Mercedes-Benz 500E Air Cleaner Cover

benz1 三年くらい前にご依頼を頂いたメルセデスベンツ500E のエアークリーナーボックスです。

車体に装着されている本物は、凸文字とスター部分がシルバーに塗装されているとの事で、ただそちらは経年で塗装が剥がれてしまっていてもう同じ物は入手出来ないと言う事で、こちらの新品部品を使ってその復元のような塗装をご依頼頂きました。

benz内容としては凸文字の天面部分のみをシルバーに塗ると言う事で、一見簡単そうに思えるのですが、塗装屋的に考えるとこれは非常に難しい内容です。

benz3作業方法としては凸文字の周りをひたすらマスキングすると言う内容で、ただ現状のままだと整形時の歪みからラインがはっきりしないので、まずは表面を削って平らにします。

benz7アルミを削るのと同じように当て板にペーパーを貼り、#120から始めて最終#800の目に均します。

benz8マスキング作業を出来るだけ簡易化させる為、凸文字をトレースしてデータ化し、マスキングシートを作製します。と言ってもそれで済む話では全く無いのですが。

benz9同じように中央のスリーポインテッドスターも外径・内径を測ってマスキングシートを作製しておきます。

mercedes石刷り方式で凸文字の輪郭をトレースした物をスキャナーでパソコンに読み込み、ソフトを使ってベクトルデータ化します。

mercedes1カッティングプロッターで作製したマスキングシートを文字の周りに貼っていきます。

mercedes1大体「谷」のライン辺りまでのマスキングが出来ました。ただし本当のマスキング作業はこれからです。

mercedes2カッティング用のマットにマスキングテープを貼り、それをカッターで1ミリくらいの幅にカットしていきます。

mercedes3今度はそれを凸文字の側面、壁の部分に貼っていきます。

mercedes4大量生産であればここにピッタリと嵌る「型」を作って簡単に塗装を出来るようにする筈なのですが、これ一個だけの為となると、結局こうやってネチネチとひたすらマスキングをしていくしか方法がありません。

ローラーで塗るとかシルク印刷とかUVプリントとか他に良い方法があるんではと色々考えましたが、純正と同じような仕上がりでこれ以外に出来る方法があるのか未だに判りません。

mercedes8以前別件で御依頼頂いたW124のエアークリーナーボックスのスターは外せたのですが、今回のスリーポインテッドスターは外せない一体成型の構造になっています。

mercedes6塗装自体はそんなに難しい訳では無く、掛かった時間も99%以上は下地の作業です。

mercedes7塗り終わってマスキングを剥がしてみると若干色が掛けたような箇所が幾つかあるので今度はそれらを修整していきます。上の画像だと「E」の部分がそうですね。

mercedes8「山」のプレスライン部分のみを塗るような感じでマスキングしてスプレーします。

mercedes13そして完成です。

mercedes14黒い部分も塗ってしまえればここまで大変な作業にならなかったのですが、それでは結局純正とは違う仕上がりになってしまうので、当時の量産品と同じように凸部の上部分(天面)のみをシルバーに塗って黒い樹脂部分はそのまま残すと言う内容にしました。

mercedes15黒い部分は整形時の歪も残ったままですが、これこそがオーナー様の求める仕様だったと言う事です。

mercedes16ちなみに一般的に古い車の場合は「純正と同様に」と言う方向が多いですが、最近は余りその辺に拘らない「自分仕様」みたいな内容も増えているような気がします。

W124エンジンルーム内パーツ塗装 完成

メルセデスR129 インマニ塗装 完成

ROVER MINI内装パーツ一式塗装 完成

ER34 RB25エンジンパーツ一式塗装 完成

最近御依頼頂いたBMW E31のテールランプなんかもそうですよね。

mercedes17ちなみにこういった事は新品が手に入るのであればその方が費用は安く済むと思います。

決して希少価値があるからとか、もう手に入らない物だから塗装費用が高くなると言う訳では無く、単純に多くの時間が掛かるのでそれに伴って費用が上がってしまいます。

元々は大量生産で作られた物でも、後からそれと同じ物を一個だけを作ろうとすればとてつもない時間と労力が必要となります。どうかご理解頂ければ幸いです。

メルセデス500Eエアークリーナーボックス 完成

mercedes13 つ、遂に完成です。お待たせしました!

パッと見はそんなに大変そうでは無いのですが塗装屋さんなら解りますよね。出来れば二度とやりたく無い仕事上位に入るかも知れません(いやこれは冗談でお仕事頂けて有り難い限りです)。ただ実例として一度はこの作業もやる必要があったので凄く良い機会でした。塗り方の順序が逆のパターンでは今まで施工例はありましたがそれとは全く違いますからね(大変さの度合いもです)。

mercedes14 オーナー様からの提案で「先に全体をシルバーで塗ってから文字の上部分をマスキングして艶消し黒を塗れば」といった事もあったのですが、隣合うパーツとの色違い(塗装と樹脂との質感の違い)を避けたいという事もあったので色々検討した結果今回の方法となりました。

ちなみに塗り方が違う場合の参考としては、プロフィット日記2012 No.537からのBMWヘッドカバーの凸文字が解りやすいかと思います。

mercedes15 スターの周りの溝も最後に黒く塗ったのでシャープ感が出たと思います。取れればメッキエンブレムに交換するという手もあったんですけどね。

mercedes16 「文字の上をシルバーに塗って」とちょっと軽い感じで御依頼頂くことが結構良くあるのですが、今回の作業例を紹介する事によってどれだけの時間と費用が掛かるのかを非常に解りやすく説明出来ると思います。簡単そうに見える作業なのに高額費用となると口で説明するのは本当に難しいので・・・(これが一番苦手です)。

それでは後ほど完成のお知らせメール差し上げますね。この度もご贔屓頂き有難う御座いました!

メルセデス500Eエアークリーナーボックス 修正

mercedes6 先日塗り終えていたE500エアークリーナーボックスの凸文字とスリーぽインテッドスターですが、一部仕上がりが悪い箇所があるので修正していきます。まあこれだけの内容ですから一度で終わる筈はありませんよね。ある手程度は覚悟していたのでもう少し時間を掛けていきます。

上の画像はスリースターを塗り直しているところで、三角の右端の方に黒く見える部分が具合が悪かった箇所を削ったところです。マスキングを剥がすのが遅れて塗膜の端が捲れてしまったので削って平滑にしています。 マスキングを終えたらもう一度全体的に塗装します。

mercedes7 上のスリースターは実はそんなに時間が掛からない方で、実際には文字の修正の方が大変です。やはりブツ切りでの見切りだとシャープさに掛ける箇所は出来てしますのです。

上の画像だと「E」の下の方に小さな欠けのような箇所があって、こういった部分を虱潰しに修正していきます。

mercedes8 修正方法としては文字全体を塗るのではなく「エッジ」の部分だけですから一個当たりに掛かる時間は短時間で済みます。ただこれを30箇所くらいやっていくので結構な時間にはなってしまいますかね。上の画像はマスキングをした状態です。ちょっとしたことですが意外と気になるんですよ。

mercedes9と言う事でこんな感じで終了です。クリアーは塗りませんが硬化剤は入っているので塗装後は直接触れないように気をつけながら次の修正箇所に移ります。一箇所に掛かる時間は5分~10分程度ですかね。終わりが無い訳では無いのでそんなに嫌な仕事ではありません。

そして遂に終了!・・・と思いきや、結局気になっていた箇所もやる事にしました。

mercedes10スリーポインテッドスターの外側には1ミリくらいの「溝」が彫ってあって、マスキングの都合上、この溝の中にもシルバーが入ってしまっています。まあ当初からこれについては解っていて、一応ゴトー氏に意見を聞いてみたら「エンジンルームの中でしょ?普通そこまで見えないでしょ」との事でしたからこれで終了にする予定ではありました。が、結局気になってしまったのでこの溝の中は黒で塗り直す事にしました。まあここまで来たらやらない方が夢見が悪くなるのでやってしまうに限りますね。

mercedes11 こんな感じでマスキング完了です。「おいおい、どこを塗るんだよ・・・」って感じもしますが、よく見ると確かに溝があるのが解ると思います。確かに塗って意味があるのかどうかは微妙ですが、本来は黒い箇所の筈ですから塗って間違いでは無いかと・・・。

mercedes12そして黒も塗り終えて遂に全ての作業が完了しました。

完成画像は明日改めて紹介しますね。元の状態とその大変さが解っていればその見た目はかなり感動出来るのですが、単にそれだけを見ると余りにも普通過ぎる気がしないでもありません(笑)。とにかく作業は全て完了しておりますのでご安心下さい。大変お待たせしました!

メルセデス500Eエアークリーナーボックス マスキング~本塗り

mercedes3「MERCEDES-BENZ」のロゴは左右(上下?)で二箇所あって、先日一個目が完了していたので引き続き二個目に入ります。どうしても時間が掛かるのと集中力が続かない(と言うか日が落ちて暗くなると見えない)ので数日に分けて作業を行っています。

mercedes8意外と手間が掛からなかったのが中央のスリーポインテッドスターで、こちらは外周と内周をキッチリ測ってIllustratorでデータを造り、カッティングプロッタでマスキングシートを作ったのでそれをカットして張り合わせていきます。

ゴトー氏曰く、昔のカバーはこのスターが単体で取り外せてメッキが掛かっていたとの事です。今回のタイプは一体型なので外すことは出来ませんから塗装で対応したって感じですかね。

mercedes5ブースの中は明るいので最後のチェック&修整を行い、いよいよ本塗りとなります。マスキングでここまで時間掛けたのは久しぶりと言うか初めてかも知れません。

良く脱脂処理をしてプラスチックプライマーを塗ったらいよいよ本塗りです。

mercedes6そして無事本塗り完了です。大変お待たせしました! お預かりしてから二ヶ月くらいですかね。ようやくここまで来ました。

mercedes7で、塗ったら直ぐにマスキングテープを剥がしていきます。基本的にブツ切りなので塗膜がまだ柔らかい内に紙を剥がしておかないとキワの仕上がりがガタガタになって汚くなってしまいます。シャープ感が肝ですからね。

ただそれでもこのまま仕上がりと言う訳では無く、ここからある程度修整する箇所は何箇所かあります。まあこれはある程度想定していた事ですから問題ありません。修整が必要な箇所は後日改めて再度マスキングをして塗り直しておきます。

完成は来週末くらいですかね。もう少々お待ち下さいませ!

メルセデス500Eエアークリーナーボックス 凸文字マスキング②

mercedes1 流石にこのマスキングは一日では終わりませんので、作業は数日に分けて行っています。

上の画像では土台部分のマスキングが完了した状態です。ここまではそんなに大変では無いですね。比較的いつもやっているレベルです。

mercedes3そしていよいよ凸文字の側面部分をマスキングしていきます。他に良い方法が無いのかとも思いましたが、見れる仕上がりにするにはこの方法以外思いつきませんでした。私的にはシルク印刷とかで出来そうな気もしたんですが、どうも受けてくれる所が無いようなので今回はもう覚悟を決めた次第です。

むしろ「うちなら出来る」と言う方がいらっしゃったら是非ご連絡下さい。今後も需要はある筈ですので(今回に限らず結構あります)。

mercedes2  プラモデル屋さんで比較的細いマスキングテープが売っているのを発見したのですが、やはりいつも慣れている紙タイプのマスキングテープがやり易いので、これを1ミリ幅くらいにカットして使います。幸いにして近眼ですので細かい作業はそんなに疲れません。ただ体力より精神的にやられているっぽいですが(笑)。

mercedes4 土台と側面の繋ぎ部分にはどうしても隙間が出来ますが、中には肉眼では見え難い髪の毛程の隙間があったりもしますので、最後に「角」の部分も張っておきます。今回の作業指針(?)としては「文字以外の樹脂部分の素地を残す」と言う事なので、ちょっとした事が全てを台無しにしてしまいますから念には念を入れておくとします。ちなみに一番苦しかったのは「R」ですかね・・・。

mercedes5マスキングを貼っていて難しいのは「時間が経っても剥がれないように」と言う事で、少しでもテンションを掛けた状態で貼ってしまうと時間が経つとそこが浮いてしまいます。 また溶剤系の塗装だと、それによってマスキングテープの糊が弱くなるので1コート目が終わった時点で色々浮いてしまっていると言うことも良くあります。

和紙タイプのマスキングテープを使う時のコツとしては「置いてくる」ですかね。ちなみにそれぞれの文字は垂直に見えますが射出成型品である以上多少なりテーパー状になっています。なので真っ直ぐテープを張っていると微妙にズレていくんですよ・・・(苦)。

それを修正しつつ曲線ラインをピッタリ貼って行くのは中々痺れる作業ではありますが、勿論作業に見合う御代はご了承を頂いていますので、むしろこういった作業を仕事としてやらせて頂ける事が有り難いです。

お待たせして申し訳御座いませんがもう少々お待ち下さいませ!