S-WORKS 本塗り(下塗り)

sworks69 大変長らくお待たせ致しました。SPECIALIZED S-WORKS VENGEのカーボンフレーム&フォーク、いよいよ本塗り(実際はまだ下塗り)となります。

sworks71 既存の塗膜はほぼ剥離し、サフェーサーで下地を整えました。

sworks70元々つや消しだったので判り難いのですが、各部凸凹だった個所は平滑に、自然な曲線に見えるようサフェーサーでラインを形成しています。

sworks72 追加でご依頼頂いたPIONEERの左右独立式ペダリングモニターセンサーのカバーは、元々入っていたロゴがクリアーの下だったのでその面は塗膜毎削り落としました。こういった既製品は通常はクリアーの上にロゴをプリントされているケースが多いのですが、非常に好感が持てます(塗装屋としては厄介なのですが・・・)。

sworks74また今回はフレームと同色でのミニカー型色見本もご用命頂いていますので、そちらも一緒に塗装します(他の大量にあるのは別件ですので気にされなくて大丈夫です)。

sworks73 こちらは当店用の色見本で、今回新たに自転車のフレーム形に模した物を作成しました。まだ片面だけなので残念ながらキーホルダーにはなりません。

sworks75 良く脱脂清掃をし、ブースのファンを回してエアーブローをしたら、まずアルミ素地が露出した箇所にプライマーを塗っておきます。

ここはサフェーサーを塗る前にもプライマーを塗っていますが、当然サフェ研ぎの段階でまたアルミ素地が露出してしまう個所があるのでベースコートを塗る前にもう一度プライマーを塗っておきます。意味が無いようでちゃんとありますのでご安心下さいませ。

sworks76 まずは下塗りに隠ぺい力の高いシルバーを塗ります。通常はSTANDOX原色のMIX594(DUPONTだとAM11が該当します)を使ったりもしますが、当店場合はここでVWのリフレックスシルバー(カラーコード:LA7W)を使うのが定番となっています。

理由としてはよく業者さんからご依頼頂く色がこの色なので大量に作り置きをしておき、余っても元に戻して再利用意が可能だからです。隠ぺい力も悪く無く、下塗りとしてはウェットコートで2回塗れば十分です。

sworks77しっとりとして比較的綺麗なシルバーですが、キャンディーカラーにするとちょっと派手さが足りないので、この上に粗目のメタリック(MIX598)を重ねていきます。

sworks78 スタンドックスを初めて使う塗装屋さんは驚くと思うのですが、他の塗料(私の場合は関ペとPPGとDUPONT)に比べてシルバーの隠ぺい力が最低です(笑)。

ただスタンドックスと言う塗料は基本的な塗り方さえ守れば非常に綺麗なシルバーメタリックの塗装が可能で、多くの塗装屋さんから好評を得ている塗料でもあります。

sworks79 そして下色となるシルバーメタリックの塗装が完了です。

ちなみにここでシルバーでは無くグリーンメタリックにしておくとこの後の塗装が楽なのですが(通常はそうします)、今回は以前施工したS-WORKSのフレームと同じようにといったご希望ですので、それに沿って施工しています。

sworks80 色味については本塗り前にもう一度確認しています。配合はキャンディーグリーンが2に対してキャンディーブルーを1の割合にしています。

sworks81 キャンディーカラー(透過性の塗装)を1コート塗った状態です。かなり青くて不安になりますが、事前に同じように色板で確認しているので問題ありません。

sworks82さらにキャンディーカラーを塗り重ねていきます。

ちなみに参考にしている色味は「ペーター・サガン(ティンコフ)のマイヨヴェールカラーのバイク」となりまして、これともう一枚の画像をオーナー様から参考として紹介して頂いています。

sworks83 そしてキャンディーカラーを塗り終わり、クリアーを塗って下塗り完了です。

sworks84 画像での見た目は青味寄りですが、実際はもっと黄緑ですのでご安心下さいませ。当初の確認している色見本とほぼ同じ色味となります。

sworks85 下色としてのシルバーを3コート、キャンディーカラーを4コートと、ベースコートは合計7コートとかなり厚膜となりますので(通常は5コート以内に収めます)、通常ベースコートには入れない硬化剤をしっかり入れて対応しています。

sworks86 ペダリングモニターセンサーのカバーも同色のお揃い仕様となります。こちらもpioneerのロゴは後日改めて塗装し直します。

sworks87 今回一緒にご用命頂いているミニカー型の色見本は、後日ヒートンとワイヤーを付けてキーホルダーとして使えるようにします。現在は「塗装依頼の序に」と言う事が限定で¥4,000(税別)で作成しています。

sworks88ブースの中だと余り色の深みを感じられないのですが、実際はキャンディーカラー特有の奥行きのある色味と発色が感じられますのでご安心下さいませ。かなり派手だと思います。

car209キャンディーカラーの塗装はテールランプの塗装と同様に一日掛かりの塗装となり、コート毎のフラッシュオフタイム(乾燥時間)も長くなりますから、それを利用して他のキャンディーカラーの色見本も作成していました。

画像の物は今回は使わなかったコバルトブルーで、この他にグリーン100%の物も作っていまして、これらは販売用に仕上げていこうと思っています。

この後熱を入れて塗膜を完全硬化させ、さらに数週間寝かした後に再度全体を足付け処理、次はロゴを塗装で入れてもう一度クリアーを塗って完成となります。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

MAZDA6 Front Grill

atenza4 マツダアテンザの純正フロントグリルです。状態は未塗装で、表面はザラザラとした細かい梨地になっています。

atenza いつもは単色ベタ塗りでの施工なのですが、この時はグリルフィンの部分を塗り分けでご指定頂きました。

atenza1 塗り分け位置とそれぞれの色については事前にイメージイラストを作製しました。

atenza5 またフィン部分の色については予め色見本帳をお貸出ししてその中から選んで頂いています。

atenza7 下地処理にはスコッチブライトや布状の研磨副資材の他に、ナイロンブラシやウォッシュコンパウンドを併用して塗料の密着し易い下地を作ります。

atenza8プラスチックはPP(ポリプロピレン)樹脂で、比較的塗装の密着し難い素材となるので、細部まで念入りにしっかり足付け処理を行います。

atenza9 手が入らない箇所はヘラも使います。

atenza11 ヘラも入らない細かい箇所の隅はナイロンブラシとウォッシュコンパウンドで足付け処理を行います。

atenza12 さらにプライマー塗装の前には専用のガスを使って火炎処理を施し、親和力の大きい有機化合物を樹脂の表面にナノレベルで形成して塗料の密着性を向上させます。

atenza15 通常はここでサフェーサーを塗布しますが、この大きくて複雑な形状の部品を全て手作業で砥ぎ付けるは非常に長い手間が掛かり、コスト的に現実的では無くなってしまうので、ここではサフェーサーでは無く2Kエナメル、所謂「1コートソリッド」を塗っています。

atenza16 1コートソリッドとはクリアーに色が付いたような物で、サフェーサーのように膜厚を充填する事は出来ませんが、それ自体では肌を荒らし難い為、サフェーサーの代わりにこれで細かい凸凹(梨地)を埋めようと言う作戦です。

当然硬化させるには熱を掛ける必要があり、また砥ぎ作業(足付け処理)も必要ですが、それでもサフェーサーを砥ぐよりかは断然時間を短縮出来るので大幅なコストを削減する事が可能となります。

ただし切削性は悪いので、梨地が粗い場合には逆効果となってしまい使えません。かなり細かい梨地の物に限られます。

atenza17 熱を掛けて完全硬化後、再び全体に足付け処理を行います。

atenza18 ここで足付け処理が甘いと結局塗装の密着性が劣ってしまう為、念入りな作業が必要です。

atenza19 良く脱脂清掃をしたらいよいよ本塗り開始です。

atenza22 使う色は二種類ですが、塗り方を工夫する為にスプレーガンは3丁用意します。また塗り分け位置を間違えないよう、最初に作製したイメージイラストをプリントアウトしてそれを見ながら作業します。

atenza23 最初にフィンを支える柱の部分をジェットブラック(カラーコード:41W)で塗ります。

atenza24 十分に自然乾燥させてテープフリーな状態になったらその部分だけをマスキングします。

atenza25 続けて明るいグレー色のポリッシュドメタルM(カラーコード:NH-737M)をフィン部分に塗ります。周りに色が飛んでも構いませんが、ドライコートで塗ると周りに飛んだミストが粉っぽくなり、この後に塗る塗膜の密着力が低下する為にその点は注意する必要があります。

atenza26上段のフィンは取り外せるので単体で塗っています。

atenza27その後ポリッシュドメタルMがテープフリーな状態になったらフィンの部分をマスキングします。

atenza30最初に塗った柱の部分とフィンの部分のマスキングが完了しました。

atenza35そして最初に柱に塗った色と同じジェットブラックをグリル全体に塗布します。

atenza37全てのマスキングを剥がしました。

atenza38最後にクリアーを塗って本塗り完了です。

atenza40形が複雑なフロントグリルは裏側から塗る事で全体を満遍なく艶々に塗る事が出来ます。

atenza41atenza39atenza46その後60℃40分程の熱を掛け、数日寝かしたら完成となります。

atenza52atenza47atenza48

atenza49atenza50梨地の上にそのまま色を塗ってもこういった艶のある仕上がりにはなりません。

atenza53かといってここまで複雑な形状の物にサフェーサーを塗って研磨するのはかなりのコスト高となってしまうので、今回は上塗り塗料の二度塗り(2Kエナメル+2コート塗装)で対応しています。

サフェーサーで作った下地に比べればシャープ感は損なわれますが、平面の少ない曲線的な形状であればそれも殆ど気にならないと思います。

atenza54塗り難いのもそうですが、こういった形状だと磨き処理も難しいので、如何に塗り肌で綺麗に仕上げるかが肝となります。こちらのフロントグリルも磨き処理は殆ど行っておらず、塗りっ放しそのままの仕上がりとなっています。