TE27サイドガーニッシュカバー 下準備

先日調色作業を終えているトヨタTE27フロントサイドガーニッシュのカバーパネルです。別色のフロントグリルロアモールとサイドガーニッシュは数日前に本塗りを終えていますので、続けてこちらの塗装の準備を行います。

塗り分けも元の通りで承っていますので、マスキング用のシートを作製します。

大量生産であればマスク型を作って簡単に塗り分け塗装が出来ますが、一個(実際には12か所)の為に数十万~数百万円のコストを掛けるのは現実的では無いので、この辺は手作業で行うしかないですね。

それぞれ6か所の輪郭を写し、

サイズを測って、

ベクターデータ化します。

実はここまでの作業はそんなに大変では無く、これから各部を修正するのに膨大な手間と時間が掛かります。型合わせは実際にカットしてそれを貼り、細部を修正→再びカットして貼るを一か所で2時間~3時間、しかも途中で発覚したのですが左右で微妙に形が違う!現代のようにデータから金型を作って製造している訳では無いようで、となるとこれ専用のマスキングシートを合計12か所、一か所3時間としてデータを作るだけで36時間掛かってしまうという計算です。

一般労働で考えるとこれだけで5日間、ブラック労働が可能な個人事業者でも丸々2日は掛かってしまうので、こうなると現実的ではありません。

と言う訳で今回はマスキングシートでは無く「マスキングテープ」をカットして使う事にしました。

マスキングシートはPP=ポリプロピレン製で見切りがシャープに仕上がるのが特徴ですが、厚みがあるので重ね張りに適していません。テープとテープを重ねた際に微妙に隙間が出来たり浮いたりするので「一枚物」で作るのが理想となります。

分かり易いよう、以前施工した時の内容を紹介しますね。

この時のインプレッサボンネットダクトカバーは、メッシュ部分を塗装しない(樹脂素地のまま)にする必要があった為、

この谷のラインに合わせたマスキングシートを作製しました。これも中々の地獄だったのですが、現代のパーツは左右で形が対象になっている場合が殆どなので(金型をデータから作成している為)、マスキング用のデータも片側のみ作ってそれを判定すれば済むので2箇所のみでOKなのが特徴です。

ただこのマスキングシートはコシが強く厚みもあるので上記のように一枚物で作る必要があり、重ね張りには適していません。

と言う訳で、今回は基となるデータは一つだけで、それをマスキングシートでは無く「マスキングテープ」をカットして、被塗物の形状に合わせて貼っていく方式にしようと思います。予めカーブの形にあった幅1ミリのマスキングテープを貼っていくような感じですね。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

フォレスター上下グリルベース 本塗り

先日下準備を行っておいたフォレスターSJフロントグリルです。メッキモールは先に本塗りを終えています。

全体的に#800相当の布状研磨副資材(アシレックスレモン)で処理していて、さらに細部をナイロンブラシとウォッシュコンパウンド(液状研磨剤)で足付け作業を行ないます。

素材はABSなので塗料との相性は良く、

むしろ足付け処理すら不要でそのまま塗られている場合も多いようですが、

この先数十年変わらない(剥がれない)塗膜になって欲しいので当店ではABS樹脂でも足付け処理を行っています。ちなみに知り合いの水圧転写屋さんは完全に足付け処理無しでそのまま塗っちゃうとの事でした。ちなみに新車時の内装パーツなどの塗装済みパーツも大ABS樹脂で、理由は先述した通りですね(足付け処理無しでそのまま塗っています)。

また念のためプラスチックプライマーも塗布しておきます。これもABS樹脂だと不要論がありますが、塗って悪い事は無いので(コスト高以外は)こちらも通常の樹脂素材と同じようにしています。

フロントグリルのフィンは表側からだけだと奥まで塗れないので、逆側(裏側)からも塗れるようスペースを広くした固定方法にしています。

まずはベースコート=黒を塗布します。

黒はスタンドックス原色MIX571そのままとなります(シンナーで希釈はしています)。

艶消し・半艶仕上げは塗装後の磨き処理が出来ないので、極力ゴミが付かないよう事前に高圧洗浄機を使ってブース内の壁や床などを清掃しています。

そして最後にクリアーを塗って本塗り完了です。お待たせしました!

クリアーはスバルエンブレムとフォグカバーを塗った時と同様、艶消しクリアーと半艶クリアー=STANDOX K9140とK9150を1:1で混合、ハードナー 27%、シンナー18%の割合としました。規定ではシンナーは9%となっていますが、肌目を出さないよう希釈率を倍にしています。

塗った時は通常のクリアーと同様艶がありますが、

時間の経過と共にクリアー中に含まれた顔料(恐らくはシリカゲル)が表面に現れ、

数時間すると艶が消えています。

半艶そのままだと艶があり過ぎて、逆に艶消しそのままだと艶が足りないので、それぞれを半分ずつ混ぜて使っています。これは独自の方法と言う訳ではなくSTANDOXのマニュアルにもある方法で、今回の場合だと「グロスレベル60°測定角でML3 16-25 GU」といった感じですね。

以前車体を塗っていた頃は一つ一つの作業で塗装カルテ的な物を作っていたのですが、台辺り単価が10分の1以下程度になった小物塗装でそれをやると採算が合わないどころか会社が傾いてしまうので、それの代わりとしてこちらのブログを利用しています。先に塗ったパーツと後からご依頼頂いた物で色や艶具合が変わると格好悪いですから、その辺をメモ代わりに使う感じですね。

以前塗装したスバルエンブレムは現在もお預かり保管中ですので、完成時にこちらに取り付けます。

エンブレム下の凸部天面は凸凹した梨地を研磨して平滑にしておいたのでツルっと仕上がっています。

それでは完成次第改めて紹介をさせて頂きます。取り外した部品(クッションシール等)が多いので少し時間が掛かるかと思いますが今しばらくお待ちくださいませ!

カメラパーツ塗装承ってます

先日到着しておりましたカメラの外装パーツです。この度のご依頼、誠に有難う御座います!

状態としては艶消し~半艶程度の黒が塗装されていて、一部塗装が剥がれて素地のアルミが露出した状態となっています。

既存の塗膜はアルミに密着していないように見受けられますので、一旦全部塗装を剥がし、リン酸処理→プライマー塗装(これを行わないとまた剥がれます)、そして調色と艶具合の調整(色板の作成)も行うよう承っています。

以前の施工事例を紹介しますね。

例えばこちらは以前当店で塗装したBMWのパニアケースで、「当店規定の艶消し黒」となります。黒は原色そのまま(STANDOX MIX571)、艶具合も当店規定の「艶消し」となります。事前の確認などはしていません。今回のカメラのパーツに比べると艶が消え過ぎているのが判るかと思います。

こちらはフォレスターのフロントバンパーフォググリルで、メッキモール部を「当店規定の半艶黒」で塗っています。カメラのパーツの塗装に比べると艶があり過ぎるのが判るかと思います。

こちらのスバルインプレッサのステアリングスイッチパネルを塗った時は、左の塗装を参考にして調色を行い、さらに艶具合も併せるよう調整作業を行ないました。左が見本、右が当店で塗装した物となります。

艶消し~半艶クリアーも艶ありと同様2液ウレタン系の塗料なので、塗り終わってから熱を入れて完全硬化させないと艶具合がどうなるのか判りません。ですのでこの時は調色し終わった色を色板(色見本)に塗装し、それぞれ違った配合のクリアー(艶消しクリアー+半艶クリアー)を塗って完全硬化→見本と艶具合が最も合っている物を選んでそれを再現するといった方法となっています。また塗る環境(塗装時の雰囲気温度によるハードナーの選択や塗り方の違い)によって艶具合も変わるので、それらも踏まえて作業を行なう必要があります。

今回は見本となる物が被塗物となるので、旧塗膜を剥離する前にこれらの作業を行なって色見本を作製、その後それに合わせて本塗りを行うといった方法になります。パーツ自体は小さく個数も一個だけですが、作業時間は本塗りの数倍の時間と手間を要する為、費用もそれだけ大きくなります(塗装するだけの3倍~5倍といった感じになります)。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。改めましてこの度のご依頼、誠に有難う御座います!

ドゥカティバックミラー 調色

先日調色の見本としてお預かりしておりました塗装済みのドゥカティ用バックミラーです。今回はこちらを参考に色を作製します。

いきなり原色を混ぜて作っても良いのですが、今回の赤は在庫している塗料(フェラーリロッソコルサ300)に近い感じだったので、まずはそれをテストピースに塗装して確認します。

比色してみた感じとしては、ロッソコルサの方が彩度と明度が低く青味が強いので、その配合データから白(MIX570)と濁りの強い青(MIX566)を減らして新たに色を作製します。

そこから鮮やかな赤(MIX561)、青2色、白をそれぞれ足しながら微調整を行います。

ちなみに比色する際はベースコートをしっかり乾かした状態にしてから行うのが必須で(塗った直後と乾いてからでは色が変わります)、ただしそうなると艶が消えて色味が判らなくなってしまいますから、その都度シリコンオフ(脱脂用の低溶解な溶剤)を塗って艶を出すようにします。クリアーを塗った方がより色味が分かり易いのですが、そうすると色板への塗り重ねが出来なくなるので(色板が数十枚必要になってしまうので)、代わりにベースコートを侵さないシリコンオフを使うのが一般的です。他に塗料用シンナー=所謂「トシン」(フタル酸用シンナー)などを使う場合もあります(後者の方が揮発が遅いので有効ですが、今は使っていません)。

調色時に使う艶出し用のスプレーは缶スプレータイプが業界でメジャーですが、小物専門になってからは使用する機会が少なく、いざ使おうと思ったその時にはガスが抜けて使い物にならなくなっていたりするので、現在は直接スプレーガンにシリコンオフを入れて使っています。

使った原色はロッソコルサに使用している物そのままのこの4色となります。

予定では2時間を想定していましたが、元にした色(ロッソコルサ)が比較的近く時間を短縮出来たので、最終的にお見積もりからその分を下げてご案内するようにします。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

塗料の作成について

当店で色=塗料を作製するにあたっては、以下にように幾つかの方法に分かれています。


■調色
■色見本帳から似た色を選ぶ
■似たような色を作る
■配合データを作る(残す)


いずれも同じような事なのですが、一部有料での作業であったり意味が違っていたりするので、それぞれについて細かく紹介しようと思います。

最も一般的に呼ばれる「調色」は、基となる被塗物を参考に色を作製し、本塗り時と同じような条件として色板にスプレーガンを塗って微調整を行うような事を指しています。物理的に完全に同じ色の再現は出来ませんが、2時間くらい掛けて比較的近い色を作製します。それなりに時間が必要なので塗装費用とは別の有料オプションとしています。

【参考記事】

cannondaleカーボンフォーク 調色

RB26→RB28タイミングベルトカバー 調色

Dino 調色作業

RB26→RB28タイミングベルトカバー 調色作業


他には「色見本帳から似たような色を選ぶ」という方法がありますが、これは色見本と実際に作った色とでの差異が生じる為、出来上がった塗料は結構色味が違っていたりします。なので「ある程度の目安」くらいに考えて頂ければと思います。

メリットとしては予め用意された配合データを基に色を作る為(=計量調色)、「10年後でも全く同じ色を作る事が可能」という利点があります。

最も簡単なのが「似たような色を作る」(=簡易的な色の作成)で、この場合スプレーガンで色板を塗ったりする事はせず、攪拌棒についた塗料と比較・確認するだけとなります。作業時間も5分程度としているので費用も掛かりません(勿論本塗りするまでスプレーガンで試し塗りをしての確認などもしません)。建築塗装などでよく見かける手法ですね。この場合とスプレーガンで塗った物とでは色の差異が出るので、こちらも大体な感じと考えて頂ければと思います。

【参考記事】

SENNHEISER E945 Microphone Pink

LOOK695

ブレンボブレーキキャリパー 下準備

最も手間が掛かるのが「配合データを残す」事で、これは色を調整する毎にその量を計上していく必要がありますから、先の「調色」とこれを組み合わせると丸一日掛けて一色出来るかどうかといった作業となります。

ただ上記の画像で行った内容は「調色」では無く、「簡易的に似たような色を作る」と「配合データを残す」の組み合わせなので、そこまで大変ではありません。ただ塗料を作っている途中の物と、その後出来上がった配合データで作った塗料では差異が生じますから(作業しているうちに溶剤分が揮発して重さが変わるので)、途中何度も一から色を作り直すなどしてそれなりに手間は掛かっています。

しかしならがら一度配合データを作っておけば、先に説明したように10年後でも物理的には全く同じ色を作る事が出来ますから、量産品などを塗装する場合には適しています。

ちなみに上記は「物理的には」なので、原色自体のロットぶれや攪拌不良、塗り方(主にメタリック)、先に塗った物の劣化(褪色など)によって色が変わってしまう場合はあります。自動車ボディが同じカラーコードなのに車体毎に色がブレるのはそういう理由からですね。

また塗料の作成でネックとなってくるのがPANTONEやCMKY、HTMLカラーコードでの色指定で、これらは「塗装」では無く「印刷」または「映像」ですから、これらを塗装で表現するのは実際には不可能です。

また当店が使う塗料=STANDOX社の物は元々「自動車補習用」の物なので、上記のようなパステルカラーは非常に不得意です。インド辺りに行けば派手な色の車も多いかも知れませんが、基本的に表面積が大きく実用的な物=車の場合は落ち着いた風合いの色が多く(地味な色)、パステルカラーのような配合データは殆ど無いのが実情だったりします。

と言う事で、小物塗装屋になってから力を入れたのがこういった比較的派手な色の見本を作る事でして、これらは全て配合データを記録していますから、その後の業務では大きな助けとなりました。

例えばこの時はご指定されたピンクが印刷された物で、この場合下地の白(紙)の影響を受けていますから(色が透けていますから)、塗装で言うと「ソリッドキャンディーカラー」みたいな事となり、真面目に色を作ろうとすると非常に多くの時間が掛かります。ただ画像のように予め作ってある色見本から近い物を選ぶ事が出来ればほぼコストが掛からなく、似たような塗料の作成が可能となります(そして数年後にリピート頂いた時でも色の再現性を確保できます)。

自動車補修塗装のように一件辺りの工賃が数十万~数百万円となるような業務であれば(利益が確立された一産業であれば)調色作業も付帯費用としてその中に組み込めますが、保険を使った作業がまず無い小物塗装の場合では極力全体のコストを下げる工夫として各作業を細分化する必要がある訳ですね。

ちなみに現在ではそういった経験?を元にして、塗料の販売などにも対応しています。

一般の方にはここまでシビアな色管理は必要無いと思いますが、フィギュアの塗装などで長年に渡って販売する際に個体毎の色ブレを防ぎたい!という事であれば良いかも知れません。同じ製品なのに購入する毎に色が違っていたら嫌ですよね。まあそういった色ブレを「味」として良い方に(それも価値として)捉える事も出来るかも知れませんが。

私的には手作り品の塗装で偶然できた模様を「世界に一つだけ!」みたいにあたかも貴重な物として謳うより、記録したデータの積み重ねでようやくたどり着いた!みたいな事の方が好きですかね。