カーボンフレーム&フォーク 下地~下塗り

project9 お待たせしております。カーボン+クロモリラグのフレームとフォークは下塗りまで完了しました。普通だったらもう本塗り完了といった所ですがまだ色々あるので先は長いです。

画像は先日二度目に打った(塗った)サフェーサーを研磨した状態です。#320→#400で全体を空研ぎ、その後は布製の研磨材を使ってペーパー目を#800まで均していきます。

project10空研ぎで行うメリットは色々ありますが、デメリットとして「粉っぽい」と言う事があるので研ぎの作業中は全身粉だらけになります。作業用として履いているダークグリーンの軍パンですが作業している内に雪中迷彩みたいに真っ白になってしまいます。吸い込むと体に悪いと思うので防塵マスクを着用しています。

project21 そしてようやく下地の完了です。本来ならこで「本塗り」となりますが、今回はロゴやライン入れ塗装が複雑なので一旦ベースカラーの「ホワイトパール」で仕上げ、後日改めてそれらの塗装を別工程で行う事にします。効率は悪いですが、一旦全体がクリアーでコートされていればロゴ入れ塗装などで色が食み出てしまってもシンナーで拭く事が出来るので実はこの方が確実です。ベース色が普通の2コート塗装であれば部分的な修復が出来ますが、3コートパールの場合はかなり面倒な事になるので予防線は張っておく必要はあります。

project22 ただしそんなにストレスを貯めないで一度に塗り上げる方法が無い訳ではありません。先にラインとロゴの色を塗り、そこに形取ったマスキングシートを貼り付け、全体にホワイトパールを塗ってしまえば良いのです。

ただし明度の低い色(濃い紫)の上にホワイトパールを塗り重ねるとすると隠蔽性が非常に悪く余計に塗膜の厚みが付いてしまい、結果最初の状態と同じく各見切りのラインで激しい段差が出来てしまいます。それでは今回同じデザインでやり直している意味が無いので、今回は隠蔽力を考えての「白」→「シルバー」(ロゴ色)→「紫」(ライン)のセオリー通りで行く事にしました。その方がラインもロゴもシャープに仕上がると筈ですので。

そもそも3コートホワイトパール自体膜厚の付き易い塗装ですから一旦クリアーで閉じたい(終わらせたい)と言う事は塗装屋さんなら皆そう思う筈です(ただしそれが許される環境であればですか)。ベースコートの厚塗りがどんなに恐ろしい結果を招くか・・・は良くお判りですよね。これについては後述します。

project23 ちなみにボトムブラケットが付くフレームの内側にはクロモリが露出していた箇所があったのでプライマーを塗っておきます(と御依頼承りました)。ネジ山部分は折角塗装を剥がしておいたのでマスキングしておきます。装着時はグリースタップリでお願いします。

project29画像はカラーベースである「ホワイト」を塗っている所です。白はかなり隠ぺい力の弱い色ですからこの時点で5コート程度、そしてさらにこの上にパールコートを2~3コートは塗りますから通常の色よりもベースコートの膜厚が付くのです。これの上にさらにロゴやらラインの塗装をするのはとても嫌なんですよね。

ちなみに一般的な2Kシステム(=2Komponent。Componentの間違いでは無いですし「2コート」ともまた違うようです。これについては色々見解があって複雑です)は、ベースコートに硬化剤は要らない(入れない)のが主流だったりしますが、ベースコートでこれ程の厚みになるとクリアーの硬化剤が差し込まなくなるので(浸透して2液反応しなくなるので)、この場合は直接ベースコートにも硬化剤を入れたりします。1液ベースコートを使う塗装屋さんでもこれは常識で(特にDUPONTユーザーは・・・)、ただ「余った塗料が戻せない」と言うデメリットもあるので無理(と言うか無茶)をしてしまうケースもあると思います。

今回はクリアーを薄膜で終わらせる事と、フロントディレーラーなど強く締め付ける箇所があるので芯からしっかりと硬化させたいですから(と言うご要望です)、ベースコートでも最初から最後まで硬化剤を添加して行っています。

ちなみに知人が勤めていた会社ではこの厚塗りによる硬化不良のせいで、一度塗り終わったオールペン車両の塗膜を全てスクレーパーで剥がす、なんて事態に陥っていました。「厚塗りしませんでしたか?」と聞いても「いつも通り塗った筈」との事ですが、DUPUNT(センタリ6000)で硬化剤を入れないで5コートもしたらアウトですよ。デュポンは隠ぺい力が強いのが売りなので2コート無いし2.5コート程度で終わらせられないなら硬化剤は必須ですよね。

project24 そしてパールベースをコートし、クリアーを塗って本塗り完了です。パールベースはクリアーの中に数パーセントのパール顔料が入る程度なのでパッと見は透明な塗料ですが白の上にこれが塗られると真珠のような質感になるのです。時々このパール顔料を「真珠をすり潰した粉」と勘違いされている方が居ますが、これは鉱物の一種「雲母」が原料となっています。

ちなみに今回は膜厚を抑える為、パールベースについても「パール顔料を倍」にしてコート数(膜厚)を少なくするようにしています。これも特に型破りな事では無くケースバイケースで利用される手法です。ボンネットやドアの裏側などはこうやって時間を短縮させるのです。自動車の外板パネルのような平面だとムラが生じ易いですが、こういったパイプ形状や骨組みなどがある複雑な部位であればその心配も殆どありませんので(勿論それを想定した塗り方は必要ですが)。

project25 タップリ塗られているようですがクリアーの膜厚はいつもの3分の1以下だったりします。

通常クリアーを塗る時のスプレーガン口径は「1.3mm」を愛用していますが、今回は1.0mmでしかも1コートしか塗っていません。ロゴやライン入れをした後にはさらにしっかりとクリアーを塗りますからこの時点で無用な膜厚は避けたいのです。

project26 溶接のビート部分も最小限のパテで違和感無く出来たと思います。

project27 塗装自体はようやく中間地点といった所ですかね。ベースとなるデータ化は全て済んでいるので残る作業は神経戦といったところでしょうか(ライン入れが相当大変かと・・・)。

project28綺麗に見えますがクリアーは薄膜1コートなので肌が出来ていない箇所もありますが、完全硬化後には全体を研磨して足付け処理をするので問題はありません。

次のロゴ&ライン入れ塗装は来年に持ち越すかも知れません。全てはデータ化が済んでいますので特に急いでやる必要は無く、出来れば慎重に作業したいのでLOOKのフレーム塗装の時と同様に2日間に分けて行いたいと思います。となると年内でこの時間を作るのがちょっと難しいんですよね。何卒ご理解頂ければ幸いです。

それではまた作業進行しましたら紹介させて頂きますね。どうぞもう少々お待ち下さいませ!

マウス&キーボードカバー塗装 完成

mouse_1 大変お待たせしました!マウスカバーとキーボードの枠は艶消しシルバーで完成となります。マットなシルバーは上品で良い感じです。

mouse_3マウスのカバーは届いた時はかなり凄い状態でしたが、ラバーコートは全て剥がし下地からやり直したので綺麗な状態に戻せたと思います。それでも新品が買えるのでは、と思うような費用は掛かっていますから「お揃いの色」と言うところに拘ったのでしょうね。

mouse_2 今度は使っていて塗膜が擦り切れるという事は無いと思いますから、キーボードが壊れても新たに買った製品をまた分解して換装すれば長く使い続けられると思います。組み付けも是非がんばって下さい。

それでは後ほど完成のお知らせメールを差し上げますね。この度のご依頼、誠に有難う御座いました!

BMW ALPINAヘッドカバー 下準備

alpina4先日溶剤槽に漬け置きしておいたアルピナのヘッドカバーを出してみました。浮いた塗料カスをワイヤーブラシで掃除していると、あ、アルピナのロゴが無いじゃありませんか・・・(終わりました・・・)

alpina5 と軽いパニックに陥ったのですが、落ち着いて洗浄槽の底を浚ってみるとありましたありました。なんとアルミ板をカットした文字が貼ってあっただけなのですね。

確かに以前idingのヘッドカバーなどを施工した時に、ノーマルのヘッドカバーをフライスで彫り込み、そこにロゴが入ったプレートを埋め込んでいるのを何度か見かけましたからそれと同じような感じです。危うく切腹ものかと思いましたよ・・・。

alpina6 それにしてもヘッドカバーのロゴがシンナー程度で取れてしまうとはちょっとお粗末で、むしろ先に気付いてよかったと思います。うっかりそのまま結晶塗装を施し140℃以上の熱を掛けていたらその時点で何かトラブルが生じていたかも知れませんし、或いはその後の面研の作業でロゴがズレてしまっていたかも知れません。今となっては何で付いていたのかは不明ですが、まさか両面テープなんて事は無いですよね・・・。

という事で今度は二度と取れないようにエポキシで接着します。ちなみに歯ブラシを使っているのはタイル屋さんがくし目を入れて貼る様な感じで、しっかり接着させつつ食み出させない!と言うのを真似てみました。実際はこの面積だと無理があるようで上手くいかず、ちゃんとアタリが付いているかを見ながら着ける事になりましたが・・・(苦)。

alpina7そして位置を合わせたらガツンと140℃程度の熱を掛けて固めました。これなら今後剥がれるような事は無いと思います。いやー、本当にビックリしました。これで一安心です。

それではまた作業進行しましたら紹介させて頂きますね。もう少々お待ち下さいませ!