S20ヘッドカバー 本塗り

先日下塗り後の下準備を行っておいたKPGC10型スカイラインGT-R、所謂ハコスカのS20ヘッドカバーです。その後脱脂清掃→マスキング→最終脱脂処理をしておきました。

ブース内の清掃も済ませ、エアーブローで埃を飛ばしたら本塗り開始です。

まずは研ぎ作業の際に素地が露出した箇所にスポット的にプライマーを塗布します。

続けて今回ご指定の塗色=以前ご依頼頂いたこの時と同じフォードの「vermilion red」(カラーコード:E4 6470)を塗布します。

いつも塗っている赤に比べて艶が消えていますが、これは使われている原色が違うからで、具体的には一般的な鮮やかな赤=MIX561の代わりに隠蔽力の高いMIX861が使われています。顔料分がMIX561の2倍あるので隠蔽性は高い為樹脂分が少なくなり、結果艶が消えた状態になります。ただこれによってクリアー塗装後の艶引けにも多少影響があるでしょうから私的にはMIX561の方を使いたいのですが、他の配合データが無いのでこれを採用しています。なのでドライコートで少しでも肌を荒らさないようウェットコートで塗っています。

フィン部分のマスキングを剥がしました。

続けて凸部以外の箇所をマスキングします。アルミを削った粉が塗装面につくと、酸化して黒くなった跡が残ってしまう為ですね。

#120から始まり、180→240→320→400→500→800で研磨してアルミ地を光らせます。

エアーブローで研磨粉をよく飛ばします。

その後タッククロスとエアーブローを併用して被塗面を清掃します。

各部気になった箇所を修正します。

ちなみにベースコートで使ったガンの口径は1.0mmで、この場合結構周りに塗料が飛んでしまいますから、部分的な修正にはエアーブラシを使います。こちらは口径0.5mmで、少ないエアー圧で塗料を微粒子化出来るので使い易いです。

アルミ地に密着剤を塗り、最後にクリアーをコートして本塗り完了です。お待たせしました!

クリアーは高品位なタイプのクリスタルクリアーとなります。

金属素地に直接上塗り(今回の場合はクリアー)しても十分に密着はせず、また防錆効果もありませんが、この場合はそれもご了承の上で対応しています。

同じく密着剤(スプレー糊のような物)も通常使いませんが、アルミ地に直接クリアーを塗るよりはマシかという事で使用しています(ですので通常これに頼る事はありません)。

研ぎ作業もそうですが、磨き作業も著しくやり難い形状ですので、塗り肌で仕上がるよう注意して塗装を行っています。

プラグホール内側はスプレーパターンを細くして、八方向からスプレーして肌を作っています(4方向ではどうしても肌が均一になりません)。

サフェでラインを整えないで塗った場合、プラグホールとプラグホールの間に凹みのような跡が出来てしまうのですが、しっかり当て板を使って研ぎ作業を行なっていますので、それも殆ど感じられないかと思います。

この後は一晩自然乾燥させ、後日60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。

それでは完成次第改めて紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

S20ヘッドカバー 下準備

先日下塗りを行っておいたKPGC10型スカイラインGT-R、所謂ハコスカのS20ヘッドカバーです。その後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させておきました。

まずは凸部を粗研ぎします。固い当て板に#120のペーパーを貼り、面出しを行います。

艶が出ると粗が目立つので、そういった箇所を虱潰しに研いで均していきます。

下塗り前の研ぎでは#320でライン出しを行っていましたが、ここでは#800を使います。より細かいラインに仕上げていく感じですね。

今回のご依頼は昔から当店をご利用頂いている車屋さんで、基本的に金額は上限なし(ほぼ言い値)、納期も未定(半年~一年)という内容となっています。これだけだけ聞くとまるでボッタくりな感じがしますが、そもそも業界の方なので目は肥えていますし、これらの工程を見て頂ければ費用が大きくなるのも理解して頂けるのではと思っています。

細部の修正が終わったら#1500の水研ぎでペーパー目と塗り肌を均し、コシの無い(当たりの柔らかい)布状研磨副資材(アシレックス)を使って細部の足付け処理を行います。

アシレックスでもやり難い箇所は、ナイロンブラシとウォッシュコンパウンド(液状研磨剤)を使います。人間の皮膚にこれをやると皮が破れて血が出るような感じなので比較的しっかり足付け処理が出来ます。

その後よく洗い流し、処理が甘い箇所は同じくアシレックスを使って空研ぎを行います。ようやくこれで下地が出来上がった感じですね。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

S20ヘッドカバー 下塗り

先日サフェ研ぎを行っていたKPGC10型スカイラインGT-R、所謂ハコスカのS20ヘッドカバーです。その後よく脱脂清掃し、マスキングを行いました。

そのまま本塗りにも行ける感じですが、まだ粗いペーパー目も残っているので、今回は一旦下塗りを行っておく事にします。

サフェ研ぎの際に金属素地が露出している箇所があるので、

一旦全体にプライマーも塗ります。

まずは目で見てアルミが露出している箇所をスポット的に2コート程塗ります。

その後全体に同じく2コート塗ります。

よく乾かしたら軽く表面を中研ぎし、

下色の赤を塗ります。

隠蔽力が高いベンガラ等を含む茶色系の原色=オキサイドレッド(STANDOX MIX567)を多めにした赤となります。

続けてもう少し鮮やかな赤を塗ります。こちらも適当な下色となります。

今回ご指定頂いている色はフォード社の「vermilion red」(カラーコード:E4 6470)で、この時点ではまだその色を作っていないので(それは自宅で作ります)、適当な色を使っているといった感じです。

そしてクリアーを塗って下塗り完了です。

クリアーが固まる前にマスキングを剥がしておきました。

本番ではベースコート塗装後に凸部を研磨してアルミ地を光らせ、その後全体にクリアーを塗って剥き出しになったアルミ素地も一緒に覆うようにします(厳密にはこれでは防錆とはならなく、腐食の進行を遅らせるといった感じです)。

尚、今回は下塗りなのでクリアーの膜厚は控えめに、シンナー希釈率も通常の15%→20%としています。

この後は60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させ、再度研ぎ作業を行なってから次はいよいよ本塗りとなります。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

S20ヘッドカバー サフェ研ぎ

先日サーフェサーを塗っておいたKPGC10型スカイラインGT-R、所謂ハコスカのS20ヘッドカバーです。その後60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させ、ガイドコートとしてベースコートの黒をパラパラと塗っておきました。

ガイドコートはこの後に行う研ぎ作業を目で見て判るようにする為の行為で、ただこういったちょっとした事でも手間は増えますから、「これくらいならやらなくても大丈夫」と思わなくても良いよう、安いスプレーガンにベースコートの黒を入れっぱなしにして手軽に使えるようにしています。

まずは凸部を研磨します。

最初は粗研ぎとして#120ダブルアクションサンダーでサフェと素地の凸凹&腐食を取り除きます。

その後当て板と#120を使い、手研ぎを行います。シャープさを出す為ですね。

既に一度塗装されている為かNISSANの凸文字がいつもより薄く、なので削り過ぎないよう注意します。

そしてサフェ研ぎです。今回のような形状だとエアーツールは殆ど使えなく、さらに小さい面が多いので、当て板には薄いアクリル板3mm、2mm、1.5mmを使って面出しを行います。

自動車補修塗装に使われるサフェーサーは2液硬化型で、模型等に使う1液ラッカーに比べとても固いのでどの場面でも当て板は必須、番手は#320から始めます。

ペーパーだけのコシに頼ると素地やサフェの凸凹が残ってしまうので、どんな狭い箇所でも必ず何かしらの当て板を使って研ぐのが基本となります。

ただし当て板を使うと角が当たったり同じ場所を研いだ際にスジ跡が残り易いので、研ぎ方向を変えながら、また固い当て板を使った後には柔らかい当て板(スポンジパッド)を使って均します。

#320→#400までの研ぎが粗研ぎで、この時点で大まかなライン出しが完了します。体中粉まみれになるので一度やり始めると中々その場を離れ難く、また一度集中してしまうと姿勢を変える事も忘れて没頭しまうので、この後の数日間は腰や首を痛めます。明らかにこういった作業(サフェ研ぎ)が他の仕事に影響が出てしまう事が判ったので、現在こういった作業(自転車フレームや今回のようなヘッドカバー艶あり仕上げ)は基本的にお受付はしておらず、例外としてこれまで施工した内容と同様でご依頼を頂いてきた方のみの対応となっております。何卒ご理解頂けますようお願い申し上げます(恐らく他ではここまでやらないのではないかと…)。

この状態だとまだ研ぎスジや深いペーパー目が残っているので、

清掃後、再びガイドコートを行います。

ここからは#500程度の布状研磨副資材で細かいライン出しや素地の均し作業を行ないます。

ここでも同じく当て板を使うのが基本で、最後の最後に素手(指かアシレックス専用パッドの使用)で研ぎ作業を行ないます。

よく脱脂清掃をしたらマスキングを行います。

本来であれば研ぎ作業ではさらに番手を細かく#800→#1500で仕上げを行いますが、

それらは非常に手間と時間が掛かる為、一旦下塗りを挟に、細かい箇所の修正は後日行うようにします。初期の頃はここから直接本塗りに行っていましたが(どの場合でも普通はそうです)、多少手間が増えても下塗りを挟んだ方がリスクが少ないですし、身体的にも全然楽なので(プレッシャーが全然違います)、数年前からこの方法にしています。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

S20ヘッドカバー サフェ入れ

先日旧塗膜を剥離しておいたKPGC10型スカイラインGT-R、所謂ハコスカのS20ヘッドカバーです。

ブラストボックスに入れ、

サンドブラストを行います。

サンドブラストは高圧のエアーで砂(ガーネット)を飛ばし、それを対象物に当てて削ります。ペーパー(研磨紙)では浸食された奥までは届かなく簡単に再発してしまいますから、金属素地に出来た腐食にはこれが有効になります。ネックは砂の跳ね返りが激しいので、専用の箱や装備(防護服)が無いと出来ないところがDIYでは難しい所ですかね。

その後リン酸処理を行い洗浄します。今回はバッフルプレートが着いたままなので高圧洗浄機を使って中の隅々までしっかり洗い流します。

その後よく乾かしたらマスキングを行います。

サンドブラストを行った直後に比べると全体的に黒ずんで汚くなって見えますが、これはリン酸処理で不動態皮膜が形成された事で、これによりアルミ表面の腐食を防ぎ耐食性が向上され、塗料の密着もすこぶるよくなります。

まずはプライマーを塗布します。

続けてサーフェサーを塗布します。今回は艶あり仕上げで承っていますので、被塗面の凸凹をこちらのサフェで整えます。

この後は一晩自然乾燥させ、後日60℃40分程の熱を掛けて塗膜を硬化させます。次はいよいよ地獄のサフェ研ぎ作業ですね(身体を壊すので現在は受付を停止中で、今回のように以前同じ内容でご依頼を頂いた方のみ対応しています)。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!