スバルエンブレム(アセント&アウトバック)塗装 完成

大変お待たせしました!先日本塗りを終えていた北米スバルアセントオニキスエディションと、同社アウトバックのスバルエンブレム塗装、本日完成となります。

最初の状態も紹介します。

最初はアセント用のフロントエンブレムをわざわざ海外から取り寄せて頂き、

その後ご友人(?)の方の物という事で、アウトバック用の新品エンブレムも送って頂きました。同じ物、同じ仕様であれば複数割引が適用出来るのでこれはお得な方法かと思います。

メッキの枠はに本塗りを終えていて、完成したプレートとそちらを、新たにカットした両面テープで固定します。

両面テープは手でカットした方が早いのですが、新品時と同様の美しいラインのようにするのは難しいので、台紙からデータを作成し、レーザー加工機でカットしています。以下のツイートで動画が見れますので宜しければご参照くださいませ。

スモーク濃度はこちらを参考に調整しています。

左手前、オレンジ色の台紙が見えているのがアウトバック用の新品エンブレムとなります。

こちらが中古品だったアセント用の物となります。届いてから判った事ですが、どちらも同じ型式の物となります(そして現在作業中のフォレスターの大きいエンブレムも!)。

クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーの仕様となります。

各画像はサイズの縮小以外は未加工となります。

メッキの枠はそのまま上塗り(今回の場合は艶ありの黒)を塗っても十分に密着しませんので、それ用の下地処理を行った上で塗装を施しています。

密着性は通常の塗膜と同様で、フェザーエッジも出せますので補修も可能です。

一般的に行われている密着剤を使って塗られたメッキパーツは「面」では抑えられていても「点」ではくっ付いていない為、飛び石等による傷が付き易く、また一部が剥がれるとそこを起点にペリペリと剥がれて来ます。ペーパーを掛けるとエッジがブツブツと切れるように剥がれるのでスムースはフェザーエッジは形成出来ず、その上から塗った塗料でチヂレ(または激しいエッジマッピング)が生じる為、全部剥離するか、部品自体を新しい物に交換して塗装する必要があります。私が一時期勤めていた町工場で、アメ車(ダッジチャージャー等)のメッキモールにスモーク塗装を行って「ブラックメッキ風」にする作業が多かったですが、やはり後で剥がれて来て、それの収拾には大変な目に遭いました(事前に剥がれる事は元請けさん、社長に進言し、さらには見積書にもその旨を記載おきましたが、結局泣くのは現場の方々でした)。

ですので当店でのメッキへの塗装は「スモーク」は受け付けておらず、今回のように下地を完全隠蔽する塗色のみとなっております。メッキ素地を活かした透過性塗装が格好良いのは私も知っているのですが、「だから言ったのに…」とは思いたく無いんですよね。

それでは後ほど完成のお知らせメールを差し上げます。この度も当店をご利用いただきまして誠に有り難うございました!

ホンダN-VAN メッキフォググリル 本塗り

先日サーフェサーを塗っておいたホンダN-VANのメッキフォググリルです。その後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させ、ガイドコートとしてベースコートの黒をパラパラと塗っておきました。

ラインが凸凹としていたり面積が大きい場合には#600から始めますが、今回のようにサフェの肌を落とす程度であれば#800から始め、その後~#1500でペーパー目を均し、フチは布状研磨副資材を使って足付け処理を行います。フチに耐水ペーパーを使わないのは腰が強くて簡単に角の下地が出てしまうからで、昔はこういった場面にはスコッチ(繊維状研磨副資材)を使っていましたが、現在はより使い易い布状の研磨副資材(アシレックスレモン)を使うようになっています。皮膚との一体感が良いので切削する際のコントロール性が良いんですよね。

よく脱脂清掃し、ワニクリップで芯棒に固定します。裏側からもスプレーし易いよう隙間を広く取るようにしています。

エアーブローを行い、最終脱脂、さらにエアブローを繰り返したら本塗り準備完了です。

尚、今回のパーツはこちらのプレートに空いた穴に装着される物で、元々塗ってあった艶消し黒の色板と比べてみると、プレートの方に黒味が足りない=グレー色なのが判ります。車の塗装屋さんならよく判ると思いますが、PP=ポリプロピレンの着色樹脂の黒は大抵がこうですね。

なので黒では無く、当店規定の色見本から良さそうな物を選び、

それを参考にして色を作り、洗剤を混ぜた水を塗って艶を出して色味を確認してみます。

上の色板が黒の原色まま(MIX571)に艶消しクリアーを塗った物で、下のオレンジ色が着いた色板が今回作った色となります。

と言う訳でベースコートの黒(グレー)を塗り、

艶消しクリアーを塗って本塗り完了です。

つや消しクリアーも艶ありと同様ウェットに2コート塗っていて、例えばこれをドライコートで塗った方がゴミが着くリスクは減らせるのですが、肌を荒らすと傷の付き易い塗膜になってしまい、プラモデル等の耐久性を考えなくて良い塗装であればそこは気にしなくて良いかも知れませんが、実用品としてはNGです。また同じ様にゴミが着かないよう早く表面を乾かそうとして赤外線ヒーターを当てながら塗ったりすると艶具合にムラが生じるのでこれもNGです(昔の私がそうやっていました…)。メタリックの粒子を綺麗に並ばせるのと同様で、艶消しの場合はそれをシリカゲルに置き換え、ウェットな状態を長く保てるようにするのが重要なのでは、と思う次第です。

その後徐々に艶が消えていきます。

艶消しクリアーは1コート目の塗り方でも仕上がりが大きく変わるので、毎回同じ様に塗るように気を付けて行っています。

あとは本塗りを行う前に十分過ぎる程塗料を攪拌するようにしていて、艶消しにする為の顔料成分(シリカゲル)が、媒体となる樹脂(クリアー)にしっかり分散させる事で安定した艶具合に仕上げられると思っています。車体を塗っていた時には余り気にしなかったのですが、小物を専門にするようになって艶消しクリアーを使う機会が増えてからこれらの事に気が付きました。

この後は一晩自然乾燥させ、後日60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。

こちらのオーナー様からは他にテールランプとルーフアンテナの塗装も承っておりますので、そちらも進行次第改めて紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

ダッジラムコーナーレンズ シーリング

先日本塗りを終えていたダッジラムの社外品コーナーレンズです。

元々シーリングは為されていなかったのですが、レンズと枠にかなりの隙間が空いていること、また以前行った同型の製品ではシーラーが塗られていたという事もあり、今回こちらのご依頼も承りました。

枠とレンズのフチをマスキングし、

シーラーを塗り込みます。

塗る時は最初にある程度盛り付け、それを指やヘラ、綿棒等で隙間の奥に押し込むようにして何度か往復し、余分は外(マスキングテープ上)に除けるような感じにします。

その後直ぐにマスキングテープを剥がします。シリコーンは塗装の大敵なので、その辺に付着しないよう気を付けて作業を行っています。

時々外側にタップリ食み出たシーリングを見かけますが、シーラーは接着剤程に密着しない為、フチが経年でベロベロとし、そこをきっかけにして剥がれてしまいます。なので量を塗るよりも隙間の奥までしっかり充填させる事が重要ですかね。

その後は自然乾燥でもOKなのですが、丁度ZX6Rのウィンカーの外枠を塗っていたので、そちらと一緒に恒温機に入れて熱を掛けさせていただく事にしました。

それでは完成次第改めて紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

ホンダフリードリヤメッキガーニッシュ塗装承ってます

先日到着しておりましたホンダ フリードGB5のリアガーニッシュです。この度のご依頼、誠に有難う御座います!

素材はABS樹脂の上に装飾クロムメッキが施された物で、これにそのまま(密着剤などを使って)上塗りを行っても塗膜は密着しませんから(いずれ経年でペリペリと剥がれます)、通常の塗装と同様の密着が得られる下地を作ってからの上塗りとします。

色はホンダ純正色の「クリスタルブラックパール」(カラーコード:NH731P )で、クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーの仕様への変更で承っております。

裏側にはビビリ音防止の為のゴムとクッションテープが貼ってあるので、

それらを剥がします。

大変なのは残った両面テープの処理で、そのままだと厚すぎるので溶剤等を使っても剥がれてくれませんから、ある程度の所までは爪やヘラを使ってネチネチと剥がします。

こういった両面テープを剥がす工具(両面テープトレーサー)もあるのですが、小物パーツでそういった物を使うと簡単に破損してしまったりするので、基本的には全て手作業です。先日は両方の親指が深爪になって大変でした・・・。

尚、こちらのパーツは以前施工事例がありますので、そちらも紹介させて頂きます。

この時はの色はホンダ純正の「MODERN STEEL」となります。

ちなみに装飾クロムメッキへの塗装について、かなり昔に紹介していた記事を見つけましたので、そちらも紹介させて頂きます。先日社外記で紹介したキャメルトロフィー仕様のMINIの時に紹介していたようです。

ローバーミニのバンパーはスチールに装飾クロムメッキが施された物で、素材(母材)は違いますが被塗面としては今回のフリードのリヤガーニッシュと同じ物となります。

以下より記事中の文面となります。


メッキが施された物には通常塗装は難しい事です。簡単に剥がれたりします。メッキにも色々と種類はありますが、ミニのバンパーへの塗装は既に塗装工程が確立されています。密着性の基準としては、JIS碁盤目テストをクリアーしています。

【JIS碁盤目テストとは】
カッターナイフで一定間隔で碁盤目を入れた試験片上の塗膜に「JIS Z1522」に規定する幅18mmまたは24mm、粘着力2.94N/10mm{300gf/10mm}以上のセロハン粘着テ-プをはり(私の場合はガムーテープです)、はがした後の塗膜の付着状態を観察するテストです。
塗膜のはがれ具合によって、塗料の付着度合いを0~10点で点数評価します。10点とは、切り傷1本ごとが、細かくて両側が滑らかで、切り傷の交点と正方形の1目1目にはがれが無い状態をいいます。(画像内参照)

ポリエチレン素材への塗装と同様、メッキへの塗装方法はまだ公には出来ないのですが(経営上の理由で)、いつか皆様に公表したいと思っております。 理論的に考えれば解明出来る事なのですが、やはり通常使わない材料も使用しますので、これが見つけられれば難しい事では無いと思います(しかしポリエチレンへの塗装は相当難しく面倒です。また、どちらも非常に高コストな作業でもあります・・・)

ちなみに、メッキ・ポリエチレン共に、「密着剤」を使用している訳ではありません。密着剤を使用してもある程度は食い付く(密着する)のですが、経年数により剥がれたり、今回のバンパーの場合は飛び石により簡単に無数の飛び石傷が出来てしまったりします。


といった感じになります。知り合いの塗装屋さんには普通に内容を教えているのですが、不特定多数で見れてしまうウェブでの紹介は一応控えています。何卒御理解頂ければと思います。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。改めましてこの度のご依頼、誠に有難う御座います。

スーパーセブン カーボンフェンダー 旧塗膜剥離

先日お預かりしておりましたロータススーパーセブンのプリプレグカーボン(ドライカーボン)のリヤフェンダーです。

当店で塗装する前に塗られていたクリアー層は、カーボン素地に密着しておらず、ストレスが大きく掛かる所から剥がれて来てしまっています。

ただそれのお陰で塗装の剥離は思っていたよりも簡単で、ヘラとエアーブローでバリバリと剥がれていってくれます。

カーボン素地の凸凹を埋める為に恐らく5回分くらいのクリアーが塗られていて、その上に当店で施工した透明なグリーンメタリックが重ねられています。

出てきた素地は全体に艶が出たような状態で、所々ペーパーが当たった後はあるのですが、もしかしたらちゃんと足付け処理がされていないのかも知れません。

表面は少しヌルヌルするようなベタベタするような感じがします。密着剤は最初の数年は問題無いのですが、経年でそれが劣化すると密着力が低下し、何かのきっかけでペリペリと剥がれて来たりします。ただここまで簡単に(そして綺麗に)剥がれるとなると、使われている材料自体に問題があるのかも知れません(恐らくはポリエステル系かと思います)。

と言う訳で、全体に#180~#240のダブルアクションサンダーを当て、角やフチは#240の手研ぎで研磨~足付け処理を行います。

その後裏側を清掃します。

続けて表側もスコッチとピンク石鹸で繊維の隙間の不純物(主に離型剤)を掻き出すように擦り、水を流して弾かない状態になるまでこれを何度も繰り返します。新品だと10回以上行う場合もありますが、今回は3回で大丈夫でした(恐らく剥がれた塗装面の方にくっ付いてくれたのではと)。

最後に新しいスコッチ#320とウォッシュコンパウンドで満遍なく研磨・足付け処理を行います。最初からウォッシュコンパウンドを使わないのはコスト的に勿体ないからですね(これ一つに1Lくらい使ってしまうと思いますので…)。

水で弾く箇所が一つもない事を確認したらよく乾かしておきます。

裏側をマスキングします。

これでクリアー下塗りの準備が完了です。先ほどの塗装を剥がした時の状態に比べると艶が無く、全体がしっかり足付け処理されているのが判ると思います。

私が最初に勤めたディーラーの内製工場では、塗装と板金がそれぞれ判れていて、板金屋さんがパテを塗る際、脱脂作業と言うのをしている事は殆ど見ませんでした。手で擦ってエアーブローをするだけです(そういう時代という事もありました)。

それでもパテは十分密着する訳ですが、10年後、20年後にどうかと言うと、何かのきっかけで剥がれたりする事はあると思います。これは塗装も然りで、単に飾っておくだけなら良いのかも知れませんが、実用するとなるとその辺で差が出て来るのだと思います。まあエアーブローなら1分で済むところを、わざわざ1時間以上かけてやってくれるかどうかは難しいのかも知れませんが・・・。

この後は他のご依頼品でクリアーを塗る際にこちらも一緒に塗るようにして、表面が平滑になるまでそれを繰り返すようにする予定です。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!