RB20ヘッドカバー等エンジンパーツ5点 本塗り

先日裏側のシーラーを剥がしておいた日産RB20のタイミングベルトカバー(上下)です。旧塗膜剥離の為に溶剤槽に浸けますが、その前に平面部分をある程度ダブルアクションサンダーで研磨しておきます。

錆が出ていたのは上面だけに見えましたが、削ってみると全体に発生しているのが判ります。点々になっている部分は塗装前に何か不純物(水等)が飛んだか、使用する塗料またはエアー内に水分か油が混入した物と思われます。どちらにしても錆予備軍で、塗膜も密着していなく、また錆の原因は素地調整不良とプライマーを塗っていない事による物です(工業塗装はコスト削減の為にプライマーを塗らない場合が殆どです)。

ちなみに当工場二階に間借りして貰っている元同僚が言っていましたが(現在は自動車関係のライター&アートディレクター的な仕事をしています)、各メーカーのマニュアル(またはウェブサイト)から「新車時の塗膜補償10年」と言う文言が消えた、みたいな事を言っていました。恐らくは新車に水性塗料が採用され始めた事によって実用上どれくらいトラブルが起きるのかが予想できず、リコールに備えて保険を掛けているのだと思います。起こりえるトラブルとしては塗膜間での密着性不良による層間剥離でしょうか。メーカー内製工場で請負をしている社内外注の方々は大変な事にならないか心配です(ただ実際働いていた方から聞いた話だと上への袖の下次第でその辺は大分贔屓が発生するみたいです)。

その後溶剤槽に浸けおきし、通常であればこの後ワイヤーブラシで擦って再び溶剤槽に戻すのですが、

今回はサンドブラストも承っていますので、そのままブラストボックスに移動し、

 サンドブラストを行いました。

少し前に導入した直圧ブラストのお陰で想定していたより早く作業が出来たのですが、ブラストガンに穴が開くというトラブルが発生した為、今後の作業に支障が出てしまう形となりました(しかし既に新しいガンが届き交換を済ませました!)。直圧は作業効率が良くなるのですが、工具へのストレスが高く、またメンテナンスも必要になるので、ここぞという時に使うようにしようと思います。

タペットカバーの方は溶剤槽浸け置きとワイヤーブラシで旧塗膜は綺麗に落とせました。

油分が落ちるとホースパイプ部分も劣化しているのが判るので、ここも一緒に塗っておこうと思います。

その後リン酸処理を行い、よく洗浄&乾燥させておきました。

ただ放置し過ぎると酸化(腐食)が始まるので早めに作業を行います。

まずはプライマーを塗布します。部品が溶接された箇所はスプレーでは奥まで塗料が届かないので、先に隙間から筆で流し込み、乾かない内にエアーブローをして余分を飛ばし、それをシンナーで拭き取っています。

 プラグカバーとタイミングベルトカバーは裏側にもプライマーを塗ります。

 続けてベースコートの黒を塗ります。

プライマーのままだと見た目が悪いので、ベースコートにハードナーと艶消し剤を少量添加してそれっぽく(新品時のED=電着プライマーのように)しています。

 タペットカバーはプライマー塗装後、ホースパイプ部にそれらしい色を塗っておきました。

純正のメッキっぽい感じになるよう黒にブラウンとホワイトパールを入れて作ってあります。同じくハードナーを入れてあります。

そして本塗り準備完了です。

ヘッドカバーは棚板ごと動かしますが、小物は単品で移動するので木の台に乗せて塗るようにしています。素材が木だと熱々に熱していても素手で持てます。

そして色ですが、今回は黒の結晶塗装に若干量のブルーパールを入れるよう承っています。この時と同じような内容ですね。

パウダーのブルーパールはぱっと見は白い粉末に見えますが、

リキッド(液体)になると鮮やかな青味が出るのが判ると思います。昔は粗目のブルーパールはパウダータイプしか無かったのですが(STANDOXだとギャラクシーブルーパール)、現在はこれのリキッドタイプ(同社PE845)が出たので、パウダーパールの出番はめっきり少なくなりました。が、今回の様に結晶塗装等違うメーカーの塗料で使う場合は重宝しています(粉末の顔料単体で使う分には問題ありません)。

そして本塗り開始です。

結晶塗装は1液の熱硬化型塗料なのでそれ単体では硬化せず、なので塗装後に熱を入れます。

そのまま一日置いてから熱を入れてもチヂレ目は発生するのですが、その場合結晶目にムラが出来たり目が細かくなったり、さらにはチヂレない箇所が発生する事があるので、塗装後直ぐに熱を入れるのが基本となります。後は空気(の流れ)も必要なようで、恒温機のような箱の中で完全に密封して熱を入れた場合も同じようなトラブルが発生するみたいです(当店の場合は最初に赤外線ヒーターを使うのでそのような経験がありません)。画像は右側から結晶目が発生して、熱の伝導によってチヂレ目が左側に移っていくところです。

その後熱を掛け終わった状態です。

140℃で40分くらい熱を掛けているのでマニュアル上では完全硬化しているのですが、後日もう一度恒温機で120℃20分程の熱を掛けておくようにします。塗装後に研磨した事がある人なら判ると思いますが半生っぽい感じで少し柔らかいんですよね。

ぱっと見は黒の結晶塗装ですが、パールで少し明るくなり青味も出ています。

今回はプレートはそのままで、最後に凸文字部を研磨してアルミ地を露出させて光らせます。

 ヘッドカバーです。

メッキが剥がれていたホースパイプ部も綺麗になりました。

この後は恒温機(乾燥炉)で二度焼きを行い、後日凸文字部を研磨します。

それでは作業が進行しましたらまた紹介をさせて頂きます。どうぞもう少々お待ちくださいませ!