MAZDA6 Front Grill

atenza4 マツダアテンザの純正フロントグリルです。状態は未塗装で、表面はザラザラとした細かい梨地になっています。

atenza いつもは単色ベタ塗りでの施工なのですが、この時はグリルフィンの部分を塗り分けでご指定頂きました。

atenza1 塗り分け位置とそれぞれの色については事前にイメージイラストを作製しました。

atenza5 またフィン部分の色については予め色見本帳をお貸出ししてその中から選んで頂いています。

atenza7 下地処理にはスコッチブライトや布状の研磨副資材の他に、ナイロンブラシやウォッシュコンパウンドを併用して塗料の密着し易い下地を作ります。

atenza8プラスチックはPP(ポリプロピレン)樹脂で、比較的塗装の密着し難い素材となるので、細部まで念入りにしっかり足付け処理を行います。

atenza9 手が入らない箇所はヘラも使います。

atenza11 ヘラも入らない細かい箇所の隅はナイロンブラシとウォッシュコンパウンドで足付け処理を行います。

atenza12 さらにプライマー塗装の前には専用のガスを使って火炎処理を施し、親和力の大きい有機化合物を樹脂の表面にナノレベルで形成して塗料の密着性を向上させます。

atenza15 通常はここでサフェーサーを塗布しますが、この大きくて複雑な形状の部品を全て手作業で砥ぎ付けるは非常に長い手間が掛かり、コスト的に現実的では無くなってしまうので、ここではサフェーサーでは無く2Kエナメル、所謂「1コートソリッド」を塗っています。

atenza16 1コートソリッドとはクリアーに色が付いたような物で、サフェーサーのように膜厚を充填する事は出来ませんが、それ自体では肌を荒らし難い為、サフェーサーの代わりにこれで細かい凸凹(梨地)を埋めようと言う作戦です。

当然硬化させるには熱を掛ける必要があり、また砥ぎ作業(足付け処理)も必要ですが、それでもサフェーサーを砥ぐよりかは断然時間を短縮出来るので大幅なコストを削減する事が可能となります。

ただし切削性は悪いので、梨地が粗い場合には逆効果となってしまい使えません。かなり細かい梨地の物に限られます。

atenza17 熱を掛けて完全硬化後、再び全体に足付け処理を行います。

atenza18 ここで足付け処理が甘いと結局塗装の密着性が劣ってしまう為、念入りな作業が必要です。

atenza19 良く脱脂清掃をしたらいよいよ本塗り開始です。

atenza22 使う色は二種類ですが、塗り方を工夫する為にスプレーガンは3丁用意します。また塗り分け位置を間違えないよう、最初に作製したイメージイラストをプリントアウトしてそれを見ながら作業します。

atenza23 最初にフィンを支える柱の部分をジェットブラック(カラーコード:41W)で塗ります。

atenza24 十分に自然乾燥させてテープフリーな状態になったらその部分だけをマスキングします。

atenza25 続けて明るいグレー色のポリッシュドメタルM(カラーコード:NH-737M)をフィン部分に塗ります。周りに色が飛んでも構いませんが、ドライコートで塗ると周りに飛んだミストが粉っぽくなり、この後に塗る塗膜の密着力が低下する為にその点は注意する必要があります。

atenza26上段のフィンは取り外せるので単体で塗っています。

atenza27その後ポリッシュドメタルMがテープフリーな状態になったらフィンの部分をマスキングします。

atenza30最初に塗った柱の部分とフィンの部分のマスキングが完了しました。

atenza35そして最初に柱に塗った色と同じジェットブラックをグリル全体に塗布します。

atenza37全てのマスキングを剥がしました。

atenza38最後にクリアーを塗って本塗り完了です。

atenza40形が複雑なフロントグリルは裏側から塗る事で全体を満遍なく艶々に塗る事が出来ます。

atenza41atenza39atenza46その後60℃40分程の熱を掛け、数日寝かしたら完成となります。

atenza52atenza47atenza48

atenza49atenza50梨地の上にそのまま色を塗ってもこういった艶のある仕上がりにはなりません。

atenza53かといってここまで複雑な形状の物にサフェーサーを塗って研磨するのはかなりのコスト高となってしまうので、今回は上塗り塗料の二度塗り(2Kエナメル+2コート塗装)で対応しています。

サフェーサーで作った下地に比べればシャープ感は損なわれますが、平面の少ない曲線的な形状であればそれも殆ど気にならないと思います。

atenza54塗り難いのもそうですが、こういった形状だと磨き処理も難しいので、如何に塗り肌で綺麗に仕上げるかが肝となります。こちらのフロントグリルも磨き処理は殆ど行っておらず、塗りっ放しそのままの仕上がりとなっています。

ロードスター・COSWORTH・ベンツヘッドカバー結晶塗装承ってます

road245 先日到着しておりましたメルセデスベンツ190エンジンヘッドカバー、コスワース(ロータスでしょうか)のヘッドカバー、そしてロードスターのヘッドカバーです。3点共に同じオーナー様となります。この度のご依頼、誠に有難う御座います!

road246結晶塗装は3点とも全て鮮やかな赤(イタリアンレッド)でご指定頂いておりまして、こちらのロードスターは状態が良いので下地作業はリン酸処理とプライマー塗装、凸文字は塗装後に面研して光らせます。

cosworth コスワースのヘッドカバーも状態が良く、現状はつや消し(または半艶)の黒が塗られていますが、一旦剥離してからロードスターと同じように作業を行います。

以前同じ部品を施工していますのでそちらも紹介しますね。

cosworth1調べてみたら7年前に塗装した物で、こちらは元々ゴールドだった模様です。オイルキャップ部分が溶接して埋められているので、ドライサンプ化しているのでは?といったコメントがありました。

benz282 そしてこちらはメルセデス190のヘッドカバーです。

benz283 こちらもW124のヘッドカバーと同様、素材がマグネシウム(寄り)なので経年で腐食が激しく発生するのが特徴です。塗料が垂れているように見えますがそうでは無く、浮いて中が空洞になっています。

こちらは剥離して塗る直すだけでは早い段階で腐食が再発しますので(半年くらいで出るかもといったレベルです)、いつもお世話になっているブラスト専門ショップさんに強力な直圧ブラストをお願いして腐食を根こそぎ削り落として貰い、その後浸透型エポキシプライマーを使っての重防錆仕様とします。

benz284尚オーナー様が裏側の処理を気にされていましたが、こちらのヘッドカバーについては表面と同様に裏側もブラスト処理を行います(ブラスト屋さんに行って頂きます)。既に何かしら作業した跡があるのでオーナー様はお察しだと思いますが、このヘッドカバーは裏側も塗装がしてあって、それもペリペリと剥がれて来るのでとても厄介なんですよね。

尚、裏側にはプライマーは塗りませんが(装着していればオイル漬けになるので大丈夫だと思います)、ご希望される方には裏側へのエポキシプライマー塗装も対応しています。装着しないで飾るもしくは長期保存したい場合は新品時と同様にプライマーの塗装をお勧め致します。

それでは作業進行しましたらまた紹介させて頂きますね。改めましてこの度のご依頼、誠に有難う御座います!

S-WORKS カーボンフレーム&フォーク 本塗り準備

sworks68先日サフェ研ぎまで完了していたS-WORKSのカーボンフレームとフォークです。ベースカラーとなるキャンディーグリーンの色も決まりましたので、いよいよ本塗り(実際はまだ下塗り)の準備となります。

次の下塗りでは、まず下色としてシルバーを塗り、その上にキャンディーグリーンのベースコートを塗布、そして最後にクリアーを塗って一旦本塗りを完了とします。

その後熱を掛けて塗膜を完全硬化させ、再度全体に足付け処理をしたら今度は各部にロゴを白で塗装、再度クリアーを塗って本塗り完了となります。

作業進行しましたらまた紹介しますので、どうぞもう少々お待ちくださいませ!

ルーフアンテナ塗装承ってます

antena58 先日到着しておりました、ビートソニック (Beat-Sonic) FM/AMドルフィンアンテナです。この度のご依頼、誠に有難う御座います!

ご依頼内容はホンダ純正色の「アラバスターシルバーメタリック」(カラーコード:NH700M)で、クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーへの変更で承っております。また今回はサフェーサーでの下地処理も行う内容となっております。

antena59社外品アンテナの塗装については、当サイトでも何度か説明させて頂いているのですが、未塗装の物よりも塗装済み品をお勧めしております。既に塗装されている物であれば下地が出来ていますので、単に足付け処理をするだけで塗れるのです。

未塗装品でもそのまま塗る事は可能で、そういった事例も何度もありますが、実は今回のような淡い色のメタリック(シルバー)だと少々勝手が違うのです。

素材となる樹脂はABSで、これは塗装との相性(密着性)が良い反面、塗料中の溶剤によって表面が若干溶けてしまいます。これがソリッドカラーや濃色系メタリックであれば目立たない(判らない)のですが、シルバーメタリックの場合は素地の粗が非常に目立ってしまう為、溶剤によって素地を侵した跡(模様)や成型時の傷などがそのまま残って仕上がってしまうのです。

ちなみに「ABS」と言ってもその特性は様々で、自動車部品(純正品)であれば比較的耐溶剤性が高い傾向にあるのですが、同じABS樹脂でもパソコンなどの電化製品は塗料で溶けやすい物があったりします。

対応としては「ドライコート」などの塗り方で回避出来る事もあるのですが、その辺は実際にやってみないと判らない事もあって、「やっぱり駄目だったので塗り直し」と言う事よりかは事前に下地処理を行ってから塗る方が結果としてはコスト(塗装費用)は抑えられます。艶引けの心配も無いですしね(ドライコートは確実に艶が引けるので通常は避けなければなりません)。

ただサフェーサーで下地処理を行うには利点もあって、この類のアンテナは上の画像のように部分的に成型時の歪(スジ)が生じていますので、今回はこういった個所の修正が出来ます。普通の方は全く気にならないレベルですが、私的にいつもこれが気になっていたのでようやくスッキリ出来るのです(笑)。

それでは作業進行しましたらまた紹介させて頂きますね。改めましてこの度のご依頼、誠に有難う御座います!

CORSAIR PCケース 作業前準備

corsair12先日塗り分け位置確認用のイメージイラストを作成していたCORSAIRのPCケースです。

corsair20 ご依頼内容と費用については予めメールでやり取りをしていますが、実物を見てから不明な点なども出て来ますので、その辺の確認をしつつ作業方法を纏めています。

corsair16 ケース側面のサイドパネルは片側のみアクリル窓となっていて、ネジを外して取り外し、傷が付かないように保管しておきます。

corsair17 こちらがサイドパネルで、以前施工したCORSAIRのケースは内側を艶消し黒にしましたが、今回はこちら側も艶ありの黒でご依頼承っています。

corsair19尚、既存の塗装は表面がザラザラとしていて、このまま塗ると多少なり艶が引け気味になる可能性がある為、メインとなる表面は二度塗りで対応する事とします。

corsair18作業方法しては、裏表共に足付け処理をした後、吊るした状態で裏と表を同時に塗って一旦完全硬化させ、その後裏側をマスキングして再度表側を単独で本塗りを行います。

corsair21 こちらは先ほどのサイドパネルの下側に付くサイドロアグリルで、こちらも裏表共に艶ありの黒で塗装します。

corsair22 またこちらもサイドパネルと同じく、最初は吊るした状態で裏表共に艶あり黒の塗装を行い、完全硬化後に再び足付け処理をして表面のみ二度塗りの塗装をします。

二度塗りのメリットについては以前施工したマツダアテンザのフロントグリルが判り易いと思いますので、今度そちらの作業内容を纏めて施工例として紹介するようにしたいと思います。

あのグリルは部品全体が梨地仕上げ、ただサイズが大きくて形もイビツな為、サフェーサーを塗って研ごうとするのはかなり現実的ではありませんが(お金に糸目をつけないという事であれば勿論可能ですがひどい金額になると思います)、それでもと言う方も多いので二度塗りと言う方法で対応するように致しました。

corsair29 こちらはケースの上面に着く天面グリルで、プラスチック製の枠&フィルターにスチール製のネットが被さっていました。端の爪部分を丁寧に起こし、曲がらないように外しています。

corsair30 こちらは裏表別々に塗ろうと思っていましたが、水平にすれば裏表一緒に塗れるので、先ほどまでの部品と同じく

・吊るした状態で裏表共に艶あり黒塗装

・強制乾燥~完全硬化後、足付け処理をして水平にした状態で表側を二度塗り

と言う方法で行く予定です。

こういったパンチングパネルを塗る場合、地面に対して垂直に吊るして塗るとフチにクリアーが溜まり、デロデロとした仕上がりになりがちです。ただ実際にやってみないと判らない所もありますので、その辺は作業しながら良い方法で行いたいと思います。

corsair23 そしてこちらはケース裏面のパネルとなります。通常はシャーシと一体になっている筈ですが、今回のケースだとこれが単体となっています。

corsair24 こちらのパネルも裏表共に艶ありの黒で、ただしこちらは二度塗りはせず、一度の塗装で仕上げる予定です。

corsair25 当たりゴムなど細かい付属品も着いているので、元に戻せるようとにかく枚数だけは撮影しています。

corsair26 各部を分解し、塗装はそれぞれ単体で行います。

corsair27 そして問題のシャーシ(骨格)です。とにかく大きくて、動かすのも一苦労です。

corsair28 こちらも当たりゴムなどは元位置が判るように各部を色々な角度から撮影しておいています。

corsair31 ネジなどもそれぞれ判るように印を付けて保管しておきます。画像右側にある3部品はシャーシ本体の付属品となりますのでこちらも艶ありの黒に塗装します。尚、シャーシ関連も艶ありの黒で、吊るした状態で裏表共に一度塗りで行います。

corsair32 シャーシ内部に付属するマザーボード固定部のパネルは塗装しないので取り外しておきます。

corsair33ただこのパネルがネジ以外に特殊なリベットで止まっていて、これが少々厄介です。

このリベットがある面はケース上部に当たり、ここを天面グリルがスライドして装着されるのでツライチになっていなければなりません。

corsair34 通常のリベットはこういった物で、固定した際に表側となる部分は鍋型となって飛び出る形となります。

corsair35 なので既存のリベットをボール盤(ドリル)に固定し、接地する面をヤスリで皿状に削り、

corsair36 挿さっているシャフトを抜き、表面を平らに削ります。

が、どうも宜しく無いので辞めました。

corsair37 と言う訳で改めて皿状のリベットを購入してみました。

corsair38 こちらのリベットは真ん中にシャフトが通っていないので、固定は専用のリベッターでは無く、叩いて潰すか、万力(シャコマン)などで圧力を掛けて固定します。

corsair40 ただ一番小さいサイズを買ったのですが、どうも宜しくありません。

勿論加工すれば何とかなりますが、そもそも塗装した後にこれを力業でカシメるのを想像して、これも辞める事にしました。

corsair39と言う訳で考えたのが普通の皿ネジです。

オーナー様に確認したところ、裏側は5ミリ以内なら出ていても大丈夫との事ですので、ここは無理してリベットにはせず、皿ネジを5ミリ以下にカットしてナットで固定するのが望ましいと考えました。これなら万が一分解したい時にも簡単に出来ますので、むしろ作業性は良くなると思います。

尚、画像のネジはM2で(以前Roboの外装パーツを塗る時にネジ穴のマスキング&固定用として使った物です)、出来ればもう少し太いのが欲しいので、M2.6とM3のネジを入手しようと思います。余分はボルトカッターでカットしますので、裏側の突起はリベットよりも低く抑えられると思います。また使っていて緩みが生じる事を懸念されるかも知れませんので、一応スプリングワッシャーも間に入れておこうと思います(もしくはロックタイトなどのネジ止め剤でも良いですが、私的にそちらは余り好きでは無いので)。

一応全てのリベットはネジが見つかってから外す予定で、その間に時間があればフロントとリヤパネル枠に使うPANTONEのグリーンの色を検証しようと思います。どうぞもう少々お待ちくださいませ!