LOOKカーボンフレーム&フォーク 本塗り!

look51いよいよ本塗りまで来ました。今回は二日間に分けての作業となります。

10年前なら朝からスタートして明け方3時に本塗り終了なんて事もしていましたが(工場を出るのは朝ですよ)、今そんな事をすると倒れてしまうのでそんな無理はしません。見切りの良いところで二日に分けて本塗りを行います。

look52 まず最初に「ベースクリアー」を塗るので最低限のマスキングをして本塗り開始です。ベースクリアーはその名の通り「ベースコートのクリアー」で、要は色の付いていないベースコートと言う事です。通常の塗装は「ベースコート+クリアーコート」で構成されるので、最初に塗るベースコートがクリアーの物ですね。ちょっと想像付き難いかも知れませんが補修塗装だとこれは殆どの場面で行います。

一般的な使い方としては主に「ボカシパネル」に最初に行う塗装で、これによりベースコートのボカシを馴染ませたり、最後に塗るクリアーのハジキ防止にもなったりします。自動車補修塗装の場合には既存の色の上に新たに作った色を重ねる塗装が多いですから「部品全体に色を塗る」と言うケースは稀で、例えばボンネットのど真ん中に10センチのサフェーサーが塗られていてパネル全面にベースコートを塗る塗装屋は普通いません。隣接パネル(左右フェンダー&フロントバンパー)との色違いが起きてしまいますからね。ただしこの辺も臨機応変で、飛び石があったりやソリッドの白または黒ならば塗ってしまう方が楽で綺麗に仕上がったりケースもあります。シルバーの場合もムラを考えると最初からブロック塗りと割り切ってしまう方がメタルの並びが良く綺麗に仕上げられる事もありますし。この辺は作業者の考えに委ねられる事が多く、ケースバイケースで限られた時間内に最良の方法を行うのが普通かと思われます(多分)。

look53 先程塗ったベースクリアーが十分に乾いたら再度二階作業場に搬入して今度は本マスキングに入ります。

ちなみに今回ベースクリアーを塗った理由としては、これから行うマスキング部分のフチをシャープに仕上げる為です。これもちょっと分かり難いかも知れませんが、単に足付けをされた旧塗膜の上よりも、一度ベースコートが塗られた上に塗る方が下地との馴染みが良く、マスキングでのブツ切り塗装の場合には輪郭線がシャープに仕上がるのです。

実は以前、ヘッドチューブにロゴを入れ忘れたまま塗ってしまった事がありまして、再塗装する際に足付け処理だけを行ってロゴ入れの塗装をしたら輪郭がどうも上手く出来なかった事があります。その他のロゴは綺麗に出来たのにです。

ベースコートの塗装をしないまま直接「ロゴのみ塗装」と言うケースも余り無いので気付かなかったのですが、考えてみれば当然ではあるんですよね。以前のように車の修理塗装だけをしているとこういった事には中々気付かないのですが、新しい事をやっていると色々発見出来る事があるのでこれがまた塗装の面白い所だと思います。一人で出来るようなコンパクトな仕事でもとてつも無く奥が深いんですよ。

look55 さすがに「ピッタリ」と言うのは難しいのですが(追えば出来ない事は無いですがそのまま費用に反映してしまいますので・・・)、この程度なら既存の段差で目立たない仕上がりになると思います。とにかく赤い部分が残ってしまったら大変な事になりますからそれよりは小さくしなければなりませんので。

look56 そして遂にここまで来ました。ただしこの時はベースコートまでを終わらせる予定なのでそんなに苦痛感はありません(本塗りは楽しいというより辛い作業です)。とにかくクリアーが塗れる状態にまで出来れば帰れる、といった感じですね。

look57 フォークもフレーム同様、赤い部分以外をマスキングしています。被塗面に若干艶があるのはベースクリアーが塗られたせいですね。これの上に塗った水色はベースクリアーと馴染んで(溶解して侵して)ブツ切りラインが比較的シャープに仕上がるのです。何もしないとガタガタになって大変ですよ。

look58 そしてベースコート完了です。あっという間に終わったようですが実はそうでもありません。ここからの修正が長くなるのでして・・・。

look60塗装する箇所は極小範囲で密集しているのでスプレー方向などを考えて塗れる余裕は無く、そうなるとどうしても膜厚が余計に付いてしまう箇所があるので、そういったところのラインはガタガタになってしまう所もあるんですよ。塗装屋さんならこの嫌な感じ、判りますよね。

そういった箇所はまずタッククロス(ゴミを取る専用の不織布。ここでは水性用を使用)でガタガタの原因である「バリ」(と言っても極小ですが)を出来るだけ除去し、再度そのラインをマスキングをして部分的に修整~塗装していきます。その場合は最初に使ったスプレーガン(口径1.0)では無く、口径が小さいエアーブラシタイプ(口径0.3)を使います。もうそんなに塗る必要は無いですし、無用に周りに塗料を飛ばしたくも無いので少ないエアー量と塗出量で塗れる口径の小さなガンの方が適しているのです。

look59この作業はネチネチとした事の繰り返しで、また塗面に気軽に触れないのが非常に疲れますかね。

look61 フォークの裏側にある小さなLOOKのロゴシールもちゃんと残してあります。と言うかこのマスキングは至って簡単ですので(笑)。

無事ベースコートが終わったらこの日の作業は終了です。以前DUPONTを使っていた頃は「ベースコートとクリアー塗装との間に空けて良い時間」と言う設定があったと思いますが、実はSTANDOXには無いようです。以前メーカーのデモマンの方が「そんなの無いですよ。せめて一週間くらいには塗った方が良いと思いますが」との発言がありましたし(ベースコートに硬化剤を入れないでの話だと思いますが)、そう言えばマニュアルでもそんな事が書いてあったのは見たことがありません。まあデュポンの場合はちょっと特殊ですから(ユーザーなら判りますよね)、ベースコートとクリアーとで時間をあけると確かに層間剥離の危険性はあるのだと思います。そもそもベースコートに硬化剤を入れないで塗るのは危険ですしね。そう言えばABバインダーってまだ売っているのでしょうか・・・)。

という事で続きは翌日となります。

look62 そして翌日各部をチェックし、クリアーを塗って無事本塗り完了となります。「やってやった!」と言うよりはようやく開放されたと言った感じですかね。それにしても「赤→水色」になっただけで全くイメージが変わりました。まるで違うフレームですよ。色の力と言うのは本当に凄いです。

look63 リヤのホイールが付く箇所はフレームとは何か違う物が接着されていて、そこはクリアーもバツ切りのマスキングとなりますから塗装直後には剥がしておきます。ちゃんと剥がしやすいような順番でマスキングをしておくのがコツですかね(初歩の初歩ですが・・・)。

look64フォークも随分とさわやかになって、まるで違うモデルのようです。ロゴ部分は随分と段差が付いていますがこれは最初からのものでして、そもそもこれさえなければ新たにロゴを入れ直すだけで済んだのですから、ここまで大変な事にはならなかったんですけどね・・・。段差とズレてロゴがあったら嫌過ぎますので。何とか無事に塗り終わって一安心です。

という事で完成までもう少しです。どうぞもう少々お待ち下さいませ・・・!