象印タンブラー (本塗り)下塗り

 先日足付け処理を行っておいた象印のステンレスマグです。グリップ兼固定冶具に取り付け、十分に脱脂を行ったら本塗り(下塗り)開始です。

 色はフェラーリ純正色「ロッソスクーデリア」(カラーコード:263657)で、これは下地にシルバーを塗ってそれを透かして表現する3コートキャンディーカラーの為、それぞれ2種類の色を作製します。

尚、色を作製する配合データは各塗料メーカー(当店の場合はSTANDOX)に用意されていて、昔はCD-ROMで配られていましたが、今はウェブサイトにログインしてダウンロードする形となっています。

しかしそうなるとオフラインでは色が作れない訳ですが、その辺はちゃんとフリーダイヤルで人間が対応してくれます。水性塗料でしか存在しない新色でも、置き換えデータを案内してくれたりと至れり尽くせりです(恐らくはわざわざ多角型分光測色機で色見本を測定して原色配合を出してくれているのではと・・・)。

 と言う訳で、まずは下色となるシルバーを塗布します。完全隠ぺいさせるのに3コートを要しました。

 その上に透過性の赤を塗ります。最初の1コート目はこんな感じでかなり薄いピンクですが、一気に色を着けるとムラ・ダマが出来てしまうので、この含有量のまま塗り重ねていきます。

 結局ここまでにするのに赤を6コート、トータル9コートになっています。

ベースコートでここまで塗ると、クリアー中の硬化剤が最下層まで浸透しないで反応不良(硬化不良)を起こしてしまう恐れがある為、通常は入れない硬化剤をベースコートにも添加しています。

外資系の多くはベースコートには硬化剤を入れない1液性ですが、それはラッカーのような溶剤揮発型の1液性と言う訳では無く、クリアー中の硬化剤が浸透して反応する2液ウレタン型です。

ただDUPONTのセンタリ6000システムだとどうもこれが弱いらしく、ちょっとでもベースコートを塗り過ぎるとこの硬化不良が顕著に表れ、私はかなり早い段階で対策をしていたので(ベースコートに直接硬化剤を入れていたので)そんなに被害はありませんでしたが、知り合いの塗装屋さんはオールペンした車両の塗装を、全て剥がして最初からやり直し(サフェも!)と言う恐ろしい事態になっていました。

それと同じことで、ベースコートだけを外資系の塗料にし、その上に別メーカーのクリアー(多くは値段が安い国産品)を使った場合、やはりベースコートとクリアーとの食い付きが悪く、後にクリアーだけがペリペリと剥がれる層間剝離を引き起こします。そこまで酷い事態にならないにしても、「私の車だけ妙に飛び石傷が多い気が・・・」と言う場合はそういった事が考えられます(実際私がアルバイトに行っていた工場の塗装がまさにそれでした)。「うちはDUPONTを使ってるから!」と、体裁だけは良いんですよね。

 尚、ご依頼を頂いているのはこれに白とグリーン(と既存の赤)を使ったストライプライン入れも承っていますので、この後熱を掛けて一旦ベースカラーとしてのロッソスクーデリア(厳密にはROSSO F1 SCUDERIA)の塗膜として完成させ、再び足付け処理を行ってからライン入れ&クリアー塗装の本塗りを行います。

 参考までに、こちらが以前ご依頼を頂いたフェラーリ360モデナの鍵です。

今回の塗色は赤を塗れば塗るほど色が濃くなってしまう為(特にいつものキャンディーレッドとは違い隠蔽が強いのでそれが顕著に現れます)、この画像を参考にして色を調整しています。一旦スプレーガンを洗ったのですが、最後の最後に少し足りないかと思いもう1コート多く塗りました。

このまま完成でも十分な仕上りですが、実際はこれからが本番となります。どうぞもう少々お待ち下さいませ!