Electric Piano

piano (1 - 1) 6年前くらいにご依頼を頂いたエレクトリックピアノです。後で知ったのですが著名なプロの方からのご依頼で、当初は他の塗装屋さんにお願いしたらしいのですが素材がプラスチックとの事で断られてしまったそうです。改めて調べてみたらどうやら”Wurlitzer Electric Piano”なる製品のようですね。

piano7 樹脂の素材は判らないのですが(多分それが断られた理由だったような気が)、プラスチックと言うよりビニールっぽい素材な感じで、現状では画像のように水を弾いてしまうような状態ですから、まずはこれを親水性にして塗料が密着し易い下地にします。塗装の為の素地調整はまさにそこですよね。

piano (1 - 1)-2下地処理は特別な事をする訳では無く、自動車のプラスチックパーツと同様、「ウォッシュコンパウンド+スコッチ」で足付け処理を行います。ウォッシュコンパウンドの中に入った細かい研磨粒子と洗浄成分(カネヨみたいな感じです)で、製品の表面を削らず、またシボ模様の奥まで足付け処理が出来ます。下地処理用の副資材は色々出ていますが、どれが良いと言う訳では無く、どれがどの作業に適しているか、みたいな感じですかね。

piano6 その後水を流すとこんな感じで表面が親水性になります。最近普及した「火炎処理」の原理もこれと同じ様な感じで、これでならば塗料もよく密着してくれると言う算段です。

piano4 周りのアルミ製飾り枠は接着剤で固定されているのでこちらは外さずにマスキングで対応します。

piano (1 - 1)-3 色に関してはオーナー様がご用意された写真に近い色を見本から選び、さらにそれに合わせて色を作ります。

piano (1 - 1)-4 艶具合に関しては、元のビニール樹脂っぽさを再現すると言う事で「半艶」を選んで頂きました。

先ほど作った青のベースコートを塗布し、半艶専用クリアーを塗って本塗り完了です。ここから徐々に艶が消えていきます。

piano (1 - 1)-6熱を掛けて完全硬化後、事前に外しておいたフックの留め具をリベットで取り付けて完成です。シボ模様も綺麗に残りました。

piano (1 - 1)-5実際にステージでも使うとか、一応これで食べているとか、ご本人からはその程度の事しか聞いていなかったのですが、実は日本人なら誰もが知っているような曲を作っている方のようです。

今回の案件とは違いますが、実際に演奏された画像がありますのでちょっと紹介させて頂きますね。

色は違いますが多分これと同じ製品だと思います。エレクトリックピアノは機械的な打弦メカニズムを持つ為、電子ピアノやシンセサイザー等とは全く別の楽器なのだそうです。

piano (1 - 1)-7元々古かった物を塗装する場合は、大抵は最後まで捨てられたりする事は無いと思うので、いつかどこかで実物を見れる日が来ればと思います。