Bianchi Aluminum Bike

bianchi ビアンキのアルミフレームです。全体的に痛みが出ているので旧塗膜は一旦剥離し、色とデザインについては極力そのままでと言うご依頼でした。

bianchi3 パッと見は綺麗なのですが、穴の周りなどは塗膜の下で腐食が菌糸状に広がっています。

bianchi2色については既存のフレームカラーでは無く、ボトルゲージを見本として色を作製するよう承りました。似ていますが微妙に色合いが違います。

bianchi1 “Bianchi”のロゴについては既存のデータがあるのですが、”ATTIVO”なるモデル名はフレームにプリントされたロゴを基にデータを作製します。

bianchi ベクトルデータを作製出来るソフト(adbe Illustrator)を使ってロゴデータを作製し、これを基にしてマスキングシートを作製します。

bianchi4 各ロゴのサイズを実物に合わせておきます。旧塗膜を剥がすとロゴも一緒に消えてしまうのでこのデータだけが頼みの綱と言う訳です。

bianchi5 フレームを溶剤に浸け置きして塗膜を柔らかくし、スクレーパーやサンダーを使って削り落とします。

bianchi6 細部に残った塗装や根深い腐食はサンドブラストを使って除去します。

bianchi7 ブラストボックスに入れ、研磨粒子を高圧で吹き当てて残った塗膜や腐食を削り落とします。

bianchi68細部まで綺麗になりました。

bianchi8 素地調整が済んだので、塗装の前にブラインドナットを取り付けておきます。

bianchi9 ブラインドナットは専用の工具を使って取り付けるだけですが、今回のように穴の周りから腐食が広がるケースが多いので、最初に構造用エポキシ接着剤を塗ってからカシメます。

特にアルミフレームにスチール製のブラインドナットを取り付ける場合、鉄とアルミの電位差によって腐食が発生し易くなります。車のアルミボンネットとスチール製のヒンジとの間に絶縁処理が施されているのと同じく、通電を遮断しつつシール性も確保すれば防錆面で安心出来ます。尚、フレームがスチールでブラインドナットがアルミの場合も然りです(そのパターンは無いと思いますが)。

bianchi10 食み出した接着剤を拭き取り、念のためボルトを入れてある程度のトルクを掛けて空回りしないか確認しておきます。

bianchi11 素地調整の完了です。良く清掃したら各部をマスキングします。

bianchi12  まずはプライマーを塗布します。

bianchi2奥のチェレステカラーがフレームのベースコートで、手前の紺がロゴカラーとなります。

bianchi3 そして本塗り開始です。

bianchi4 まずはフレーム全体にベースカラーを塗布し、各ロゴを入れる準備をします。

bianchi5 残しておいたデータを基に各ロゴを元の位置に合わせます。

bianchi6 周りを養生し、ロゴ部を紺で塗装します。

bianchi7 全てマスキングを剥がし、クリアーを塗って本塗り完了です。

bianchi8 bianchi9 その後熱を入れて塗膜を完全硬化させ、必要に応じて磨き処理を行い、数日寝かしたら完成となります。

bianchi17 そして完成です。

bianchi13四輪自動車の場合は必ず色番号(カラーコード)があって、そこから塗料メーカーから配布される配合データを使って色を作製する事が出来ます。また塗装の修理方法も塗料メーカーによるマニュアルがあり、新たに販売される車両で新色が出た場合はその補修方法や材料などの情報も供給されます。さらには、修理に掛かる費用もある程度指数化されているので勝手に金額を決めたりは出来ません。ドアミラー一つ外すのも車種毎に金額は決まっているのです。

bianchi16  それに対して自転車は塗装の配合データなど存在しませんし、修理方法も下地から上塗りまでかなり自由(!)なので、正直なところ、車を塗っていた塗装屋さんなら最初は戸惑うかも知れません。なんといってもメッキや金属素地の上に直接クリアーが塗られていたりしますので(車の塗装ではあり得えません…)。

bianchi15 今回塗ったチェレステなる色も配合データは無いですが、何かしら見本があれば再現は可能です。しっかりとした調色は別途「調色費」が必要ですが、5分程度の簡易的な色の作製であれば無料で対応しています。

bianchi14当店の塗装品質としては、車の塗装と同じ物と考えて頂ければと思います。元々外国車をメインにやっていましたので、ベンツやBMWのそれと同程度の仕上がりにはなるようにしています。

ビアンキフレーム塗装 完成

bianchi13 大変お待たせしました!ビアンキのアルミフレームは本日完成となります。本日発送可能ですので御安心下さいませ。

bianchi14「Bianchi」のロゴデータは既存であった物なのでこちらは塗装費用のみです。

bianchi15 ただしこちらの「ATTIVO」なるモデル名?のような使い方が限定されるロゴについてはデータをデータを入手する事はほぼ不可能ですので一から作らなければなりません。これが中々面倒なのでこの分の費用はどうしても掛かってしまいます。パイオニア的な事をやるにはどうしてもお金が掛かってしまうという事ですかね・・・。何卒御容赦下さいませ。

bianchi16色については「チェレステカラー」で承っていますが、フレームに元々塗ってあった色に合わせた訳ではなく、一緒にお預かりした「ボトルゲージ」の色に合わせています。

ちなみにウィキペディアには

「現在はホームページを作る際などのためにカラーコードがPantone 333(C 38 / M 0 / Y 27 / K 0)と指定されている。」

と記載されていて、SATNDOX社が提供する配合データには実はこれもあるのですが、存在するのは2Kエナメル(1コートソリッド用なるものでクリアー仕上げとはちょっと違う塗料システムです)のみで、しかも余り信用は出来ないのでこれを使う事は無いですかね。ただ印刷系の物を「塗料」のデータとして用意している事に対してはユーザー(塗装屋)として心強い次第です。工業規格に厳しいドイツならでは成せる事なのでしょうか。

bianchi17それでは後ほど完成のお知らせメール差し上げますね。この度のご依頼、誠に有難う御座いました!

ビアンキフレーム 本塗り

bianchi3 こちらもお待たせしました!ビアンキのアルミフレーム無事本塗り完了しておりますので御安心下さい。

上の画像は先日塗っておいたプライマーは表面を軽くサンディングしてネジ穴などをマスキングした状態です。良く脱脂をしたらエアーブローをしていよいよ本塗り開始です。

bianchi4 ベースコートを塗り終えたらテープフリーな状態になるまで乾燥させ(この時点では「硬化」ではありません)、予め作成しておいたマスキングシートを貼る準備をします。ちょっと画像では判りませんが台の上に置いてある白い用紙にロゴの位置などの寸法が全て記載されています。

bianchi5 チューブに巻かれている黄色いマスキングテープは左右のロゴの位置を揃える為です。メジャーで測って位置を決めるのは片側だけで、それを基準に反対側のロゴを揃えます。

bianchi6 ロゴのブルーを塗る所以外は全て養生しておきます。逆のパターンで先にブルーを塗っておいてからロゴの形のマスキングシートを貼り付ける方法であればこのように養生紙で全体を覆う必要は無いのですが、仕上がりを考えると面倒でもこの順番になるんですよね。

bianchi7 マスキングを全て剥がし再度全体をよくエアーブローしてホコリを飛ばしたらクリアーを塗って本塗り完了です。

本塗りで難しいのはクリアーかと思いきや実は「ベースコート」の方が難しかったりします。自転車の場合はそれは余り意識する事は無いのですが、自動車パネルのように大きな平面に塗る場合は色によって「ムラ」が生じてしまうので、特に今の暑い時期だと溶剤の揮発速度が速くて肌が荒れやすく、それによって淡い色が付いたようなシルバー系は取り返しの付かないようなムラが出来てしまったりするのです。また肌が荒れればその上にどんなに綺麗にクリアーを塗っても「艶引け」が起こるので後で磨き処理によって肌を作ってあげなければいけなくなりますしね。

bianchi8 ではクリアーは簡単かと言うとこれもちょっと癖があって、ただ同じ物を塗っている分にはどこが塗り難くて肌が荒れ易いとかタレ易いとかが判るので大抵の事は対応が出来ます。

ただ真夏である今の時期はちょっと難しく、特にこういった自転車フレームの場合は多方向からのスプレーが必要なので塗り方を間違えると一気に肌が荒れてしまいます。気温が高いと塗膜表面の乾燥硬化が早いのでスプレーの馴染みが悪いんですよね。下から塗ったクリアーは一旦上に舞い上がり、それがミストとなって下に落ちてくるとそのまま残って肌を荒らしてしまうので、クリアーの塗装はそういった事も考えて塗る順番、そして一番早く塗り終えられる方法をイメージして塗る必要があるのです。また実際にはイメージだけではなく体を使って「仮想本塗り」と言う事も当然行っていて、ただ手にはスプレーガンを持っていないのに動きだけは本塗りそのものですから傍から見たらちょっと危ない人みたいですけどね(苦笑)。

bianchi9それでは完成しましたら改めて紹介させて頂きますね。完成は来週半ばくらいを予定しております。どうぞもう少々お待ち下さいませ!

ビアンキフレームカラー 色作成

bianchi1本塗りはまだちょっと先になる予定ですが、他に色を作成する仕事(こちらは業者さんからのインテリア用品多数)があったのでこちらも一緒に作業する事にしました。店を広げたら片付けるのも大変ですからね。

bianchi2フレームのチェレステカラーは一緒にお預かりしたボトルゲージ(画面上にあるパイプ状の部品)の色を参考に作成しています。紺色はロゴの色ですね。

チェレステカラーについてはネットでも色々と出ているようですが、ウェキペディアに判り易い説明があったのでちょっと紹介させて頂きますね。

【以下ウィキペディアサイトより抜粋】

 ビアンキの自転車は伝統的にチェレステ(イタリア語:Celeste、碧空、天空)という緑色に近い青色で塗装される。このチェレステはイタリアのマルゲリータ王妃の目の色をモチーフにしたという伝説があり、実際に創業者であるエドアルドが、1895年にマルゲリータ王妃に歴史上初の女性用自転車を彼女のために制作し献上した際に、その乗り方を指導している。また、その年のミラノの空の色を見て現地の職人が色を調合するとも言われており、チェレステカラーは毎年微妙に違った色になっているとされている。緑色に近い青色という通り、青みが強くなる年もあれば緑色の強い年もある。現在はホームページを作る際などのためにカラーコードがPantone 333(C 38 / M 0 / Y 27 / K 0)と指定されている。

との事です。ちなみにパントンのカラーコード333はスタンドックス(塗料)の配合データでも存在します(調べてみました)。ただこれについては印刷と塗装で大きく違いますから余り当てになりません。いざ作ってみると全く違う色が出来たりしますので・・・。

ちなみに上記記事中にある「その年のミラノの空の色を見て現地の職人が色を調合する」ですがさすがにこれは冗談でしょう(笑)。色については毎年流行りと言うものがあるのでそれに合わせて微妙に調整したりしているのでは無いでしょうか。そんな不確かな遣り方で色が決められるとしたら、その職人さんは困ると思うのですが・・・。

自動車(4輪)の塗装については「傷が付いたら直す」と言う事が前提となっているので、その補修システムについては非常に良く出来ていて、また産業としてもきちんと成り立っています。故に新色が出たら各塗料メーカーはそれが世に出る前にその色の配合データをユーザー(塗装屋)にオープンにしますから、色ブレは当然ありますが「同じ色」(同じ様な色)は簡単に作れるようになっているのです。しかも同じ色でも年式や製造国によってかなりの数が用意されていたりもします。

バイク(二輪自動車)の場合は例えばBMW社は比較的四輪自動車と同じ様に整備されていて、その他のメーカーも多少なりこの配合データは存在します。ただし自転車は・・・

と思って実は今スタンドックスのカラーデータを調べてみました。

有名どころとしてbianchiやtrekを探してみましたがやはりこれらは対称になっておらず、ただ奇跡的にcannondaleは少し出て来ました。ただしこれがあのキャノンデールと同じかどうかは判らないのですが(同じ名前の4輪自動車メーカーがあるかも知れませんし)。その他porscheやpeugiotは自動車メーカーでもあるのでもしかしたら混合して存在するのかも知れません。

まあ自転車の塗装の場合は「修理」と言うよりは「買い替え」または「色替え」といった事になりがちですからメーカーも補修塗装についてはそんなに力を入れていないのかも知れませんね(またはわざとかも知れませんが・・・)。

それではまた作業進行しましたら紹介させて頂きます。もう少々お待ち下さいませ!

 

ビアンキフレーム 下準備

bianchi5 長らく溶剤槽に漬け込んでおいたビアンキのアルミフレームです。途中何度か出してスクレーパー&ワイヤーブラシで擦っていまして何とかここまでになりました。剥離剤を使えば一発なのですが色々考えると出来るだけあれは使いたく無いんですよね(使った事がある方なら判るかと)。

bianchi6 パイプ状の箇所は傷などもあるのでダブルアクションサンダーにて表面を削りますが、こういった入り組んだ箇所には塗膜が残っていたりするのでこういった箇所はサンドブラストで処理します。

bianchi7 ブラストボックスに入れて準備完了です。蓋を閉めてもかなりホコリっぽいのでマスクは欠かせません。長生きしようとは考えていませんが苦しんでの最期は辛いですからね(塵肺は大変です)。

bianchi68そしてこんな感じにスッキリしました。ワイヤーガイドの中なども処理しておきます。

bianchi8 で、プライマーを塗る前に最初に外しておいたブラインドナットを取り付けておきます。「プライマーの後じゃなくて大丈夫なの?」と思うかも知れませんが、フレームとナットの間にはエポキシ接着剤を充填するので錆びは出ませんから御安心下さい。ちなみにパネルボンドの説明書にも「鋼板に直接」と書いてある筈ですので。

ちなみにピンセットが一緒に写っているのは、最初に外して回収出来なかったブラインドナットの破片3個をチューブの内部で固定する為です。

方法としては穴から少し除いた箇所にエポキシ接着剤を付けて影響が無さそうなところ(水抜き穴から遠い所)に転がして固定させ硬化させてしまいます。グリースを入れると言う手もありますが二度と見る機会は無いですからこの方が確実ですかね。ちなみに最初から判ってやっている事でミスをしている訳ではありませんから御安心ください。ブラインドナット付近の腐食除去を優先させた為です。

bianchi9穴の周りにエポキシ接着剤を塗布したらブラインドナットを打ち込みます。ブラインドナットはアルミとスチールを用意していますが今回はスチールを御選択頂きました。ちなみにアルミとスチールだと電位差の関係上そこに腐食が生じ易いですがちゃんとプライマーや今回のようなエポキシ接着剤が塗られていれば大丈夫です。シーラーでも勿論構いません。何もしないでっていうのだけは避けた方が宜しいかと・・・(まあ私も自分の自転車は気にしませんが。この部分はもう腐食だらけです)。

bianchi10 そして食み出たエポキシ樹脂をシンナーでふき取り、適当なボルトを強く締めこんで空回りしないようであれば完了です。

ちなみにブラインドナットの打ち替えは当然有料になるので、特に問題が起きていなければ打ちかえる必要はありません。カーボンフレームであれば万が一の割れなどを考えるとそんなリスクを負う必要は無いと思いますので・・・。

bianchi11 そして台にセットして全体を脱脂したらプライマー塗布の準備完了です。実際塗るよりもここまでの作業の方が余程時間が掛かっている訳ですが、塗装にはこういった「付帯作業」が必要なので比較的費用は抑えてはあると思います。時々「剥離とプライマーの塗装までやって欲しいのですが」といったお問い合わせがありますが、それだけでは塗装屋の仕事にはなりませんので出来ないのですよ・・・。何卒御理解下さいませ。

bianchi12 そしてプライマーの塗装が完了です。塗装屋としてはようやくこれで一安心と言う感じです。

こういった作業は本来であれば分業で行う方が効率が良いのですが、そもそも当店には私一人しかいませんし(苦)、それだと楽しさが半減してしまうという所でもあります。大変だった下地作業だけをやってあとは誰かに塗られてしまう、しかもその仕上がりが余り良く無いなんて事だったら残念過ぎますよね・・・。結果、何でも一人でやらないと気が済まないと言う事なのです。

せめてデスクワークを無くして現場だけやっていたいんですけどね。これが今後の課題でもあると思います(故の工場引越しと言う事なのです)。