大変お待たせしました!マツダアテンザの純正フロントグリルも作業着手しておりますのでご安心下さいませ。
ご依頼内容は2トーンカラーでの艶有り仕上げで、ただ新品部品は素地がザラザラとした梨地なので、まずは一旦これを平滑な下地にしなければなりません。
ただしこれ全てをいつものように「研磨→プライマー塗布→サフェーサー塗布→完全硬化→研磨」といった工程をやるとそれだけで大変な時間と費用になってしまいますので、今回は「2度塗り」といった方法で対応するようにします。ちなみに梨地の目が粗い場合はこれでは対応が出来ませんので御理解下さいませ。(むしろデロデロと汚い仕上がりになってしまいます)。
まずは全体の足付け処理ですが、形がここまでイビツだとそれだけでもかなりの手間が掛かりますし、サフェーサーでは無く通常の上塗り塗料(STANDOX 2Kエナメル)を下地として使うので余り粗いペーパーは使えないと言う縛りもあります。
なので今回は空研ぎでは無く水研ぎをメインに色々やってみる事にしました。
まずは全体的にスコッチとウォッシュコンパウンド(先ほどのハジキシラズ)で脱脂&足付け処理を行います。素材はPP(ポリプロピレン)なので、この場合粗いペーパーや研磨時の摩擦熱で傷が毛羽立ちますから今回はそれに気をつけての水研ぎとしています。
その後、スコッチが当たら無い箇所に、布状の研磨材(アシレックス)をヘラに巻いて足を付けていきます。アシレックスは水研ぎだと目詰まりがし難く、またペーパーのように破れたり角が立ったりしないので非常に便利です。
ナイロンブラシとウォッシュコンパウンドのお陰で、ペーパーでは入りきらないような細かい凸凹部分も綺麗に足が付きました。これだけ見ても何の事だか判らないと思いますが、塗装屋さんならこの凄さが判りますよね。
そしてさらに物理的に足が付きにくかった箇所(穴の断面部分など)にもと言うことで、最後は専用のバーナーを使って火炎処理を行っておきます。樹脂の表面を炎で溶かしつつ、ガス中に入った成分(多分ガラス珪素系)が被塗面に形成され、この後に塗るプラスチックプライマーの密着性を向上してくれます。
そして指定の箇所(モールが装着される箇所の穴)をマスキングしてようやく下塗りの準備完了です。もう今回はフルコースみたいな感じで、これが雇われだったら多分クビになっていますよ(笑。たかだか足付け処理に時間を掛け過ぎてます)。
下塗りといっても本塗りと変わりありませんのでブース内もこんな感じです。
あれだけ下地処理を行っていてもプラスチックプライマーが塗られていなければ簡単に剥がれてしまうのがPPと言う樹脂ですから、プライマーは四方八方、裏からもしっかりスプレーしています。
塗っているのは通常1コートソリッドとして使用する上塗り塗料で、一応次に塗るグレーシルバーの隠蔽が良いように同じ程度の明度にしておきました(白と黒を混ぜているという事です)。
ちなみに塗った直後は画像のように艶がありますが、素地は細かくてもザラザラと梨地なので、完全硬化すると艶が消えたような仕上がりになります。さすがにこれを磨きで艶を出すと言うのは現実的では無いですから、下地の段階でその凸凹を平滑にしておく必要がある、と言う事ですね。何にしても重要なのは下地です。
この後熱を掛けて完全硬化させ、ただしチヂレが怖いのでさらに一週間以上寝かしてからの本塗りとなります。その前にまたこれを全部足付け処理しなければならないんですけどね(苦)。
どうぞもう少々お待ち下さいませ!