーキーボードです。
それぞれを#800~#1300相当の布状研磨副資材(アシレックスレモン~オレンジ)で研磨して足付け処理を行い、脱脂清掃をしておきます。
こういった数が多い物を一つずつ塗ると塗装費用が大きくなってしまいますが、専用の治具を作って一度に塗れるようにする事でコストを落としています。
本体に固定する箇所には塗料を着けないようマスキングをし、10個程度ずつを纏めて手で持って塗れるようセットしています。
・・・が!1コート目に黒を塗った時点で素地の表面が塗料に侵されて荒れているのが判ります。
今回のプラスチック素材はシリコンオフで溶けなかったのでPS=ポリスチレンでは無く恐らくはABS樹脂で、これであれば塗装に問題は無いのですが、こうしたトラブルが起こる事は時々あります。
ABSは「アクリロニトリル」「ブタジエン」「スチレン」から構成される樹脂で、これらのバランスによって耐溶剤性なども変わってくると思われ、塗装を前提としている自動車部品であれば余り見られないのですが、パソコンパーツなどの家電製品ではよく見受けられたりします。
と言う訳で、この後はベースコートでは無く、1コートソリッドの黒=STANDOX2Kエナメルを使う事にしました。
1コートソリッドはトップコートの一種で、イメージとしてはクリアーに直接顔料(色)が入った塗料です。ベースコートに比べると溶解力が弱く素材を侵し難いので、これをベースコートの代わりとして使う事にしました。仕上りについては通常の方法と遜色無く、デメリットとしては作業時間が増えるのと材料費が余計に掛かるというのみですのでご安心くださいませ(2Kエナメルはクリアーより高額です)。
あとはいつも通りにクリアーを塗って本塗り完了です。お待たせしました!
クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーの仕様となります。
ちなみにこの方法はソリッドカラーでのみ対応可能で、パールやメタリックでは使えません。2Kエナメルはソリッドカラー専用の塗料だからです。
ちなみにこういった場合の他の対処方法としては、ウェットオンウェットでのノンサンディングフィラーや、2Kエナメルの代わりにクリアーを使っての2度塗りなど、対処方法は色々あります。そもそも塗装は日々何かしらのトラブルが出るのが当たり前なので、限られた時間の中で如何にそれらを排除し、ある一定以上の品質を提供出来るかが重要だと思っています。
この後は一晩自然乾燥させ、後日60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。
今回は組付け作業もあるので完成までは少しお時間掛かるかと思いますが、出来上がり次第改めて紹介させて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!