先日到着しておりました自転車フロント用のダイナモハブSON NABENDYNAMOです。この度のご依頼、誠に有難う御座います!
ご依頼内容としては、今回見本として一緒にお預かりしたこちらのCHRIS KING社製の色に似せてという事で、塗装とは別に「調色作業」を、艶具合については当店規定の「つや消し」で承っています。
元々の黒は塗装で、一応#1300相当の研磨副資材で削ってみたところ傷が付く事を確認しています。これがもしアルマイトだと#1300程度では全く傷が付かず、なのでその場合はサンドブラスト+プライマー塗装が必要となります(アルマイトに密着剤を塗れば一時的にはくっ付きますが、経年劣化で密着剤の効果が落ちた場合、ペリペリと塗装が剥がれてしまいます)。
今回の塗装でネックとなるのが分解が出来なく、その一部に「可動箇所」がある事で、それの対応方法としては今回この箇所の周りの部位を塗装しないという事で対応する事にしました。例えば上の画像だと左側のプラスチック部分が動くので、本体との隙間からは油が出て来る可能性があるのですが、
ハブ本体側にある幅2ミリくらいのフランジ部分を塗らないようにし、「谷」のラインで塗装を見切る事で、可動部が固着したり、隙間から油分が出て来る心配がなくなります。例え「完全防塵防水」と言われている物でも、こういった隙間からちょっとでも油分が出ると塗装は取り返しのつかない事態(全面ハジキ等)が起こるので、こういった事には必用以上に神経質になっておく必要があります。
こちらのギザギザとした箇所は、見本のリヤハブでは同色のブルーグレー(アルマイト)になっていますが、今回はここは塗らないようにします(そもそもこのギザギザした箇所=スプライン部はディスクローターがはまるので無塗装希望との事でした)。塗り分けの方法としては、隙間に合う形にアクリル板をカットし、嵌め込むような方法にしようと思います。
そしてネックなのがスポークが入る穴で、前回塗装したハブの作業では、自転車屋さんが「スポークが入らないので穴の中は塗らないように」とのご指摘だったので、今回もそちらと同様に承っています。
ただ前回に比べ斜めの部分=ザグリが広く、今回はこの部分も塗らないよう承っていますので、
前回のように棒を入れるだけでは無く「ネジ」を使う方法を考えていて、M2辺りのサイズで色々な頭の形状のネジを取り寄せてみました。
こんな感じでピッタリでは無く多少隙間が出来るくらいの物を選んで採用しようと思います。ザグリ部分はウォッシュコンパウンドとナイロンブラシでしっかり足付け処理をしつつ、微妙な隙間を利用して色とクリアーを暈す感じですね。
反対側のネジの固定については、通常のナットだと六角形をしているのでピッタリ穴に嵌らない為、
この時と同じような感じでプラスチック製のワッシャーをレーザーで作成し、ナットの代わりに固定しようと思います。内径はナットを固定出来るようピッタリにし、外径は表側と同じようにザグリに合わせるような感じですね。
ちなみにアルマイトの艶消しと塗装の艶消しは全く違う物で、
アルマイトの場合は、アルミ素地にサンドブラスト等でザラザラにする事で艶消し感を表現しています。
なので艶のあるアルミ素地にそのままアルマイトを掛けるとやはり艶が残ったままの仕上りになります。
対して塗装はクリアー=トップコートで艶具合を変えていて、それぞれ仕上りは同じ様に見えてもアプローチは全然違うのです。
尚、前回施工したハブは「艶あり黒」で、参考までにそちらも紹介させて頂きます。
こちらの外装はスチール製で錆も出ていましたから、サンドブラストとプライマー塗装を行った上で上塗りを施しています。
今回のオーナー様曰く、「他社では塗装ができなく困っています」との事ですが、恐らくは出来ないのではなく、単に「やりたくない」と言うだけかと思います。出来れば私も避けたいところですが(十分な金額のお見積もりになっていますが本音はそれでも遠慮したい仕事ではあります)、いずれ歳をとったら今よりも出来る事が減る筈なので、今のうちに体に(と言うか心に)鞭を打って多少無理にでも引き受けるようにしています。
それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。改めましてこの度のご依頼、誠に有難う御座います!