ロードスター外装パーツ 下地処理

フォググリル 空研ぎ

こちらもお待たせしております。先日サフェーサーを塗っておいたロードスターのフォググリルですね。部品は新品ですが表面がザラザラとした梨地だったので表面を研磨、プラスチックプライマーを塗布、そして2液ウレタンサフェーサーを塗って硬化させています。

画像左側が研磨する前の状態で、表面に小さな黒い点々があるのは研ぎ忘れを防止する為の「ガイドコート」です。単に黒を全体に降り掛けただけですが効果は絶大です(と言うかこれをやらないと確実に研ぎ忘れが生じます)。 で、それを研いだ状態の物が右側ですね。 ただしこの状態はまだ粗研ぎの段階で、この後番手を細かくしていき細部を仕上げていきます。

 

フォググリル 水研ぎ

今回のサフェ研ぎの工程としては、

最初に空研ぎ #320→#400→#600

その後は水研ぎ #600→#800

となります。空研ぎでは主に肌落とし(梨地の平滑化)ですが、今回のように形が複雑な部品の場合はコシが強いペーパーだと角が当たってしまったりでスジ状に掘ってしまう箇所が出てきたりします。目で見て解かるようなものでは無いのですがそういった箇所は必ずあり、一つでも見落とすと厄介な事になるので多少やり過ぎな作業になっても一つ一つを万全に仕上げていかないとなりません(って実際にはそんなに難しく考えている訳では無く塗装屋さんなら日常的にやっている事なのですが)。

で、空研ぎでの粗研ぎが終わったらその後は水研ぎでしっかりサフェを削りつつ、細かい番手でソフトな仕上がりに仕上げていきます。 これは慣れの問題もあるかも知れませんが、形が複雑な場合はやはり最後は水研ぎで仕上げる方が間違いは無いと思っています。 平面的なものなら最初から最後までを空研ぎで完結するシステムは出来上がっているのですが、こういったケースではやはり昔ながらの水研ぎが確実ですかね。

ちなみに最初から最後までを水研ぎで終わらせる事は勿論可能で、と言うより元々はそのシステムしかありませんでした。 ただ近年は空研ぎでも目詰まりがし難い細かい番手のペーパーが登場してきたので、塗装の下地作業はここ数年でもかなり変わりました。 もともと空研ぎが使えるのはせいぜい#240くらいまでで、それ以上細かくなるとキレが悪い癖に非常に高価で余り実用性の無いものが殆どだったのです。なのに今では磨き用に使うような#1500やら#2000の細かい番手でさえ空研ぎで出来るペーパーが登場する始末でして・・・。

ちなみに何故「空研ぎ」が進化しているかと言うと、それは勿論「作業性」の向上による作業時間の短縮です。自動車補修塗装は時間工賃が¥7,000~¥10,000とかなり高額な内容なので(それだけコストが掛かるという事なのです)、如何に作業時間を短縮出来るかが売り上げ(じゃなくて存続?)の勝負になってくるのです。  ちなみに私が勤めていた会社はこのレーバーレート(時間工賃)が¥12,000と、恐らく日本で一番高かったのでは・・・と思うような会社でした(故に保険会社といつも揉めていたようですがお陰で良い仕事はさえて貰えたと思います)。

 

フロントグリル足付け処理

こちらはちょっと前の画像なのですが、折角撮っておいたので紹介させていただきますね。同じくロードスターのフロントグリルで、いつもの如くネチネチと足付け処理をしていきます。

塗装する物にはこうやってかならず「足付け処理」を行いますが、これは塗装する箇所に無数の傷を付けることにより表面積を増やし、また投錨効果(アンカー効果)により塗装の密着性を高める効果があります。塗料自体には接着剤のような効果はありませんから(実は全くないのです)、ツルツルした面に塗装しても密着不良を起こし塗装はペリペリと剥がれてきますので。

またはこれをやらなくても「密着剤」なる便利な塗料もあったりするのですが(私的にはプライマーとは呼べません)、初期性能は確かにいいのですが塗って数年経ってからの性能についてはちょっと疑問です。そもそもその性能が保障されているならばわざわざこうやって時間を掛けて足付け作業をする必要は無いって事ですからね・・・。全ての塗装マニュアルから消えても良い筈ですし。

ちなみにこの素材はPP(ポリプロピレン)なので、実はその足付け処理も「プラスチックプライマー」の塗布が無ければ全くの無力です。また「脱脂処理」も同じことが言えて、例えばこの被塗物表面に油膜があったとしたら前者の二つの作業をやっていたとしてもやはり密着不良は起こります。 なので面倒ではありますが、これら「足付け処理」「脱脂洗浄」、そして素材によって「専用のプライマー」を行う事は下地処理では必須な作業になるのです。 飾りだけの物であればここまで考えなくても良いのですが、用の塗装となるとこれらがちゃんと出来ていないと幾ら綺麗に仕上がっていても意味が無いですからね。

来週中には本塗り出来る予定です。もう少々お待ち下さいませ!

ブラインドナット

ブラインドナット

現在ご依頼中のクロモリフレームで、錆びたブラインドナットを外して新たに取り付けるナットを「スチール」か「アルミ」かでご検討頂いていたりします。

画像はM5ビス用のブラインドナットで、一番左が普通のアルミ製、真ん中がそれに「ギザ」が付いたアルミナット(皿の裏に付いてます。良く見ると見えませんでしょうか?)、そして一番右はスチール製のナットです。こちらは側面にギザが付いたローレット加工済みです。

ブラインドナット(またはポップナット)はネジ山が切れない薄物にネジを固定出来るようにする為の便利物で、自転車フレームのような軽量化が求められる製品には重宝されるアイテムです。肉厚が2ミリとかあれば必要ないんですけどね(ただそれじゃ凄く重いでしょうし・・・)。

で、今回もそうですがどうも自転車のフレームに元々使われているブラインドナットは下穴が大きいタイプのようで、M5用のナッターを入れてもスカスカなのです。どう考えてもミスマッチなサイズでして・・・。なので万が一の滑り止めの為にローレット加工された物を好んで使っています。

で、このブラインドナットはそれぞれ「アルミ」と「スチール」の種類がありますが、それぞれ一長一短がありますのでお好みによって選んで頂いても構いません。一応それぞれの特徴を紹介しますと・・・

【アルミ製のブラインドナット】

・メリット・・・軽い。錆び難い。万が一の時に外し易い。

・デメリット・・・強く締めすぎるとねじ山が飛ぶ。場合によっては錆び易い。

・対応策・・・強く締めて止めると言うより「緩まないように」を心掛けてプレッシャーワッシャーを入れるなど。

【スチール製のブラインドナット】

・メリット・・・強く締めてもネジ山がナメってしまう心配は少ない。

・デメリット・・・重い。場合によっては錆び易い

・対応策・・・付けない時には水が入らないようにネジにグリースを塗って締めておくと宜しいかと。

といった感じです。昨年ご依頼頂いたcannondale sistemsixのオーナー様は、「とにかく軽く」と言うことで迷わずアルミを選択されましたが、通常ここに使うナットはスチール製が一般的ですかね。ただそんなに頻繁に付けたり外したりしなければアルミだからといってそう簡単にナメってしまう事も無いかとは思いますが・・・。

ちなみに上記のデメリットで「場合によっては錆び易い」とありますが、これは異なる金属素材の組み合わせで起こる電位差による腐食を指しています。アルミは鉄よりも腐食し難いと思われますが、この両者が接触しているとなるとアルミの方がイオン化傾向が大きいので鉄よりもアルミの方が先に錆びていきます。うーん、ちょっと難しいですかね。

もっと身近な物であれば「トタン板」があって、あれは鉄に亜鉛を被せてあります。鉄は本来錆び易いですが亜鉛の方がイオン化傾向が大きいので鉄よりも先に錆びようとします。が!亜鉛はたとえ錆びたとしても酸化鉄のように脆く風化していったりはしないので(変化が少ないので)、錆がみるみるうちに進行して穴が開いたりとかはし難いのです。これが4輪自動車に採用されている「亜鉛鋼板」の仕組みですね。屋外に放置してあっても錆び難いのはこれのお陰です。鉄の代わりに亜鉛に犠牲になってもらっているのです(犠牲防食?でしたっけ)。

ちょっとうろ覚えなので間違っていたらすいません。ちなみに一部の自動車には「アルミボンネット」なんて採用されていたりしますが、あれもスチール製のヒンジとアルミボンネットの間にはシーラーやら塗装やらで通電しないようにされています。なのでこれと同じように、異種金属の組み合わせを懸念するならばそこに何かしらの措置をしてあげれば良いだけの話しでして、例えばクロモリフレームにアルミナットを付けるならば予めエポキシ接着剤を塗布しておくなど、ちょっと手を掛けてあげれば良いだけの話なのです。DIYならプライマーやらグリースを塗るだけでも良いですし。

やるやらないは別として「なんでこうなったか」を知っておけば、いつか困った時でも助かる場面が出てくると思いますし事前にトラブルも防げますからね。塗装は本当に奥が深いのです。