純正のリモコンキーは未塗装の着色樹脂の為に質感が悪く、また成型時に出来た歪も強いのが特徴です。
これの一番のネックがカバーの分解で、純正のリモコンキーはまずエンブレムを外さなければなりません。
ただしエンブレムと本体の間に隙間は殆ど無く、また七宝焼のエンブレムは貴重な為、本体を傷付けてでもこれを無傷で取り外す必要があります。
さらにカバーは内部の三か所で爪が引っかかっていて、その内二カ所はどうやっても見えない部分にあるので壊して外す事となります。
唯一生かして外せるのがこの箇所の爪で、ただしその横には電子基盤があるので作業には注意が必要です。やってみると判るのですが、まずこれを分解しようと思った時点で心を折られます。
プラスチックプライマーを塗布後、エポキシ接着剤で元の位置に取り付けておきます。
分解については塗装の付帯作業と言う事でサービスで対応しておりますが、それだけに破損・故障等の補償はありません。今までトラブルはありませんが、ご懸念の場合には分解はご自身でされる事をお勧め致します。
深い傷はありませんが、このまま塗って艶だけ出すと製品自体の歪が余計に目立ってしまう為、まずは素地調整から行います。
ペーパーが入らない箇所はリキッドタイプの研磨材(ウォッシュコンパウンド)とナイロンブラシで足付け処理を行います。
窪みにサフェーサーを塗るとエンブレムが入らなくなる恐れがある為、そこはマスキングをしておきます。
反対側も同様に、ボタン部分と鍵のスライド軸部分をマスキングします。
プラスチックプライマーとサフェーサーを塗布し、 60℃40分程の熱を掛けて塗膜を完全硬化させます。
#600→#800で細かいラインを形成し、マスキングを貼り直していよいよ本塗開始です。
プラスチック素地が露出した箇所には再びプラスチックプライマーを塗布します。
クリアーは高品位なタイプのSTANDOXクリスタルクリアーで、通常使用する同社イージークリアーに比べ高美観・耐UV効果・耐擦り傷性・耐薬品性などに優れています。今回のような直接塗装面に触れる物にはお勧めのクリアーです。
再び60℃40分程の熱を掛けて塗膜を完全硬化させ、数日寝かしてから組み付け作業を行います。
完成後、オーナー様からご感想のメールを頂きましたので以下に紹介をさせて頂きます。
「本日、キーが手元に届きました。
まるで濡れているかのような美しい深い艶、樹脂製であることが信じられないような圧倒的な質感と、どこまでも滑らかな触り心地に感動です。
毎日使う物や直接手に触れるものは心地よいものであるべきと常々思っていますが、これは紛れもなくそうした物となりました。
なお、リモコンの動作も全く問題ありませんでした。面倒な分解と組み立てをして頂き、有難うございました。
作業の依頼をして良かったと心から思っております。また機会がありましたらよろしくお願いいたします。」
こちらこそこの度は当店をご利用頂き誠に有難う御座いました。またわざわざご感想・ご報告も有難う御座います。