ドゥカティバックミラー 調色

先日調色の見本としてお預かりしておりました塗装済みのドゥカティ用バックミラーです。今回はこちらを参考に色を作製します。

いきなり原色を混ぜて作っても良いのですが、今回の赤は在庫している塗料(フェラーリロッソコルサ300)に近い感じだったので、まずはそれをテストピースに塗装して確認します。

比色してみた感じとしては、ロッソコルサの方が彩度と明度が低く青味が強いので、その配合データから白(MIX570)と濁りの強い青(MIX566)を減らして新たに色を作製します。

そこから鮮やかな赤(MIX561)、青2色、白をそれぞれ足しながら微調整を行います。

ちなみに比色する際はベースコートをしっかり乾かした状態にしてから行うのが必須で(塗った直後と乾いてからでは色が変わります)、ただしそうなると艶が消えて色味が判らなくなってしまいますから、その都度シリコンオフ(脱脂用の低溶解な溶剤)を塗って艶を出すようにします。クリアーを塗った方がより色味が分かり易いのですが、そうすると色板への塗り重ねが出来なくなるので(色板が数十枚必要になってしまうので)、代わりにベースコートを侵さないシリコンオフを使うのが一般的です。他に塗料用シンナー=所謂「トシン」(フタル酸用シンナー)などを使う場合もあります(後者の方が揮発が遅いので有効ですが、今は使っていません)。

調色時に使う艶出し用のスプレーは缶スプレータイプが業界でメジャーですが、小物専門になってからは使用する機会が少なく、いざ使おうと思ったその時にはガスが抜けて使い物にならなくなっていたりするので、現在は直接スプレーガンにシリコンオフを入れて使っています。

使った原色はロッソコルサに使用している物そのままのこの4色となります。

予定では2時間を想定していましたが、元にした色(ロッソコルサ)が比較的近く時間を短縮出来たので、最終的にお見積もりからその分を下げてご案内するようにします。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

塗料の作成について

当店で色=塗料を作製するにあたっては、以下にように幾つかの方法に分かれています。


■調色
■色見本帳から似た色を選ぶ
■似たような色を作る
■配合データを作る(残す)


いずれも同じような事なのですが、一部有料での作業であったり意味が違っていたりするので、それぞれについて細かく紹介しようと思います。

最も一般的に呼ばれる「調色」は、基となる被塗物を参考に色を作製し、本塗り時と同じような条件として色板にスプレーガンを塗って微調整を行うような事を指しています。物理的に完全に同じ色の再現は出来ませんが、2時間くらい掛けて比較的近い色を作製します。それなりに時間が必要なので塗装費用とは別の有料オプションとしています。

【参考記事】

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他には「色見本帳から似たような色を選ぶ」という方法がありますが、これは色見本と実際に作った色とでの差異が生じる為、出来上がった塗料は結構色味が違っていたりします。なので「ある程度の目安」くらいに考えて頂ければと思います。

メリットとしては予め用意された配合データを基に色を作る為(=計量調色)、「10年後でも全く同じ色を作る事が可能」という利点があります。

最も簡単なのが「似たような色を作る」(=簡易的な色の作成)で、この場合スプレーガンで色板を塗ったりする事はせず、攪拌棒についた塗料と比較・確認するだけとなります。作業時間も5分程度としているので費用も掛かりません(勿論本塗りするまでスプレーガンで試し塗りをしての確認などもしません)。建築塗装などでよく見かける手法ですね。この場合とスプレーガンで塗った物とでは色の差異が出るので、こちらも大体な感じと考えて頂ければと思います。

【参考記事】

SENNHEISER E945 Microphone Pink

LOOK695

ブレンボブレーキキャリパー 下準備

最も手間が掛かるのが「配合データを残す」事で、これは色を調整する毎にその量を計上していく必要がありますから、先の「調色」とこれを組み合わせると丸一日掛けて一色出来るかどうかといった作業となります。

ただ上記の画像で行った内容は「調色」では無く、「簡易的に似たような色を作る」と「配合データを残す」の組み合わせなので、そこまで大変ではありません。ただ塗料を作っている途中の物と、その後出来上がった配合データで作った塗料では差異が生じますから(作業しているうちに溶剤分が揮発して重さが変わるので)、途中何度も一から色を作り直すなどしてそれなりに手間は掛かっています。

しかしならがら一度配合データを作っておけば、先に説明したように10年後でも物理的には全く同じ色を作る事が出来ますから、量産品などを塗装する場合には適しています。

ちなみに上記は「物理的には」なので、原色自体のロットぶれや攪拌不良、塗り方(主にメタリック)、先に塗った物の劣化(褪色など)によって色が変わってしまう場合はあります。自動車ボディが同じカラーコードなのに車体毎に色がブレるのはそういう理由からですね。

また塗料の作成でネックとなってくるのがPANTONEやCMKY、HTMLカラーコードでの色指定で、これらは「塗装」では無く「印刷」または「映像」ですから、これらを塗装で表現するのは実際には不可能です。

また当店が使う塗料=STANDOX社の物は元々「自動車補習用」の物なので、上記のようなパステルカラーは非常に不得意です。インド辺りに行けば派手な色の車も多いかも知れませんが、基本的に表面積が大きく実用的な物=車の場合は落ち着いた風合いの色が多く(地味な色)、パステルカラーのような配合データは殆ど無いのが実情だったりします。

と言う事で、小物塗装屋になってから力を入れたのがこういった比較的派手な色の見本を作る事でして、これらは全て配合データを記録していますから、その後の業務では大きな助けとなりました。

例えばこの時はご指定されたピンクが印刷された物で、この場合下地の白(紙)の影響を受けていますから(色が透けていますから)、塗装で言うと「ソリッドキャンディーカラー」みたいな事となり、真面目に色を作ろうとすると非常に多くの時間が掛かります。ただ画像のように予め作ってある色見本から近い物を選ぶ事が出来ればほぼコストが掛からなく、似たような塗料の作成が可能となります(そして数年後にリピート頂いた時でも色の再現性を確保できます)。

自動車補修塗装のように一件辺りの工賃が数十万~数百万円となるような業務であれば(利益が確立された一産業であれば)調色作業も付帯費用としてその中に組み込めますが、保険を使った作業がまず無い小物塗装の場合では極力全体のコストを下げる工夫として各作業を細分化する必要がある訳ですね。

ちなみに現在ではそういった経験?を元にして、塗料の販売などにも対応しています。

一般の方にはここまでシビアな色管理は必要無いと思いますが、フィギュアの塗装などで長年に渡って販売する際に個体毎の色ブレを防ぎたい!という事であれば良いかも知れません。同じ製品なのに購入する毎に色が違っていたら嫌ですよね。まあそういった色ブレを「味」として良い方に(それも価値として)捉える事も出来るかも知れませんが。

私的には手作り品の塗装で偶然できた模様を「世界に一つだけ!」みたいにあたかも貴重な物として謳うより、記録したデータの積み重ねでようやくたどり着いた!みたいな事の方が好きですかね。

レンジローバーオーバーフェンダー下準備

先日お預かりしておりましたレンジローバー純正(オプション)のポリウレタン製オーバーフェンダーです。

中古品なので裏側に接着剤(シーラー)が塗られていますから、まずはそちらをある程度除去します。

PU=ポリウレタン樹脂は、PP(ポリプロプレン)等のオレフィン系樹脂に比べ塗装・接着性には優れているので、逆にこれを除去するのは結構大変です。がっちりくっ付いてしまっているので全てを綺麗に剥がすのは難しく、盛られた厚み分を減らすような感じですね。

シリコンオフ程度ではまるで歯が立たないので、シンナーを使って多少柔らかくなったところを固いヘラでガシガシと削ります。

さらにダブルアクションサンダーで削ります。

半日かけて何とか綺麗になりました。

そして表側です。最初の状態ではワックスが効いてヌルヌルしていたので、アルカリ洗浄槽に浸けて油分を除去しておきました。

ダブルアクションサンダー#120で表面を削ります。ただ素材が柔らか過ぎて切削出来るという感じでは無く、あくまでも傷が付く=足付け処理の為のような感じですね。

その後#180の手研ぎで角などを削り、よく脱脂清掃を行います。

プラスチックプライマー塗布後、極薄くエポキシプライマーも塗っておきました。

続けてサフェーサーを塗布します。黒いザラザラの時は目立たなかったのですが、全体的に巣穴があるのが判るかと思います。というよりこういったポリウレタン系スポイラーの場合、内部は細かい気泡で出来ているような感じなので(発泡ポリウレタン)、表層を削ると穴だらけになるのは当然なんですよね。

巣穴だけでは無くシワのような箇所もあります。

サーフェサーは軟化剤を重量比で20%添加したフレキシブル仕様で、この場合とにかく指触乾燥が遅くなりますから、コート毎に30分程のフラッシュオフタイムを設けてゆっくり塗膜を塗り重ねていきます。

尚ここでは無理に厚塗りはせず、まずは第一層目の下地が作れればと思っています。

なので無理に巣穴を埋める必要は無く、サフェも4コート程に留めておきます。

そもそもサーフェサーに軟化剤を20%も入れるとこれ自体がゴムのようになって削り難くなってしまいますが、今回の下塗りではとにかく割れない為の下地を作るのがメインとなります。ちなみにスタンドックスのテクニカルデータシート上だと軟化剤は容量比15%までとなっていて、昔は容量比30%までOKでは?(重量比では20%)と思っていたのですが、やはりというか日本版?の重量比換算表ではその配合比が残っていました。恐らく「全然削れないよ!」とかクレーム言う人が現れてメインのTDの方では廃止になってしまったのかも知れません。それぞれの特性(用途)が判っていれば何ら問題が無いので、こういうのは非常に残念です。

通常であれば巣穴一個一個筆挿しして埋めていくのですが、今回はあと2回はサフェを塗る予定なのでこの後に期待してそのままとしておきます。

尚、サフェの塗装を数回に別けるのは、極力塗膜が割れ難くなるようにする為でもあります。硬化時に起こる収縮性を分散させる為のような感じですね。

今回の被塗物はこのような感じでとても柔らかいので、フルフレキシブルにした塗膜でもうっかりすると割れてしまう恐れがあり、なので一度に塗る膜厚を薄くしてそれを防ぎ、しっかり硬化させて伸縮しきった塗膜を数層に別けて変形に追随するようにしています。

またこの後はさらに裏側に骨を取り付ける予定で、それによって車体に取り付けるまでにここまで大きく変形させる事はありませんから、任意保険を何重にも掛けるような感じです。仕上がったそれが割れたりしたらもう絶望ですからね…。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

BBSホイールセンターキャップ検証

先日お預かりしておりましたBBSのホイールセンターキャップです。

作業着手のタイミングにはまだ早いのですが、施工事例の無い物という事もあったので、先に検証だけしておく事にしました。

まずはいつものように土台部分からアクリルプレートを外します。裏側からドライヤーで温めて両面テープの粘着力を弱め、隙間からシリコンオフを流しつつヘラを差し込んで剥がします。

残った両面テープを綺麗に除去します。

表面に傷が付かないようマスキングをし、裏側を#120→#180→#240のダブルアクションサンダーで研磨して白い被膜を剥がします。

さらに#320→#400で空研ぎ、#600→#800の水研ぎでペーパー傷を均します。

ここまで順調にいっていたようなのですが、

両面テープを剥がした際、メッキ層の一部がアクリル樹脂から剥がれてしまったようになっています(層間剥離)。上の画像だと左側の「B」の右下の方ですね。

こちらは真ん中の「B」の左端の箇所です。

そもそも背面の白のプリント部分もムラがあってどうも怪しいと感じていて、恐らくはアクリル樹脂とメッキ&白の密着具合が良くない構造だったのだと思います。

尚、この時点での成功率は50%ですが、さらにこの後に塗装をするとトラブルが起こる可能性があったので、

追加で同じ物をもう1セット、さらに違う型の物も送って頂きました。

最初にお預かりした物は輸入品との事で、こちらが国産品との事です。

どちらもBBS正規品ですが、全く違います。

BBSの凹み文字はこちらの方が深く掘られています。

背面のプリント(こちらはシルバー)にもムラは見当たりません。

元々施工していた物が左側の輸入品で、右の国産品に比べBBSの彫りがとても浅いです。

また輸入品はランナー(注口)から切り離した箇所の仕上がりが悪く(無くなっちゃってます…)、そもそも製造工程が違のかも知れません。詳しくは判りませんが、例えばこちらは射出成型で、国産品は押し出し成型といった感じでしょうか。

国産品の方は他店での施工事例があるようなので恐らく問題は無いかと思っております。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!

スバルエンブレム 本塗り

先日本塗りを終えていたスバルエンブレムです。裏側の青い被膜を削り落とし、見る角度で色相が変化するクロマフレア顔料=所謂マジョーラカラーで塗装行いました。

今回使用した色はアンドロメダⅡに該当する物で、これに使われている原色=米JDSU社の顔料をスタンドックスのベースコート用樹脂=MMIX599に混合して使用しています。

尚、今回は最後の仕上げとして、アクリルプレート表面にクリアーを塗装します。

表面を#800→#1300相当の布状研磨副資材(アシレックスレモン→オレンジ)で足付け処理をしてあります。最初の色に比べると全然違うように見えますが同じ物となります。

スバルのエンブレム(PMMA=アクリル樹脂)は長い期間紫外線に当たっていると表面が劣化して細かいクラックが入るとの事で、耐候性の良いアクリルポリウレタンを表面にコートしてそれを防ぐ効果を期待します。

よく脱脂清掃し、プラスチックプライマーを塗ったらクリアーをコートして本塗り完了です。お待たせしました!

今回はクリスタルクリアーでは無く、少し前に導入した常温1時間程で硬化するタイプのクリアーを採用しています。クラス的にはクリスタルクリアーより上位で、ただしベースコートを塗る場合はそこにもハードナーを添加しなければならない為、今回のようにクリアー単体の場合のみの使用が基本となっています。

どちらも同じ色ですが、置く位置によって見る角度が変わるのでそれぞれ違う色に見えます。凄いですよね。

光源に対して正面に立った時の透かしがこういった紫色で、

反対側=光源を背にした時は黄色味が出ます。

クロマフレア顔料についてGoogleのAIに聞いてみたところ、以下のような回答がありました。


クロマフレア顔料の原理は次のとおりです。
  1. 5層構造の顔料フレークが塗料の中でさまざまな方向を向いて定着される。
  2. 光が当たると、表面層で約50%、中央層のオペイク・リフレクター・メタル(Opaque Reflector Metal)で約50%が反射される。
  3. この分光効果で干渉波長(決まった色の波長)が発生し、視覚化される。

この色が見る角度=光の当たり方によって、

ここまで色相が変化するのは面白いですよね。

動画も撮影したのでそちらも紹介します。

ちなみにクロマフレア顔料自体は結構古くからあり、最初に見たのが私が自動車塗装業界に入るよりも前、30年くらい前でした。初めて見たそれはDUPONT社(現CROMAX)のクロマリュージョンカラーと呼ばれる物で、名前としては日本ペイントのマジョーラの方が有名ですが、恐らくこれが一番最初だったのではないでしょうか(同じアメリカの企業ですし)。

ちなみにSTANDOXでもこれっぽい色=Standox Xclusive Lineなる色は存在いているのですが、今回のように原色単体という訳ではないので、こうなると仕方なくベースコートとトップコートを違う会社の物にするか、もしくはマジョーラにニッペ(日本ペイント)のクリアーを使うかなどの方法となり、ただそれは気分的に良くないので当店としてはSTANDOXの塗装システムとして使えるようにしています(顔料単体での販売は契約違反になるとの事でスタンドックスのベースコート用樹脂=MIX599に添加して制作・販売して貰っています)。

それでは完成次第改めて紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!