先日イラストレーターをご職業にしている方からのお問い合わせで、「自分でデザインした通りに自転車を塗装出来たりするんですか?!」みたいなご質問を頂きましたので、以前同じくデザイナーの方から御依頼頂いた案件を紹介したいと思います。4年前くらいに御依頼頂いたキャノンデールスーパーVなるアルミフレーム&スイングアームです。
データと作業仕様書はオーナー様自ら作成して頂いた物で、データはIllusratorなるソフトで作製したai型式のベクトルデータなのでそのまま使用が可能です。これならデータ作製費も掛かりません(jpeg画像とは全然違う物ですのでご注意下さい)。
ただ実際にフレームには段差や付属品などがあるので、塗装を剥がす前に各部を計測してロゴの配置位置を確認しておきます。
ちなみにアルミ溶接部のビートもオーナー様自ら削り落としています。きっと自分で色々やる事が好きなのでしょうが塗装だけはどうにもならなかったんでしょうね。まさに私もそうでして、当時は情報など全く無かったので綺麗な塗装はてっきりロボットが塗っているのだと思っていましたが、これを人間の手で塗れる!と言う事でもう塗装屋一直線でした(しかも当時は稼げる言う話でしたので)。
旧塗膜の剥離には剥離剤は使わず、スプレーガンなどを洗った際に出る廃棄のシンナーを貯めた槽に浸け置きをし、そのまま剥がれてくれる塗膜のありますが、大抵の場合はスクレーパーやワイヤーブラシを使って削り落とします。少々面倒ですが放置しておいても作業が進行している!と言うのが何か好きなんですよね。
ただ取りきれない細部の塗膜などもあるのでそういった箇所には最後にサンドブラストを使って剝がします。
その他ダブルアクションサンダーやリン酸なども使用し、この後に塗装するプライマーがしっかり素材に食いつくようにしておきます。
画像では既にサフェーサーを研磨までした状態で、ただその後パテを塗った箇所や素地が露出した箇所もあるので、本塗りの前にもう一度プライマーを塗ります。
オーナー様が作製したデータを基にマスキング用のシートを作製します。今回は配色の関係からマスキングシートは雌型では無く雄型を使い、「白→赤→黒」と言う順番で塗装します。逆でも勿論塗れますが、ロゴの輪郭とかがガタガタするのが凄く嫌なんですよね。
全体に再度プライマーを 塗りなおし、続けてロゴが入る部分にスポット的に白を塗っていきます。
画像だと判り難いのですが、ロゴが入る部分にはベースコートの白が塗ってあり、ロゴを入れたい(残したい)箇所にそれぞれマスキングシートを貼っていきます。
この頃はまだiPadを持っていなかったのでiPod touchでロゴ位置を確認していたみたいですね。何にしても便利です。
その後「赤」にする部分をスプレーし、白の時と同じように上からマスキングシートを貼り付けます。
オリジナルのロゴはこんな風に色分けはされていないかも知れませんが、それだけにこういう自分だけのカスタマイズが出来るのも塗装の魅力ですよね。
さらにベースコートが乾いたら各部のマスキングを剥がし、綺麗に出来ていない箇所があればその都度修正していきます。大抵の場合は一度で綺麗に出来る訳では無く、もう一度マスキングをして部分的に白を塗ったりして細部を整えていきます。以前行ったLOOKのフレームの「赤色の部分を水色に変える」と言うご依頼ではこれを延々一日やっていた記憶があります(結局その日は夜中まで続きクリアーは翌日となりました)。その時の作業も後日作業内容を纏めて紹介しますね。
そして完成です。自分がデザインした通りの物が実際に出来上がるというのはかなり面白いと言うか感無量なのではないでしょうか。何ていったって確実に世界にこれ一台ですからね。
ちなみにロゴデータは別として、手書きのイラストだけでもこんな事は全然可能です。以前行ったうさぎドロップのピンクに塗ったSURLYのフレームがそうでしたね(かなり引くような精密な手書きの作業内容所だったような記憶が・・・)。
またメジャーなロゴであれば既存のデータがあったりするので、それが見付かればロゴデータの作成費も掛かりません。私も知らなかったのですが当サイトに来てくれていた方からそういった方法(サイト)を教えて頂き本当に助かりました。その節は有難う御座いました!