先日お預かりしていましたゼンハイザーE945ボーカルマイクです。
本体は#800相当の布状研磨副資材(アシレックスレモン)で足付け処理し、グリルはリングを#1300相当の同系副資材(アシレックスオレンジ)で、メッシュ部はナイロンブラシとウォッシュコンパウンド(液状研磨剤)で足付け処理を行っています。
ゴールド色は、以前施工したこちらの画像でご指定を頂いていて、その時に作成した色見本もあるのでそれらを参考に色の調整を行います。
通常のキャンディーカラーでは、輝き(正面からの高明度と透かしの黒さの強コントラストとギラつき感)を優先させる為、STANDOX原色の中でも最も粗い目のシルバーメタリック=MIX598を使いますが、今回のゴールドはシットリとした金色にする為、目の細かいSPFシルバーJLM-906を使っています。
SPFシルバーはメタリックの粒子は細かいですが、コントラストが強く輝度感があるのが特徴です。一般的なメタリックの概念とは逆の感じですね(目が細かくなると透かしも明るくなってコントラストは弱くなります)。
マイクもグリルもゴールドにするのは一部ですが、そこだけ塗るようにするとミストが飛んで密着不良の原因になる可能性がある為、最初の1コートは全体に塗るようにしています(またはマスキングをする場合もありますが、ケースバイケースです)。
その後キャンディーイエローとオレンジを混ぜた透過色を重ねます。
ゴールドにするのは下部分(画像だと上側)のみで、ムラにならないよう丁寧に塗り重ねていき、
その後中央のリング部をマスキングし、ベースコートの黒を塗布します。
続けてリング部に、まずはガイド用のマスキングシートを貼り付けます。
それに沿ってフチにマスキングシートを貼り、最初に貼ったガイド用のマスキングを剥がし、その他の部分をマスキングします。この時点でメッシュ部を黒に塗っても良かったのですが、無用に膜厚を着けて塗り分け箇所=ぶつ切りマスキングで段差が出来るのが嫌だったので、この状態では極力コート数を少なくしようと思いこの方法としています(多分良く分からないと思いますが、多少の手間が掛かっても仕上がりが良くなるよう色々考えながら作業しています)。
本当は後からゴールドを塗った方が作業的には全然楽なのですが、それだと塗り分けのライン=ぶつ切りマスキング部の仕上がりが悪くなってしまう為、敢えてこの順番にしています。
念のため、オーナー様から頂いたイメージイラストと比べて確認します。一人だけで仕事をしているとどうしても独りよがりになってしまいがちですが、このように指針となる物があると迷いが減るのが助かります。「自分は大丈夫」「完璧」とかを言ったりする程危険な事は無いですからね。
マイクの方は黒でグラデーションを行います。ぼかし際は極力粒子感(粒粒)が目立たないよう、樹脂で希釈して透過するようにしています。
こちらも見本となる画像を見ながらグラデーション位置を決めています。
本来ならこの後デカールを貼るのですが、デリケートなぼかし際で何かしらのトラブルが起きたりするのが嫌だったので(そうなると最初からやり直しになってしまう為)、
ご依頼内容としては艶消し仕上げですが、この時点では通常の艶あり仕様となります。艶消しクリアーには艶を消す為の体質顔料として=二酸化ケイ素(シリカ・シリカゲル)が入っていて、それが多少なり透明感を損なう恐れがある為、使うのは最後の最後のみとしています。
グリルも艶消し仕上げなのですが、こちらも一旦艶ありクリアーで塗装し、後日改めて艶消しクリアーで塗り直すこととします。
それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!